開講年度2018
科目名物理学Ⅱ
科目ナンバーB131-420-02
開講種別秋学期
対象学年1年
担当者山下 護
単位数2
曜日・時限秋学期 火曜日 3時限
キャンパス
実務経験のある教員による授業科目


テーマ
20cになって、原子の探求から新しい物理の世界が開かれた。これが現代物理学であり、この講義の世界である。
授業の概要
現代物理学は原子の世界(ミクロな世界)で生起する現象を対象とするので、日常なじみがなく専門家を除いては抽象的なものであり、日常的な経験世界(マクロな世界)で得られる知識では理解しがたい概念もある。しかしその成果は様々な技術に生かされており、そこを接点に日常生活と深く結びついている。この講義では19c中葉以降の現代物理学の発展を、現代使われている諸道具を例にしながら講義する。
授業の到達
目標
諸物質は原子の集まりであり、原子は原子核とそれを取り囲む電子からできている。受講者に求められることとして、問題としている現象は原子のレベルか、電子のレベルか、または原子核のレベルでのことかを理解することが必要である。
そのうえでの到達目標は次の2点である。
  一つ一つの現象について人に説明が出来ること。
  似た現象について互いに関連付けて理解し、人に話せること。
授業計画
回数授業スケジュール授業時間外学修・時間(分)
1原子論の歴史:教科書該当部分なし(参考文献のChap. 1)
 古代ギリシアでデモクリトスによって主張された原子論は紆余曲折の末近世ヨーロッパに伝えられ、19c初頭のドールトンの原子論に結実する。この原子論は現代化学の基礎の1つになっている。この原子論の考え方について講義し、現代物理学との関係についても述べる。
「予習」シラバスをよく読み講義の全体像を把握しなさい。また、デモクリトスの原子論、ドールトンの原子論を調べなさい。。(1時間)
2真空放電と電子の発見:教科書該当部分なし
 真空技術の向上と相まって、真空放電という現象が発見され探求された。そこで知られた陰極線の正体を解明したのがJ. J. トムソンである。これがのちに電子と呼ばれるようになった。ところでこの電子の質量は最も軽い原子である水素の2千分の1ほどであるということから、原子は基本粒子ではなく構造があると考えられるようになった…。
「復習」先回の講義のまとめ(半時間)
「予習」真空放電とはどのような現象か?(半時間)
3原子構造:Chap. 9
 電子は原子の中に存在することがほぼ確かになったが、原子はどのような構造か?この問いに答えたのがラザフォードである。α線を金属箔に照射し、その散乱具合の観測から、原子の中心に核(原子核)があり、それを電子が取り巻いているという構造を明らかにした。これは事実であるが、電磁気学によればこのような電子の状態は安定には存在し得ないはずであり、理解しがたいものである...。
「復習」先回の講義のまとめ(半時間)
「予習」Chap. 9の原子モデルの項をよく読んで下さい。(半時間)
4電磁波:教科書該当部分なし(参考文献のChap. 5最後の部分)
 先回の原子構造にまつわる矛盾解明の前に、同時期までに解明された3テーマについて3回に亙り講義する。今回は電磁波。
「復習」先回の講義のまとめ(半時間)
「予習」電磁波について調べなさい。(半時間)
5熱輻射:Chap. 8プランクの式の部分
 19c末には星が光る原因、街灯設置の拡大、溶鉱炉の中のエネルギー分布(スペクトル)など光についての関心が高まっていた。プランクは高温物質が出す光のスペクトルについて、長波長、短波長とどの領域においても実験に合う式を見出した。しかしこれを導くには(光は波動でありエネルギーは連続的な値をとるはずなのだが)とびとびの値(量子)をとるとしなければならない…。
「復習」先回の講義のまとめ(半時間)
「予習」Chap. 8プランクの式の部分。(半時間)
6光電効果:Chap. 8光電効果の論文の部分
 光のエネルギー量子という考えは、提案者のプランクでさえ理解に苦しんだといわれている。アインシュタインはこの考え方をさらに進め、原子の世界において、光は粒子(光子)としてふるまうと主張し、金属が光を照射されると電子を放出するという「光電効果」を見事に説明した。光は波動であるにもかかわらず粒子でもあるという。
「復習」先回の講義のまとめ(半時間)
「予習」Chap. 8光電効果の論文の部分。(半時間)
7水素原子の理論:Chap. 9 p. 47までの前半部分
 3回目の講義で話した原子構造における矛盾について、解明の試みがボーアによってなされた。原子核を取り巻いている電子の状態について、原子らの放出される光のスペクトルをヒントに、水素原子における電子の状態(固有状態)を得た。後に「電子は波動としてふるまう」ということが主張され、実証された。
「復習」先回の講義のまとめ(半時間)
「予習」Chap. 9 p. 47までの前半部分をよく読みなさい。(半時間)
8放射性物質の発見:Chap. 11前半M. キュリーの部分、Chap. 13 P. 169中間子の部分
