開講年度2018
科目名障害者教育史
科目ナンバーL111-276-01
開講種別春学期集中
対象学年1年
担当者山﨑 由可里
単位数2
曜日・時限春学期集中 その他 集中
キャンパス
実務経験のある教員による授業科目


テーマ
日本の近代化と障害者教育問題の顕在化・社会化
授業の概要
本科目は、現在の障害児教育(特別支援教育)が直面している諸課題について、その社 会的背景や歴史的経緯を学びながら理解を深めることを目的とする。具体的には、日本 の近代化(資本主義化)と重ね合わせて障害児教育のあゆみをとらえ、盲教育・ろう教育 を中心とした障害児教育の嚆矢、障害者「有用」「無用」論、生涯にわたる障害者支援を 目指した保護施設(滝乃川学園)、知的障害児や貧困児、虚弱児への特別な教育(特別 学級史)、施設をつくり医療・教育を結びつけ生活を保障した治療教育の実践化(三田谷 治療教育院、八事少年寮など)、戦時下における障害児教育の衰退、戦後教育改革に おける障害児教育の位置づけ、文部省実験校の設立や学習指導要領の作成、重症心 身障害児の発達の可能性を引き出す療育の試み、就学保障運動などを取り上げる。
授業の到達
目標
障害児教育の現状(制度的・理論的・実践的な基礎的事項の理解を含む)と諸課題、その歴史的変遷と到達点、諸課題を解決する将来的な展望について理解することを目的とし、具体的には以下の事項を理解し障害児問題を解決する将来的な展望をもつことを目指す。
1.日本の近代化(資本主義化)と重ね合わせて障害児教育のあゆみをとらえ、盲教育、ろう教育を中心とした障害児教育の嚆矢
2.就学猶予・免除規定の変遷、障害者「有用」論
3.生涯に亘る障害者支援を目指した保護施設(滝乃川学園など)
4.知的障害児や貧困児、虚弱児への特別な教育(特別学級史)
5.医療と教育を結びつけた治療教育の実践化(治療教育施設:八事少年寮など)
6.戦時下における障害児教育の衰退
7.戦後教育改革における障害児教育の位置付け
8.文部省実験校の設立や学習指導要領の作成
9.重症心身障害児の療育
10.就学保障運動など
授業計画
回数授業スケジュール授業時間外学修・時間(分)
1近代における障害者問題の展開と現代的課題について、ナチスのT4作戦と障害者殺傷事件を取り上げて考える。DVDも用いながら説明する。この問題について、グループディスカッションを取り入れ、受講生で話し合いを行う。集中講義のため、講義初日(3コマ)前に資料を配布し、講義までに予習を課す。
事前に配布するインクルーシブ教育に関する資料を読み、要旨を理解し、疑問や不明な点をメモしておこと。60分程度。
2障害者権利条約の発効、インクルーシブ教育など、障害者問題を取り巻く国際的な動向と到達点について、DVDも用いながら説明する。この問題について、グループディスカッションを取り入れ、受講生で話し合いを行う。集中講義のため、講義初日(3コマ)前に資料を配布し、講義までに予習を課す。
事前に配布する日本の障害者問題に関する資料を読み、要旨を理解し、疑問や不明な点をメモしておくこと。60分程度。
3日本の近代化と障害者「有用」論について、福沢諭吉『西洋事情』などを参照しつつ、説明する。この問題について、グループディスカッションを取り入れ、受講生で話し合いを行う。集中講義のため、講義初日(3コマ)前に資料を配布し、講義までに予習を課す。
事前に配布する福沢諭吉『西洋事情』を読み、要旨を理解し、疑問や不明な点をメモしておくこと。60分程度。
4義務教育制度の確立と就学猶予・免除規定について、学制以降の教育関係法と就学猶予・免除規定の変遷を中心に説明する。その際、教育関係法だけでなく、日本で最初の児童に関する法律である感化法についても言及する。集中講義2日目の講義内容にかかわる資料を配布し予習を課す。日本の教育法制と就学猶予・免除の表から読み取れることを800字程度でまとめてくること。60分程度。
5障害者の生涯に亘る支援の試み(滝乃川学園)について、石井筆子を取り上げたDVDも視聴しつつ、戦前の障害児教育や福祉に対する障害者施設が果たした役割について説明する。集中講義2日目の講義内容にかかわる資料を配布し予習を課す。石井筆子に関する資料に目を通し、彼女の生涯に関する理解を深めておくこと。60分程度。
6医療・教育・生活の三者を統一して保障した治療教育施設(三田谷治療教育院・八事少年寮)の成り立ち、その意義と限界などについて講述する。集中講義2日目の講義内容にかかわる資料を配布し予習を課す。三田谷啓や杉田直樹など障害児施設を開設した医師に関する資料に事前に目を通し、彼らがなぜ施設開設に至ったかについて考えてくること。60分程度。
