開講年度2019
科目名ヨーロッパの文化と社会Ⅱ
科目ナンバーB231-165-02
開講種別秋学期
対象学年2年
担当者中村 実生
単位数2
曜日・時限秋学期 月曜日 4時限
キャンパス日進キャンパス
実務経験のある教員による授業科目


テーマ
ドイツ語圏における同化ユダヤ人の活躍と反ユダヤ主義の拡大
授業の概要
近代に入ると西ヨーロッパのユダヤ人たちは居住地の社会に同化し、その発展の強力な担い手となった。とりわけドイツ語圏では、ユダヤ人の寄与によって豊かな文化的果実が実る。しかしそれは皮肉なことに反ユダヤ主義の台頭を促し、ついには20世紀、ナチスによるユダヤ人虐殺へと至る。啓蒙主義の理想のもとに実現したユダヤ人解放と同化は、なぜ、人類史上で最も忌まわしい惨劇を招くことになったのだろうか?
この講義では、19世紀以降ドイツ語圏において活躍した著名ユダヤ人の生涯と業績を手がかりにしながら、日本ではあまり知られていないユダヤ人のドイツ文化への寄与について紹介する。また同時に、ドイツとユダヤとの幸福かつ悲劇的な関係について考察する。
授業の到達
目標
19世紀以降のドイツ文化におけるユダヤ人の活躍と台頭する反ユダヤ主義、その帰結としての20世紀のナチによる破局について、概要が理解できる。現代における民族/宗教/言語の問題について関心を持ち、自分なりに考察できる。
授業計画
回数授業スケジュール授業時間外学修・時間(分)
1「ガイダンス」
授業の進め方について
春学期「ヨーロッパの文化と社会Ⅰ」講義内容の概略
【予習】シラバスを読み授業の内容と方針について理解する(20)
【復習】春学期講義内容の復習(60)
2「19世紀初頭ベルリンのユダヤ人女性によるサロン文化」
ドイツ文化の核心部にコミットしたユダヤ人女性とそのサロンに集った人々
【予習】19世紀初頭のベルリンの状況について調べる(30)
【復習】サロンに集った人々のその後のドイツ文化における功績について調べる(60)
3「詩人ハインリヒ・ハイネ」
ドイツとユダヤに引き裂かれるアイデンティティー
【予習】ナポレオンによるヨーロッパの地殻変動とナポレオン後の反動について調べる(60)
【復習】配布資料とノートを精読。「改宗はキリスト教文化への入場券」という言葉の皮肉と絶望について考える(60)
4「音楽家フェーリクス・メンデルスゾーン=バルトルディ」
ドイツ文化を担う誇りと、ドイツ文化への実りある貢献
【予習】バッハからメンデルスゾーンまでのドイツ音楽史について調べる(60)
【復習】配布資料とノートを精読。メンデルスゾーンの作品を聴いてみる(90)
5「反ユダヤ主義の台頭」
民族主義と新しい反ユダヤ主義
【予習】カール・マルクスとリヒャルト・ヴァーグナーの業績について調べる(60)
【復習】配布資料とノートを精読。マルクスとヴァーグナーの反ユダヤ主義的言説の特徴について考える(60)
6「シオニズム運動指導者テオドール・ヘルツル」
同化への失望とユダヤ民族主義
【予習】19世紀ドイツにおける民族主義の高まりについて調べる(60)
【復習】配布資料とノートを精読。シオニズム運動とイスラエル建国の関係について調べる(60)
7「作家フランツ・カフカ」
西欧的ユダヤ人フランツ・カフカと東方ユダヤ人という出自を持つ父との関係
【予習】19世紀末から20世紀初頭のプラハの状況を調べる(60)
【復習】配布資料とノートを精読。カフカ『変身』を読む(120)
8「作家シュテファン・ツヴァイク」
同化ユダヤ人の夢と挫折
【予習】19世紀末ウィーンの状況について調べる(60)
【復習】配布資料とノートを精読。ツヴァイクと同時代にウィーンで活躍したユダヤ系文化人(例:ジークムント・フロイト)について調べる(60)
9「ナチの台頭とその反ユダヤ主義」
粗雑な人種理論と大衆扇動
【予習】ナチの主張と政権獲得までの経緯について調べる(60)
【復習】配布資料とノートを精読(30)
10「ナチ政権下のユダヤ人虐殺」
「ユダヤ人問題の最終解決」に至る経緯とユダヤ人虐殺
【予習】第二次世界大戦のヨーロッパ戦線の経緯について調べる(60)
【復習】配布資料とノートを精読。ナチ以外によるマイノリティーの迫害や虐殺について調べる(60)
11「詩人パウル・ツェラン」
ツェランと「母語」=ドイツ語との困難な関係
【予習】ツェラン『死のフーガ』を読んで内容について考える(30)
【復習】配布資料とノートを精読。あらためてツェラン『死のフーガ』を精読し、「投壜通信」という言葉について考える(60)
12「哲学者ハンナ・アーレント」
時代に立ち向かった哲学者
【予習】ハンナ・アーレントの経歴ついて調べる(30)
【復習】配布資料とノートを精読(30)
13「アーレントの見たアイヒマン裁判」
第二次世界大戦後の世界とユダヤ人の置かれた状況
【予習】イスラエルの歴史とアイヒマン裁判について調べる(60)
【復習】配布資料とノートを精読。「悪の陳腐さ」について考える(40)
14「戦後ドイツにおける過去との取り組み」
後の時代を生きる者の責任と、忘れないための努力
【予習】西ドイツの戦後史について調べる(60)
【復習】配布資料とノートを精読。今日のドイツの状況について調べる(60)
15「文芸評論家マルセル・ライヒ=ラニツキ」
ドイツの野蛮とドイツの文化。ユダヤ人の祖国としての「ドイツ文化」
【予習】YoutubeでMarcel Reich-Rnickiの動画を見る(20)
【復習】配布資料とノートを精読。ツェランとラニツキの後半生の生き方の違いについて考える(60)
    
16定期試験
評価方法・基
準(評価割合)
定期試験100%
テキスト
書名著者出版社価格ISBNコード備考
1.『プリントを授業中に配布』
参考書
  ・
参考資料
書名著者出版社価格ISBNコード備考
1.『ユダヤ人とドイツ (講談社現代新書)』大澤 武男講談社864978-4061490802
2.『ユダヤ人 (講談社現代新書)』上田 和夫講談社821978-4061488342
3.『ドイツに生きたユダヤ人の歴史―フリードリヒ大王の時代からナチズム勃興まで (世界歴史叢書)』アモス エロン明石書店68002147483647
4.『ユダヤ小百科』ユーリウス・H・シェプス水声社28000978-4-89176-922-2
参考URL
質疑応答
授業中,授業の前後,その他都合のつく時間帯。
備考
ほとんどの学生にとっては未知の内容の講義となる。毎時間集中して受講し、常に知識を整理することが単位取得のためには必要である。そのことをよく理解して登録すること。秋学期開講の「ヨーロッパの文化と社会Ⅱ」は独立した講義だが、その内容は春学期開講の「ヨーロッパの文化と社会Ⅰ」を引き継いでいる。秋学期から受講する場合は,それを十分に踏まえ自分なりに必要な知識を得ておくこと。
大幅な遅刻、授業中の私語、退出、スマホ等の操作は厳禁とする。1/3を超える欠席は失格となるので注意すること。
画像
ファイル
更新日付2019/02/02 14:39:56