 原子核は複合粒子であり、陽子と中性子とからなる。核は複合粒子としてなぜ安定か、そのエネルギーはどうか。今回は核の構成と性質について講義する。
「復習」先回の講義のまとめ(半時間)
「予習」Chap. 11前半キュリーの部分、Chap. 13 P. 169中間子の節を読みなさい。(半時間)
9核の崩壊と半減期:Chap. 11前半M. キュリーの部分
 原子核には同位体が存在し、そのうちあるものは不安定で放射線を出して崩壊する(放射性同位体)。そのダイナミックスを特徴づけるのが半減期である。今回は代表的な崩壊の仕組みと放射線、半減期などについて講義する。
「復習」先回の講義のまとめ(半時間)
「予習」Chap. 11前半M. キュリーの部分を再度よく読みなさい。(半時間)
10崩壊系列、原子核の人口変換: Chap. 11後半L. マイトナーの部分
 原子番号が84以上の原子の原子核は崩壊を繰り返し、鉛に至って安定化する。これを崩壊系列という。また人工的に核の変換が行われるようになった。ウランなどに中性子を照射しウランよりも原子番号の大きい原子核を創生する試みのなかで、核の分裂が発見され、これが連鎖反応性であることが分かった。ここに原爆製造の道筋が得られた...。
「復習」先回の講義のまとめ(半時間)
「予習」Chap. 11前半L. マイトナーの部分を読みなさい。(半時間)
11核分裂とエネルギー:Chap. 11後半L. マイトナーの部分
 ウランが核分裂を起こすことが分かったが、これはウランの同位体235Uである。天然には235Uは0.7%しか含まれておらず、99.3%は238Uである。おりしも第2次世界大戦勃発前夜...。今回は原爆の原理と分裂生成物について講義する(日本は唯一の原爆被爆国である)。
「復習」先回の講義のまとめ(半時間)
「予習」Chap. 11前半L. マイトナーの部分を再度読みなさい。(半時間)
12原子力発電と放射線量:教科書該当部分なし
 2011年の東日本大震災で東日本は大被害を被ったが、津波による原子力発電所事故が被害の質を変えてしまった。原発や反応生成物からの放射線についての理解は今日的に重要であるので、今回は原発の基本原理と放射線の線量について講義する。
「復習」先回の講義のまとめ(半時間)
「予習」実効線量シーベルトとは何だろうか?(半時間)
13宇宙と星:Chap. 10前半(p. 84まで)
 星が光るそのエネルギー源は何であろう?太古からの人類の疑問が20c前半に解明された。核融合という現象で、水素爆弾も原理は同じである。まずこれらについて解説し、続いて宇宙の空間的構造について話す。
「復習」先回の講義のまとめ(半時間)
「予習」Chap. 10前半(p. 84まで)を読んで下さい。(半時間)
14膨張宇宙論:Chap. 10後半(p. 84から)
 ある種のグループの星の地球からの距離と後退速度の観測からこれらの間にはある深い関係があることが分かり、そこから137億年前にこれらの星が一点から膨張をし始めたということが結論された。これが1929年のハッブルの法則である。後に宇宙のあらゆる方向からやってくるマイクロ波が計測され、膨張によって宇宙の温度が2.7Kまで冷えたことが示された。
「復習」先回の講義のまとめ(半時間)
「予習」Chap. 10後半(p. 84から)を読んで下さい。また、熱輻射(第5回)についても復習しておいてください。(半時間)
15物性物理学:Chap. 14前半(p. 200まで)
 現代物理学では、無数ともいえる原子の集団である物質の様々な性質も解明している。この分野を物性物理学と呼んでいる。今回は固体中の電子の特異なふるまいから半導体素子を発明し、エレクトロニクス革命を起こしたバーディーンらの業績について講義する。真空管からトランジスタへの転換である。トランジスタの小ささが集積を生み、量が質の転換を可能にした。
「復習」先回の講義のまとめ(半時間)
「予習」エレクトロニクス技術で皆さんの生活は父祖の時代に比べてどのように変わったかを念頭に、Chap. 14前半(p. 200まで)を読みなさい。(半時間)
    
16定期試験
評価方法・基
準(評価割合)
定期試験(参照物件なし)60%、講義中に行う小テストなど40%
 ほぼ毎回、講義の終わり(場合により講義途中)に学習内容について小テスト(まとめなど)を実施する。
テキスト
書名著者出版社価格ISBNコード備考
1.『人物で語る物理入門(下)』米沢富美子岩波書店864円4-00-430981-6
参考書
  ・
参考資料
書名著者出版社価格ISBNコード備考
1.『人物で語る物理入門(上)』米沢富美子岩波書店821円4-00-430980-8
参考URL
質疑応答
講師は非常勤講師であり学生諸君との直接の接触は講義時間内に限られるので、質問大歓迎。時間外の質問・連絡メールには学籍番号と氏名をタイトルに記入するように。
アドレス:mayam@phen.mie-u.ac.jp
備考
当然のことながら、講義中の私語厳禁です。講義中の携帯電話等の操作は禁止し、違反者は退出していただきます。
画像
ファイル
更新日付2018/01/14 10:54:34