開講年度2020
科目名日本文学研究(Ⅰ)(古典文学) 講義
(全)開講学科2018年度文学研究科日本文化専攻博士前期課程
開講種別通年
対象学年1年
担当者川名 淳子
単位数4
曜日・時限通年 ダミー(曜日区分) ダミー(時限)
キャンパス


サブタイトル
『紫式部日記』を精読する。
科目のねらい
 平安時代成立の『紫式部日記』は、『源氏物語』の作者の複雑な精神世界や紫式部特有の人間観察が叙述されている作品であると共に、中宮彰子付き〈女房〉による当時の宮廷社会の記録でもある。授業では研究史を踏まえながら、作品を精読する。また本『日記』の享受のありようを伝える、鎌倉時代初期制作の「紫式部日記絵巻」を国文学の立場から分析する。一条朝とは後世にとってどのような時代様相であったのかを明らかにする。
 歴史的事象と日記文学の叙述の関係を考えながら、本作品における各自の考察のテーマを設定し、読解を深める。
到達目標
 『紫式部日記』や『源氏物語』が生まれ出た経緯や時代背景、王朝人の習俗や美意識、後世の作品享受のありようなどを視野に入れながら、以下の事柄を目標としていく。
・本作品の表現方法の特色や作品構造の特異性を捉える。
・古典の専門的知識を習得する。
・研究史や関連論文等を踏まえた上で、自らの考察や見解を提示する。
・古典文学研究への自身の視点を明確にする。
・隣接する諸分野の研究成果を国文学の読みに導入する。
授業の内容・
計画
以下のテーマを授業時ごとに設定し、作品を読み進めていく。
1 紫式部日記成立の時代背景
2 藤原道長の時代―摂関政治の構造
3 「帝」・「中宮」とのかかわり
4 「女房」について―その役割・出自・境遇など
5 〈紫式部〉という人―その家系・生涯
6 〈紫式部〉をめぐる人々
7 作者と紫式部日記の関係―記録者としての意識
8 紫式部日記の特異性―作品の構造と伝承
9 紫式部日記の冒頭表現について
10 首欠・非首欠説の是非について
11 皇子誕生の記①―日記執筆の要請
12 皇子誕生の記②―産養について
13 皇子誕生の記③―諸催事の描写の視点
14 慶事の記録と憂愁叙述―紫式部の憂鬱
15 精神の二重構造―紫式部の処世術と厭世観
16 消息文的文章①―紫式部の批評精神
17 消息文的文章―②女房批評
18 紫式部と清少納言①―後世の紫女論・清女論から
19 紫式部と清少納言②―紫式部日記と枕草子
20 紫式部の思考と感慨
21 出家と救済―紫式部の仏教観
22 紫式部日記と源氏物語①―物語執筆の経緯
23 紫式部日記と源氏物語②―物語の作者として
24 紫式部日記と源氏物語③―その思想性
25 紫式部日記絵巻について①―日記の絵画化・古典の再結晶化
26 紫式部日記絵巻について②―日記の享受・中世の王朝憧憬
27 紫式部日記絵巻詞書の日記本文について
28 紫式部日記と同時代作品―栄華物語との相関
29 古記録と紫式部日記の記事
30 総括
評価方法
(基準等)
授業への取り組みや発言等(5割)
学年末のレポート(5割)を基準として総合的に評価する。
授業外の学修
(予習・復習)
古語辞典を用いて作品の本文をよく読む。古註や現代の複数の注釈書、参考文献等も読み比べ読解を深める。
講義内容を踏まえ、受講者が自らの切り口をみつけ、作品研究を行う。授業時に提示した資料を熟読し、自身の考察をまとめる。
教科書・
参考書
教科書:新潮日本古典集成・山本利達校注『紫式部日記 紫式部集』(新潮社)
参考書:萩谷朴『紫式部日記全注釈』上巻・下巻(角川書店)・秋山虔他編『紫式部日記の新研究―表現の世界を考える』(新典社)の他、授業の進度、内容に応じて適宜、授業時に提示する。
参照URL
質疑応答
授業時間内及びその前後のほか、随時、個別に対応するので、川名研究室(3号館4階)に来てほしい。またメールでも対応する。(メールアドレス等連絡先については授業時に提示する。)
備考
画像
ファイル
更新日付2020/02/03 17:00:17