開講年度2019
科目名産業と科学Ⅰ
科目ナンバーB231-118-01
開講種別春学期
対象学年2年
担当者城 貞晴
単位数2
曜日・時限春学期 木曜日 3時限
キャンパス日進キャンパス
実務経験のある教員による授業科目実践的授業


テーマ
ナノスケールで見た表面の世界
授業の概要
「モノの表面しか見ない」と言うと、決して良い意味に聞こえないでしょう。なぜそんな表現が定着したか考えてみると、「内部はわかりにくいが表面は簡単に知ることができる」という固定観念や常識が隠れています。しかし、モノの表面には、実に豊かな世界が広がっています。表面はモノの内部と外部とのインターフェイスにあたり、モノの性質を決める大切な役割を担っています。ナノスケールの素材が必要となった現在の産業界では、表面がそのモノの性質を支配するため表面をよく知らなければ新素材の開発が困難になっています。表面科学は若い学問分野ですが、産業界からの期待が高いのです。本講義では、表面科学の初歩的な話題からナノスケール技術に至るまでを概観します。尚,知財技能士に要求される実務経験「知的財産の創造・保護・活用のいずれかに係る業務に携わった経験」のうち「研究・開発関連業務」も話題として扱います。
授業の到達
目標
モノの外界と内部の境界にあたる表面の役割について、見るという観点から説明できる。
産業と科学の発展は「工夫」「アイデア」によって成されてきたことが理解できる。
授業計画
回数授業スケジュール授業時間外学修・時間(分)
1表面とはなんだろう
そもそも表面とはどんなものなのでしょうか?ざっくりと広義の表面と狭義の表面とに区別されていて、厳密な使い分けがされています。つきつめていくと「これこそが表面だ!」と自信をもって言えるモノはなかなか得難い、そんな奥深い世界へ行ってみましょう。
ノートを中心に復習しましょう。(20)
2ナノスケールの世界へようこそ
いまや原子数個程度の物理的特性などをコントロールすることを前提とする科学技術全盛の時代を迎えています。そんな時代の到来を早々に予言した人物がいました。
ナノスケールでのモノづくりと表面科学との密接な関係について理解しましょう。(20)
3表面が大切な理由
現代はナノテクノロジー全盛の時代です。スケールが小さくなるほど表面の占める割合が増加します。表面への理解を克服しなければ次世代産業は成り立ちません。
モノづくりと表面科学の密接な関係について理解しましょう。(20)
4原子の姿を想像する
私たちの眼の分解能では到底原子の姿を見ることは出来ません。しかし原子の姿は見えずとも、原子たちがどのように並んでいるかが分かる事例が身の回りにあふれています。肉眼で見えるモノの姿から原子の姿を想像するコツをつかんでみましょう。
原子配列を見なくてもどのように配列しているかを知る方法を紹介します。コツをつかんだら、身の回りのものをよく見てみましょう。(20)
5わたしたちにモノが見える仕組み
私たちにとって眼はとても大切なものですね。そもそも眼を通してモノが認識できる仕組みについて確認してみましょう。実は、これこそが顕微鏡の発想の原点。私たちにとって常識的な方法でモノを拡大していこうとしたのですね。また、色素色と構造色の違いやそれぞれの面白さ、応用性などを扱います。
モノが見える仕組みをよくおさえましょう。(20)
6電子顕微鏡で見る表面 その1
人類は、様々な困難を克服しつつ、各種電子顕微技術で高分解能化を達成していきます。電子顕微鏡の開発と改良によってモノの表面の様子もわかってきました。どのようなものが見えて、どのようなものが見えないか、また見えないという状態を如何にして克服してきたか、様々な角度から見て、学びましょう。
顕微鏡開発の歴史を見てみましょう。「工夫」「アイデア」で「出来ないことを出来ることにかえてきた歴史」であることを知りましょう。(20)
7電子顕微鏡で見る表面 その2
一言に電子顕微鏡と言っても実に多くのタイプの顕微鏡があります。わかりやすく、その違いや長所、短所などを紹介しましょう。
どんなものにも長所と短所があります。そのことを知った上で、如何に上手に利用するかがポイントです。(20)
8表面原子配列を知るための装置の開発
「見えない」と言われれば「じゃあきらめるか」、「不可能」と言われれば「仕方ない」でしょうか?「前に進むか引き返すかの瀬戸際」で必ず考えなくてはならないことがあります。それこそが「原理的な問題か否か」です。原理的に不可能でなければアイデアと工夫によって克服する。その繰り返しによって科学技術は進歩しています。そのことを実感できる話題になるでしょう。
問題が生じた時に如何に乗り越えていくかがとても大切です。この辺りを学び取りましょう。(20)
9真空をつくる技術
表面には広義の表面と狭義の表面とがあります。狭義の表面を見るためにどうしても克服しなくてはならない技術、それが真空技術です。まずは、日常生活の中で私たちの生活を支えてくれている真空の話をしましょう。地上に真空をつくる科学技術のおはなしをします。クリーンルームも必要になりますが、クリーンルームにもクラス(レベル)があります。
真空をつくる技術について学びます。そのアプローチは案外素朴なものですが、その達成のために意外なものが次から次へと登場しては敵となっていきます。講義担当者の実体験も交えながらお話します。 (20)
10真空をつくる技術 その2
ところで表面の研究は世界的にどんな地域で盛んだと思いますか?実は、南国パラダイスで表面研究ってあまり進展しないんですね。それはなぜでしょうか?気候と真空技術は密接にかかわっているのです。また、そもそも「真空」とはどんな状態をさすのでしょうか?真空の度合を表すために真空度を定義しなくてはなりませんね。
真空をつくる技術について復習しましょう。そのアプローチは案外素朴なものですが、必ず「工夫」「アイデア」が潜んでいます。それを感じましょう。(20)
11本当に何もひっついていない表面で起こること
人類が手にしている最も高純度な物質はシリコンです。シリコンの「清浄表面」をまだ誰も目にしたことのない時代に、シリコンの表面原子配列を極めて正確に予言した研究者がいます。そして、後にその予言と寸分違わず表面原子が配列していることが実験的に証明されました。世界に誇る偉大な高柳モデルを紹介しましょう。
清浄表面とは何か?そこで何が起きるのか?を見てみましょう。(20)
12原子の気持ちをわかってあげよう
今回は皆さんに表面原子になりきって、その気持ちを理解してもらおうと思います。表面原子の気持は実に素直です。一見ひねくれた構造をしているように見えるその真意がだんだんと分かってくることと思います。原子の気持ちが理解できないままコントロールはできません。大切なことは本物の自然との対話です。
原子1個が意外に身近なものであることを知りましょう。(20)
13原子分解能をもつ顕微鏡の登場
多くの工夫とアイデアにより様々なタイプの顕微鏡が登場しましたが、肝心の原子一つ一つの姿を見ることは困難でした。しかしようやく世界は待望の原子分解能を有す顕微鏡が発明される瞬間を迎えます。それまでの顕微鏡開発の方針とどこが違っていたのでしょうか?それまでの常識や固定観念が如何に顕微鏡開発の邪魔をしていたか、痛感させられたのでした。
常識と固定観念は柔軟な発想を妨げることがあります。価値観をもつことは大切ですがそれがすべてではないという柔軟さ、ゆとりをあわせ持つことが大切そうです。(20)
14更なる高分解能化への挑戦
原子分解能を持つ顕微鏡の登場は表面研究の世界を大きく変えていきました。同時に、更なる高分解能化の検討が続けられています。本講義担当者も取り組んだ研究開発テーマでもあります。
「難しい」「簡単」は、単に感覚的なものにすぎず、印象が変わることも多いのです。何が本質的に重要であるかをつかみとりましょう。(20)
15水素顕微鏡の開発について