7知的障害児や貧困児童、虚弱児への特別な教育(貧民学校、特別学級史)について、万年小学校(坂本龍之介校長)などの特別学級を例に挙げながら説明する。集中講義2日目の家庭の貧困問題と子どもの就学・学力問題など、現代的な問題とオーバーラップする事項に関する資料を配布する。自分なりの見解を1000字程度でまとめてくること。60分程度。
8戦時下の障害児教育と戦争問題について、戦争に加担させられた障害者、障害児学校や施設の疎開問題などにもふれながら、DVDも用いて説明する。集中講義3日目の講義内容にかかわる資料を配布し予習を課す。帝国陸軍障害兵士に関する資料を読み、戦争と障害者問題に関する問題意識を深めて授業に臨むこと。60分程度。
9戦後教育改革における障害児教育の位置付けについて、写真資料も示しながら説明する。集中講義3日目の講義内容にかかわる資料を配布し予習を課す。アメリカ教育使節団のレポートの一部を読み、疑問などメモを作ること。60分程度。
10戦後改革期から高度経済成長期における知的障害児教育の変遷
-その1)文部省実験校の設立、「水増し」教育、バザー単元、学校工場方式、について説明する。
集中講義3日目の講義内容にかかわる資料を配布し予習を課す。『青鳥10年』などの資料の一部を配布数するので目を通してくること。60分程度。
11戦後改革期から高度経済成長期における知的障害児教育の変遷
-その2)学習指導要領の作成、遠山啓の原教科、近藤益雄の綴り方教育など
集中講義3日目の講義内容にかかわる資料を配布し予習を課す。品川プランなどの資料を配布するので、事前に目を通すこと。60分程度。
12小林堤樹による重症心身障害児問題の提起について、当時の新聞記事なども用いながら説明する。集中講義4日目の講義内容にかかわる資料を配布し予習を課す。1950年代~60年代にかけての障害者問題(不就学・子殺し・一家心中など)に関する資料を配布するので、疑問などメモを作成すること。60分程度。
13糸賀一雄による発達保障論と重症心身障害児への療育について、「一次元の子どもたち」などのDVDも用いながら説明する。集中講義4日目の講義内容にかかわる資料を配布し予習を課す。糸賀一雄の著作の一部を配布するので、目を通してくること。60分程度。
14不就学児童の実態調査と就学保障運動について、不就学児童実態調査や不就学問題を扱ったDVDなどを用いながら説明する。集中講義4日目の講義内容にかかわる資料を配布し予習を課す。『不就学児「人間権」宣言』の一部を配布するので、目を通してくること。60分程度。
15総括
講義全体を振り返り、補足説明やまとめをおこなう。
集中講義4日目の講義内容にかかわる資料を配布し予習を課す。60分程度。
    
評価方法・基
準(評価割合)
・レポートによる試験を課す。
・評価は、授業参加状況とレポート試験との総合評価。レポート70%、出席状況30%。
・レポートの採点基準は、1)テーマに沿って自分の見解を論理的に書けているか、2)文献や資料を参照して書いているか(感想文は不合格)、3)文献やインターネット上での資料などの丸写しは不可である。
・原則として、出席が15回中10回未満の者は、評価の対象としない。欠席についての扱い(忌引きなどやむを得ない理由等)は、愛知学院大学の規程に基づいて判断する。
テキスト
書名著者出版社価格ISBNコード備考
1.『授業でレジュメ・資料を適宜配布』自習や復習に活用すること
参考書
  ・
参考資料
書名著者出版社価格ISBNコード備考
1.『障害児教育の歴史』中村満紀男他編明石書店
2.『障害者教育史』清水寛他編川島書店
3.『特殊教育百年史』文部省東洋館
4.『その他、授業で論文や著書を適宜紹介する』
参考URL
1.滝乃川学園日本で最初の知的障害者施設のHP
2.文部科学省学制百年史ネットで本文・資料の閲覧可能。特殊教育のあゆみを通常の教育のあゆみと相対化して学習できる。
3.三田谷治療教育院小児科医三田谷啓が開設した三田谷治療教育院のHP
質疑応答
授業時、授業後の質問を随時受け付けます。直接あるいはメールでお願いします。また各授業日の最後に配付するコメントシートに記入してもよいです。回答は授業時に行い、最終日の質問は教務課を通して回答します。
備考
画像
ファイル
更新日付2018/02/09 16:51:12