開講年度2018
科目名物理学Ⅰ
科目ナンバーB131-420-01
開講種別春学期
対象学年1年
担当者山下 護
単位数2
曜日・時限春学期 火曜日 3時限
キャンパス
実務経験のある教員による授業科目


テーマ
古代ギリシアで始まった自然解明の結果、力学、電磁気学、熱力学として体系化された。古典物理学と呼ばれるこれらの世界を講義する。
授業の概要
我々が日頃見聞きし、触れることのできる自然現象は多様である。その多様性の中に潜む原理は何であるか、それを追求して得られた結果が上述の古典物理学である。この講義では日常体験から得られている常識を判断基準としつつ、自然現象をいかに合理的に理解したらよいかを考えていきたい。考察の対象は天体の運動を含む物体の運動、物質の電気的磁気的性質、および熱現象である。
授業の到達
目標
自然現象の理解は厳密には数学的表現が必要であるが、定性的な範囲に限るとすればそれなりに満足できる理解が得られる場合が多い。この講義では講師は受講者がそのような理解が得られるよう努める。
到達目標は次の2点である。
  一つ一つの現象について人に説明が出来ること。
  似た現象について互いに関連付けて理解し、人に話せること。
授業計画
回数授業スケジュール授業時間外学修・時間(分)
1序とイオニアの自然学:Chap. 1
 古代ギリシアで学問が始まったとされるが、それは自然学であった。タレースは多様な自然現象の中にすべての物質が従う原理があるはずだと考え、それを「水」に求めた。この一元論の考え方が「空気」「火」などの提案を経てエンペドクレスの「四元論」に収斂される。講義では講義全体の展望を語り、続いて、イオニアの自然学を紹介する。
「予習」シラバスをよく読み、Chap. 1の前半ギリシア哲学―第一期部分を予習しなさい。(1時間)
2原子論とアリストテレスの自然学:Chap. 1
 後世の物理学に大きな影響を与えた自然学としてデモクリトスの原子論と、それまでの自然学を集大成したアリストテレス自然学がある。講義ではこれらについて述べるが、併せて後世の物理学の発展への影響について触れる。
「復習」先回の講義のまとめ(半時間)
「予習」Chap. 1のギリシア哲学―第二期部分を予習しなさい。(半時間)
3アレクサンドリアの科学:Chap. 1
 ヘレニズム期の学問の中心はアテナイとアレクサンドリアであったが、特に後者では国王の庇護のもとに科学振興が図られた。ここで以降の科学の規範となり、現代にも生きている科学的成果が成し遂げられた。講義では、ピュタゴラス、アリスタルコス、アルキメデスを中心にそれらの成果を解説する。
「復習」先回の講義のまとめ(半時間)
「予習」Chap. 1のギリシア哲学―第二期のアルキメデスの項を予習しなさい。(半時間)
4アレクサンドリアの科学II-宇宙論―:Chap. 1
 アリスタルコスの新規な太陽中心説、ヒッパルコス、プトレマイオスよって精緻な構造に塗り替えられたアリストテレスの宇宙論について説明し、後世への影響、またそれに批判的な考えの芽生えなどについて述べる。
「復習」先回の講義のまとめ(半時間)
「予習」Chap. 1のギリシア哲学―第二期の最後のところにプトレマイオスの宇宙構造が説明されている。また、アリスタルコスの業績は?(半時間
5地球中心説から太陽中心説へ:Chap. 2
 古代ギリシアの学問的遺産は中世西洋世界へ直接伝えられたのではなくイスラム帝国を経て伝えられたのであった。この経緯について簡単に説明し、近世への扉を開いたコペルニクスによる太陽中心説を詳しく述べる。
「復習」先回の講義のまとめ(半時間)
「予習」Chap. 2のコペルニクスの項を予習しなさい。(半時間)
6天体の運動―ケプラーの法則―:Chap. 2
 コペルニクスの太陽中心説は、天体の運動については周転円を含むように、未だ古代の残滓を残すものであった。天体観測の詳しいデータを駆使して、天体の運動を正確に記述したのがケプラーである。ここに観測データの精度が科学法則の正誤を支配するという歴史的事実に出会う。
「復習」先回の講義のまとめ(半時間)
「予習」Chap. 2のティコ・ブラエ、ケプラーの項を予習しなさい。(半時間)
7ガリレイによる落体の法則:Chap. 2
 ケプラーが天体の運動を正しく記述したが、地球上での物体の運動を正しく記述したのがガリレイである(落体の運動)。彼は太陽中心説の熱烈な支持者であった。地球が太陽を中心に回っているとすれば、地球上の諸物体は振り落とされてしまうのでないか、これが太陽中心説への古代からの反論であった。ガリレイはこれへの反論としてガリレイの相対論を提案している。
「復習」先回の講義のまとめ(半時間)
「予習」Chap. 2のガリレイの項を予習しなさい。(半時間)
8力学の完成:Chap. 3
