開講年度2019
科目名生命に関する諸問題Ⅰ
科目ナンバーB231-118-03
開講種別春学期
対象学年2年
担当者城 貞晴
単位数2
曜日・時限春学期 火曜日 1時限
キャンパス名城公園キャンパス
実務経験のある教員による授業科目


テーマ
「時の矢」から見える生命の世界
授業の概要
私たちは、モノやエネルギーの目まぐるしい移動、時々刻々と激しく変化する環境の中で過ごしています。従来の物理学では、ありのままの自然の姿をそのまま受け入れることが出来ず、主要と認識される条件のみを取り上げて、自然を理解しようと努めました。しかし、その結果、自然の姿はまるで機械仕掛けのようにしか映らなくなってしまいました。そんな世界観が永らく受け継がれてきましたが、近年、ようやくありのままの自然の姿をそのままに受け入れて扱おうとする物理学が登場してきました。主にブリュッセル学派が進展させたその体系の概要を垣間見ながら、私たち生命体について、捉えて直していきます。
授業の到達
目標
一杯のコップの水の中にインクを一滴垂らすとどうなるか、想像してみてください。インクはコップの中に広がり、二度ともとの一滴のインクに戻ることはありませんね。そこには、乱雑さを増す方向性をもった変化があります。一方で、無秩序から秩序を形成することはあるのでしょうか?銀河や星の形成、生命の発生など、実に多くの例が挙げられます。生命体については、組織を失うどころか、より高度な組織を形成していると言わざるを得ません。なぜそんなことが起きるのでしょうか。本講義は、そんな素朴な疑問に答えようとするものです。
本講義終了の頃には、以下の各トピックが一つに見えてくるでしょう。
授業計画
回数授業スケジュール授業時間外学修・時間(分)
1イントロ
本講義の概要を説明します。また、本講義で扱う学問体系を構築してきた物理学者達を紹介します。
本講義では、教科書も参考書も購入不要。ノートをとって復習しましょう。出来るだけ数式を用いずに概要を説明します。特に大切な部分を強調するので、そこを中心として、理解に努めましょう。(20)
2物理的時間と時の矢
伝統的な物理学で用いられる時間にはどのような性質があるでしょう。そして、私たちの感じる時間との違いはどのような点なのでしょうか?散逸構造論を提唱したプリゴジンは生涯にわたって時間について深く考察しました。その概要をまとめてみます。
ノートをよく復習しましょう。(20)
3時の矢を理解するために
私たちが感じる時間を理解するために、一度基礎的な内容を表にして整理します。ここでは数式は使いません。身の回りの出来事を例に挙げながら理解を深めます。いずれも素朴な事例ばかりです。
ここで示す表は本講義全般にかかわる大切な基礎です。よく復習しましょう。(20)
4未来は決定論的か確率論的か
宇宙は約137億年前のビッグバンによって誕生したと言われています。そして膨大な時間を経て今があります。毎日のように起こる「思いがけない出来事」は137億年も前から予定されていたのでしょうか?あるいはそうではないのでしょうか?考えてみましょう。
ノートの復習をしましょう。プリゴジンは、伝統的な物理学がかかえる問題点を鋭く指摘しています。その問題点を理解しましょう。(20)
5物理学的に見た「生と死」-孤立系の場合-
外界とモノやエネルギーの交換をしない場合、ほったらかしにしておくとどんなことが起きるのか、考えてみましょう。
ノートの復習をしましょう。エネルギー論だけでは自然現象を説明できないことを理解しましょう。(20)
6物理学的に見た「生と死」-開放系の場合-
外界とモノやエネルギーを交換する場合は、どんなことが起きるでしょうか。まとめてみましょう。
「流れ」が大切になります。ここは「生きているもの」「生きているかのようにふるまうもの」を扱っていることを理解しましょう。(20)
7乱雑さを増す中でこそ形成される秩序 -散逸構造-
乱雑さを増すという動的な流れのある状況でなければ出現しない秩序があります。例を挙げるときりがないほどです。雲、ロウソクの炎、お椀の中での味噌汁の運動、そして何よりも多種多様な生命体など。いずれも流れが途絶えると消えてしまうものばかりです。
「流れ」の中でこそ出現する秩序があることを理解しましょう。この秩序は流れがなくなると消失してしまうはかない存在です。(20)
8準安定状態と熱的死
かつてボルツマンはその尖鋭な洞察力をもって乱雑さを物理量として表現し、宇宙の熱的死を指摘しました。ボルツマンの遺した功績は極めて大きいのですが、当時、残念ながらその重要性を理解できる研究者がいませんでした。ボルツマンの偉業を紹介するとともに、本講義内容の理解を深めていきます。
ボルツマンの業績について、復習しましょう。(20)
9生命体を環境から切り離すことは可能か?
