開講年度2018
科目名格差社会論
科目ナンバーG231-262-02
開講種別秋学期
対象学年2年
担当者鈴木 佳代
単位数2
曜日・時限秋学期 火曜日 2時限
キャンパス
実務経験のある教員による授業科目


テーマ
「格差」を切り口に社会のありかたについて考える
授業の概要
「格差社会」という言葉が広まった日本も、かつては「一億総中流」と形容されていました。しかし、人類社会の歴史は常に格差と共にあり、近年の格差拡大は社会の二極化と固定化をもたらしたと言われています。この授業では、格差社会の特徴、日本や世界各地に存在する/した格差、格差縮小に向けた取り組みの歴史、社会的な格差が社会や個人にもたらす影響など、「格差」をキーワードにさまざまな社会のありかたについて学び、多角的な視点を身につけることをめざします。また、より良い社会のありかたをめざすには、多様な人々の立場や考え方を理解したうえで、互いに意見を出し合うことが求められます。この授業ではそのトレーニングとして、毎回グループ・ディスカッションを行います。
授業の到達
目標
・社会のあり方や人々の生きざまについて、多角的に見ることができる。
・ディスカッションにおいて、「自分の考えを伝えること」「他者の考えを聞き理解すること」ができる。
・論理的に考えて自分の意見を生み出すことができる。
授業計画
回数授業スケジュール授業時間外学修・時間(分)
1イントロダクション―「格差社会」とは何か
オリエンテーションの後、格差社会の基礎知識に関する講義を受け、その具体的な例について考えるグループディスカッション(4人1組、15分程度)を2回行います。最後に受講票を記入します。
格差が存在すると思われる事例を1つあげ、どのような対策がとられているのか、なぜ問題が解決しないのかを調べる。
ニュースの中から格差に関わる事例を見つける(240分)。
2身の回りの格差について考えよう (1)格差と教育  
前回提出された受講票の一部を紹介し、質疑応答を交えながら要点を復習します。今日の社会において具体的にどのような格差が生じているのかを、教育の側面から考えます。2回のグループディスカッションを挟みながら講義を受け、最後に受講票を記入します。
幼稚園・保育園から大学卒業までにかかる子ども一人あたりの教育費を、すべて公立の場合とすべて私立の場合とでシミュレーションする。
ニュースの中から格差に関わる事例を見つける(240分)。
3身の回りの格差について考えよう (2)格差と雇用・給与
前回提出された受講票の一部を紹介し、質疑応答を交えながら要点を復習します。今日の社会において具体的にどのような格差が生じているのかを、雇用や給与の側面から考えます。2回のグループディスカッションを挟みながら講義を受け、最後に受講票を記入します。
今日の非正規雇用者と労働組合との関係について調べ、問題点を書き出す。
ニュースの中から格差に関わる事例を見つける(240分)。
4格差は完全悪か? (1)機能主義による「格差の正当性」 
前回提出された受講票の一部を紹介し、質疑応答を交えながら要点を復習します。授業では職業に伴う格差は正当なものであるという機能主義論者の主張について考えます。2回のグループディスカッションを挟みながら講義を受け、最後に受講票を記入します。
身近な人の職業の平均賃金を調べ、(1)機能主義理論から見た正当性とその理由、(2)どんな要因が賃金に影響していると考えられるかを書き出す。
ニュースの中から格差に関わる事例を見つける(240分)。
5格差は完全悪か? (2)許される格差と許されない格差~『正義論』
前回提出された受講票の一部を紹介し、質疑応答を交えながら要点を復習します。授業ではどこまでの格差ならば存在しても許されるのかという問いについて考えます。2回のグループディスカッションを挟みながら講義を受け、最後に受講票を記入します。
「問題ある格差」だと考える状況を3つ挙げ、どのような状態が実現したら「許される格差」になるか、ロールズの正義論に基づき具体的な条件を挙げる。
ニュースの中から格差に関わる事例を見つける(240分)。
6歴史や他文化に見る社会格差 (1)人類史における格差
席替え・グループ替えを実施し、新しいメンバー編成となります。
前回提出された受講票の一部を紹介し、質疑応答を交えながら要点を復習します。人類史において格差がどのように生まれ変化してきたのかについて、2回のグループディスカッションを挟みながら講義を受け、最後に受講票を記入します。
今日の格差社会における格差が、身分制度・階級制度における人々の扱われかたの違いとどのような点で異なるのかを書き出す。
ニュースの中から格差に関わる事例を見つける(240分)。
7歴史や他文化に見る社会的格差 (2)カースト制度 
前回提出された受講票の一部を紹介し、質疑応答を交えながら要点を復習します。現代インドに今なお影響を与えるカースト制度について講義や資料映像から学び、2回のグループディスカッションを行います。最後に受講票を記入します。
カースト制度が今日のインド社会においても生きていることについて、機能主義理論、ロールズの正義論のそれぞれから説明する。
ニュースの中から格差に関わる事例を見つける(240分)。
8歴史や他文化に見る社会的格差 (3)イスラム社会
前回提出された受講票の一部を紹介し、質疑応答を交えながら要点を復習します。今日の世界情勢にを語る上で外すことのできないイスラム社会について、講義や資料映像から学び、2回のグループディスカッションを行います。最後に受票を記入します。
イスラムフォビアについて調べ、日本でのイスラム社会の報道が日本人のイスラム認識にどのような影響を与えていると考えられるか書き出す。