原子分解能を持つ顕微鏡の登場によって全ての元素を可視化できたわけではありません。真空技術においても可視化においても、ワルさするモノこそが水素なのです。水素時代の到来を目前に、肝心の水素の姿を見ることが出来ずにいました。そんな中、世界初の水素顕微鏡が我が国で発明されました。本講義担当者も開発に携わったことのある新規顕微鏡について、発案の独創性などを中心に話します。
発想の独創性、工夫とアイデア、基礎の大切さ、日ごろからの積み重ね等、キーワードが満載です。しっかりと復習し、将来に活かしていきましょう。(30)
    
16定期試験
評価方法・基
準(評価割合)
参加姿勢30点, レポート・小テスト30点、定期試験40点の合計100点満点で評価する。
但し、真剣さが認められない等の場合(教員の指示に従わない、私語、居眠り、無断教室出入、遅刻、飲食など)には上記配点を超えた大幅減点の対象である。
テキスト
書名著者出版社価格ISBNコード備考
1.『なし』
参考書
  ・
参考資料
書名著者出版社価格ISBNコード備考
1.『参考書として以下のものが挙げられますが、購入の必要はありません。』
2.『表面の科学』岡田正和大月書店
3.『トライボロジーの基礎』加藤孝久他培風館
4.『真空技術』石丸肇日刊工業新聞社
参考URL
質疑応答
講義時、オフィスアワーを中心に、随時受け付けます。
(オフィスアワー:月火水12:40-13:20)
備考
普段からノートを整理しておくことを強く勧めます。
画像
ファイル
更新日付2019/02/19 12:11:10