前回の内容の理解を深めるためのトピックです。私たち生命体は一個体で独立に存在していないことは明らかです。ここで一度、生命体を散逸構造の一種であることを確認します。
環境がいかに大切であるか、再認識しましょう。(20)
10生命体が捕食し、排泄をする意味
前回の内容の続きです。生命体は、捕食や排泄を通して外界と関わっていることはもちろんのこと、涙を流す、汗をかくなどにより外界と密接に関わっています。その物理学的意味を解釈します。
エネルギーと粒子の流れを具体的な例を通じて確認します。(20)
11ホメオスタシスとホメオレシス
散逸構造は流れの中で生まれ、また消えていく存在です。また外界の変化に順応するように「進化のフィードバック」という機構を持っています。恒常性維持と進化のいずれのためにもミクロゆらぎが重要です。かつて、ゆらぎの増幅はすなわち崩壊を意味すると捉えられていましたが、今ではその解釈が大幅に変わり、環境変化に順応するためにゆらぎやその増幅が大切だと解釈されています。
進化のフィードバックについて復習しましょう。(20)
12前回の話の続きです。今では、ゆらぎは可能性である、との理解がされるようになってきました。本来、環境は時々刻々変化し、その環境の変化に順応するものとそうでないものとがあることは納得できるはずです。ゆらぎは、環境変化に対応して自らを順応させるために必要な可能性であることを説明します。ノートの復習をしましょう。(20)
13生命状態を考える
生命状態とは一体どんな状態をさしているのでしょうか。かつて、ベルタランフィは一般システム論を唱え、生命体を緊密な相互関連性を保つ一つの有機体として捉えました。個々の構成要素のはたらき以上に構成要素間の結びつきが大切であると指摘しました。伝統的な物理学的手法では見えない、生き生きとした生命の姿が浮かび上がってきます。
伝統的な物理学との比較をしましょう。ニュートン、フック、ホイヘンスの論争がその後の物理学の発展に与えた影響の大きさも重ねて理解してほしいところです。(30)
14生命体とはなんぞや? 
個体行動と集団行動~アリの行列、粘菌による鉄道網の形成を例として~
アリ一匹一匹は間違いなく生命体ですね。ではその行列は生命体と言えるでしょうか?ある種のアリは集団行動によって、合理的な行列の道すじを見出すことが知られています。アリは、集団行動により初期条件に依らない合理的な結論を見出すことが出来るのです。
そろそろ本講義全体を振り返って、整理するとよいでしょう。(30)
15生命体とはなんぞや?
~心臓の鼓動、神経回路網の形成を例として~
前回の内容を深めます。
そろそろ本講義全体を振り返って、整理するとよいでしょう。(20)
    
16定期試験
評価方法・基
準(評価割合)
参加姿勢30点, レポート・小テスト30点、定期試験40点の合計100点満点で評価する。
但し、真剣さが認められない等の場合(教員の指示に従わない、私語、居眠り、無断教室出入、遅刻、飲食など)には上記配点を超えた大幅減点の対象である。
テキスト
書名著者出版社価格ISBNコード備考
1.『なし』
参考書
  ・
参考資料
書名著者出版社価格ISBNコード備考
1.『参考書として以下を挙げるが購入の必要はない。』
2.『生命とは何か』シュレディンガー岩波文庫
3.『混沌からの秩序』プリゴジンみすず書房
4.『存在から発展へ』プリゴジンみすず書房
参考URL
質疑応答
講義時に行ってください。
備考
■普段からノートを整理しておくことを強く勧めます。
画像
ファイル
更新日付2019/02/12 17:33:58