 ガリレイの没年の1642年にニュートンは生まれた。ニュートンは数多くの科学的、また数学的成果をあげたが、最大の業績は力学の完成である。今回は力学の法則を学ぶ。なお、コペルニクスの少し前の時期からニュートンによる力学の完成までの、人々の科学的探究の活動を総称して「科学革命」と呼ぶ。
「復習」先回の講義のまとめ(半時間)
「予習」Chap. 3の前半(p. 59まで)を予習しなさい。(半時間)
9万有引力の法則:Chap. 3
 ニュートンは「プリンキア」において力学の法則とともに、万有引力の法則を提示し、ケプラーの法則を数学的に証明した。これにより、力学の法則と万有引力の法則が正当化されたことになる。これらを解説するとともに、フランスなど大陸でのニュートン力学の受容、ハレー彗星、海王星の発見など後世への影響についても述べる。
「復習」先回の講義のまとめ(半時間)
「予習」Chap. 3の後半を予習しなさい。(半時間)
10光の性質:Chap. 4
 光の諸性質(光速、直進、反射屈折)、光のスペクトルなどについて講義する。ホイヘンスやニュートンの時代以来、光は粒子か、波動かというのが一つの論点であったが、19c中葉に光は波動であることがっ分かった。これらについても述べる。
「復習」先回の講義のまとめ(半時間)
「予習」Chap. 4の前半(p. 87まで)を予習しなさい。(半時間)
11波の性質:Chap. 4
 光は波動であることが分かった。波動の一般的性質である干渉、回折について解説し、これらを「ホイヘンスの原理」により深く理解できることを示す。
「復習」先回の講義のまとめ(半時間)
「予習」Chap. 4の後半を予習しなさい。ホイヘンスの原理とは?(半時間)
12電気と磁気:Chap. 5
 電気、磁気ともに古代ギリシアから知られていたが、科学的探究が本格的に始まったのは18cになってからである。正負2種の電気があること、同種の電気は反発し合い、異種の電気が引き合うことなどの諸性質が明らかにされる中で、電気、磁気ともにクーロンの法則が見出された。今回の講義は18c末までに明らかにされた電気、磁気の性質について学ぶ。
「復習」先回の講義のまとめ(半時間)
「予習」Chap. 5の前半(p. 122まで)を予習しなさい。(半時間)
13電磁気学:Chap. 5
 1820年にエルステッドは電流が流れると周りに磁場が生じることに気付いた。ここから電磁気学が始まる。これがアンペールの法則、ビオ=サバールの法則としてまとめられた。モーターの原理である。さらに磁場の変化が起電力を生じるという電磁誘導の法則が発見されたが、これは発電の原理である。今回は電磁気学の諸法則について学ぶ。
「復習」先回の講義のまとめ(半時間)
「予習」Chap. 5の中半(pp. 122 - 137)を予習しなさい。(半時間)
14マクスウェル方程式と電磁波:Chap. 5
 マクスウェルは電磁気学の4つの基本法則を4元の偏微分方程式にまとめることに成功した。マクスウェル方程式と呼ばれるこの方程式から真空中を伝わる波動(電磁波と呼ばれる)を得たが、その速さが光速に一致することから、光は電磁波の一種であることが分かり、後に電磁波が実証された。電磁気学の名実ともの完成である。この内容に加え、種々の電磁波について講義する。
「復習」先回の講義のまとめ(半時間)
「予習」Chap. 5の後半を予習しなさい。(半時間)
15熱と温度について:Chap. 6
 熱とは何か、温度とは何か、これらについての科学的理解は電磁気学と同様に19cになってからである。「力学」「電磁気学」「熱力学」を物理学の古典体系というが、最後の講義で熱力学を学ぶ。熱の本性の追求から「エネルギー」という概念が生まれ、エネルギー保存の法則、エントロピー増大の法則へと結実する。
「復習」先回の講義のまとめ(半時間)
「予習」Chap. 6の前半(p. 157まで)を予習しなさい。(半時間)
    
16定期試験
評価方法・基
準(評価割合)
定期試験(参照物件なし)60%、講義中に行う小テストなど40%
 ほぼ毎回、講義の終わり(場合により講義途中)に学習内容について小テスト(まとめなど)を実施する。
テキスト
書名著者出版社価格ISBNコード備考
1.『人物で語る物理入門(上)』米沢富美子岩波書店821円4-00-430980-8
参考書
  ・
参考資料
書名著者出版社価格ISBNコード備考
1.『人物で語る物理入門(下)』米沢富美子岩波新書864円4-00-430981-6
参考URL
質疑応答
講師は非常勤講師であり学生諸君との直接の接触は講義時間内に限られるので、質問大歓迎。時間外の質問・連絡メールには学籍番号と氏名をタイトルに記入するように:mayam@phen.mie-u.ac.jp
備考
当然のことながら、講義中の私語厳禁です。講義中の携帯電話等の操作は禁止し、違反者は退出していただきます。
画像
ファイル
更新日付2018/01/14 10:46:45