ニュースの中から格差に関わる事例を見つける(240分)。
9格差のない社会は目指せるか?(1)イスラエルのキブツ
前回提出された受講票の一部を紹介し、質疑応答を交えながら要点を復習します。社会主義的実践を行う集団「キブツ」について、2回のグループディスカッションを挟みながら講義を受け、最後に受講票を記入します。
キブツの暮らしや問題点について、インターネットや書籍でさらに調べて書き出す。
ニュースの中から格差に関わる事例を見つける(240分)。
10格差のない社会は目指せるか?(2)社会主義はなぜ崩壊したか
前回提出された受講票の一部を紹介し、質疑応答を交えながら要点を復習します。戦後の世界情勢を理解する上で欠かせない「社会主義」について、2回のグループディスカッションを挟みながら講義を受け、最後に受講票を記入します。
中国がどのようにして社会主義政治と自由主義経済を両立させているのか、そこで生じている問題にはどのようなものがあるかを調べ、書き出す。
ニュースの中から格差に関わる事例を見つける(240分)。
11格差のない社会は目指せるか?(3)社会保障制度の役割
席替え・グループ替えを実施し、新しいメンバー編成となります。
前回提出された受講票の一部を紹介し、質疑応答を交えながら要点を復習します。格差を縮小させる機能を持つ社会保障について、2回のグループディスカッションを挟みながら講義を受け、最後に受講票を記入します。
授業内で取り上げたフィンランドの社会保障制度とその社会について、批判されている側面や社会で起こっている問題を調べて書き出す。
ニュースの中から格差に関わる事例を見つける(240分)。
12格差拡大の帰結 (1)社会的格差と健康 
前回提出された受講票の一部を紹介し、質疑応答を交えながら要点を復習します。格差社会が社会全体の不利益となる顕著な例のひとつが健康問題です。2回のグループディスカッションを挟みながら講義を受け、最後に受講票を記入します。
健康格差が(1)子ども、(2)20-50代の成人、(3)高齢者のそれぞれにとって、本人や周りの人にどのような問題をもたらすかを書き出す。
ニュースの中から格差に関わる事例を見つける(240分)。
13格差拡大の帰結 (2)社会的格差と犯罪 
前回提出された受講票の一部を紹介し、質疑応答を交えながら要点を復習します。格差社会が社会全体の不利益となる顕著な例のひとつが犯罪の増加です。2回のグループディスカッションを挟みながら講義を受け、最後に受講票を記入します。
2000年代以降に日本で起きた大きな犯罪をひとつ取り上げて調べ、その背景に格差社会がどのように関わっていたと考えられるか書き出す。
ニュースの中から格差に関わる事例を見つける(240分)。
14格差拡大の帰結 (3)『希望格差社会』
前回提出された受講票の一部を紹介し、質疑応答を交えながら要点を復習します。格差が浸透した社会になることで、どのような悪循環が生まれるのかを学びます。2回のグループディスカッションを挟みながら講義を受け、最後に受講票を記入します。
ある日の新聞一紙全体に目を通し、日本国内・世界規模の希望格差を反映している、あるいは希望格差を生み出すと考えられる事例や現状を色ペンで囲む。
ニュースの中から格差に関わる事例を見つける(240分)。
15総論―格差社会の現状と課題
前回提出された受講票の一部を紹介し、質疑応答を交えながら要点を復習します。また、授業全体についても振り返りを行います。2回のグループディスカッションでは、今日の格差社会の問題を解決していくために必要なことを、具体的な事例と社会全体の条件の2点から考えます。最後に受講票を記入します
第1~14回の授業レジュメ末尾の要点まとめページを確認し、理解の曖昧な点について書き出しておく。
ニュースの中から機会に関わる事例を見つける(240分)。
    
16定期試験
振り返りのためのフィードバックとして、試験期間終了後、希望者にはG609で正答例および解説を提示します。
評価方法・基
準(評価割合)
受講票(30%)…毎回の授業の終わりに記入して提出します。学びや気づきの深さ、授業外の学修、時事問題への認識等により評価します。
グループディスカッション(30%)…毎回の授業で各グループ1枚のワークシートにディスカッション内容を記入して提出します。ディスカッションの深さや幅広さにより評価します。基本的にはグループ全員に同じ得点が与えられますが、参加態度が悪い者の評価は大幅に下がります。ディスカッショングループは学期中に2度変更します。
定期試験(40%)…授業で学んだ基本的な知識の理解を問う試験です。問題には正誤・四択・記述式が含まれます。
テキスト
書名著者出版社価格ISBNコード備考
1.『授業内でレジュメおよび資料を配布します。』
参考書
  ・
参考資料
書名著者出版社価格ISBNコード備考
1.『健康格差社会を生き抜く』近藤克則朝日新書780+税978-4022733177
2.『格差社会―何が問題なのか』橘木俊詔岩波新書842978-4004310334
3.『「希望格差」社会―負け組の絶望感が日本を引き裂く』山田昌弘ちくま文庫680+税978-4480423085
参考URL
1.レジュメ上で参考URLを紹介します。
質疑応答
授業前後に声をかけてください。オフィスアワー(水曜3限)にも受け付けます。
備考
毎回の授業のレジュメ末尾に関連図書を提示しますので、各自復習・発展学習に利用してください。シラバス内で参考図書として挙げたのはその中でも比較的読みやすい文献です。
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ファイル
更新日付2018/02/13 21:33:11