開講年度2017
科目名産業と科学Ⅱ
科目ナンバー
開講種別秋学期
対象学年2年
担当者山下 護
単位数2
曜日・時限秋学期 水曜日 1時限
キャンパス名城公園キャンパス
実務経験のある教員による授業科目


テーマ
産業革命以降、産業・技術と科学はどのようにかかわってきたのであろうか
授業の概要
学問は人の営みであって、経済、政治など社会環境と深い関係を持ちつつ発展してきた。本講義は教養課程の基礎の一環として位置づけ、産業と科学技術との関係について、歴史をたどりつつ個別の問題を通じて学習する。文系向きの講義であるが、産業・技術に関連して、科学の基礎的内容が多く含まれる。これらの内容を身につけることは、特に科学技術立国を目指す日本では単に社会人としての教養を高めるにとどまらず、就職活動等にも有益であろう。講義範囲は産業革命から現代まで。
授業の到達
目標
講義スケジュールは後述の通りであるが、講義の性質からして最終目標というものはなく、将来を見据えるための基礎知識修得の出発点として位置付けたい。講義終了時において、講義前に比べて「変わった」との自覚がえられることが目標である。
産業革命とその後の諸産業発展の道筋を想起できるようになること。
 科学が産業・技術の展開にどのように寄与してきたかを歴史的事例の中で理解し、人に話せるようになること。
授業計画
回数授業スケジュール授業時間外学修・時間(分)
1産業革命:教科書第19章(以下、T19のように書く)
 18c、イギリスの紡績業に端を発した産業革命は、機械の使用と動力の開発を通じて、新しい生産様式をもたらし、産業の工業技術化の開始となった。先行する技術は科学に強い刺激を与え、科学の様々な分野が開拓されていった。技術と科学との関連は密接化し、技術が社会の進歩の中核に位置するようになる。
「予習」シラバス全体をよく読み講義の全体像を把握すること。教科書を用意できた学生はT19を読んで予習(1時間)
2熱機関と工作機械技術:T20
 綿紡績の機械化と相まって、水車、風車に代わる新しい工場用動力としてワットの蒸気機関が出現した。また先回学んだ漂泊技術のように周辺の関連産業部門の発達を促した。今回は蒸気機関、工作機械技術、製鉄業について学ぶ。
「復習」先回の講義のまとめ(半時間)
「予習」T20、ワットは何をしたのだろうか?(半時間)
3熱力学の成立:T15、T23、T26
 産業革命が始まったころ、熱と温度の概念区分はいまだ明確でなかった。熱機関の発展に刺激され、また熱効率への関心から、熱の学問的研究が進められていったが、成果が得られるのは19cになってからである。今回は温度の計測、熱概念の追及に始まる熱力学の発展について学ぶ。
「復習」先回の講義のまとめ(半時間)
「予習」T15、T23、T26の中で、T23を中心に準備しなさい。(半時間)
4物質科学および化学工業の発展:T15、T22、T28
 古代ギリシアに始まる物質観は工業の発展に伴う諸物質の発見により修正を受け、ついにデモクリトス流の原子論が定量的議論に支えられて化学的原子論として登場する(19c初頭)。この原子論と化学工業が密接な関係を持つのは少し後のことになるが、産業革命進行に伴い化学工業も並んで展開されていく。
「復習」先回の講義のまとめ(半時間)
「予習」T15、T22、T28の中で、T22のドールトンの原子論を中心に準備しなさい。(半時間)
5電磁気学の発展と通信技術:T21、T26
 電気、磁気ともに古代ギリシア時代から知られていたが、学問研究の歴史は新しい。19cの産業革命進行に伴うように電磁気学の諸法則が発見され、直ぐに技術移転が試みられる。講義では電磁気学の発展とそれに寄り添う通信技術の展開について述べる。
「復習」先回の講義のまとめ(半時間)
「予習」T21、T26の中で、特にT21の通信技術の発展、有線通信、無線通信について調べておいてください。(半時間)
6電気産業の形成:T28
 電磁気学の成果の産業化は多方面にわたる。その基幹となる電気の配送について詳しく述べる。また電車、電気化学などについても触れる。
「復習」先回の講義のまとめ(半時間)
「予習」T28全体にわたってよく読んでおいてください。(半時間)
7教育機関、大学そして研究所:T3、T5、T8、T9、T21
 学問は系統的、技術は個別的ということが出来るが、技術教育は重要である。教育機関について歴史をたどりながら紹介する。19cになって技術教育の重要性が認識されてきて、それに応じた教育機関が設立されていく。また大学と産業の結びつきも密接になっていく。
「復習」先回の講義のまとめ(半時間)
「予習」T3、T5、T8、T9、T21にわたって教育機関の記述が散在するが、特にT21の最終節が重要である。(半時間)
8物理学の変革-原子構造と原子核・現代科学技術の基礎―:T29
 20cになって原子が実体的に解明され、物質科学だけでなく産業分野の変革・拡大をもたらした。原子の世界ではニュートン以来の物理学体系が不十分であることがわかり、そこで成り立つ新理論体系が四半世紀のうちに打ち立てられた。ここに現代に繋がる科学と産業・技術の展開が始まる。今回は原子と原子核、またこの世界で起こる新奇な現象について講義する。
「復習」先回の講義のまとめ(半時間)
「予習」T29を丁寧に読んで下さい。(半時間)
9現代の物理学-物性物理学からハイテクノロジーへ―:T29、T32
 現代物理学における新奇な現象である粒子と波動の両面を持つという2重性について説明し、その技術への応用である半導体素子の展開について述べる。現代の機械装置において、半導体素子を用いていないものはほとんど無いといってよいであろう。
「復習」先回の講義のまとめ(半時間)
「予習」トランジスタとは何だろうか?(半時間)
10生物学の発展と進化論:宗教との緊張関係:T14、T18、T24、T25
 動物の形態の類似性の指摘や生物の細胞の共通性の認識から生物の歴史性を説く進化の概念が18c半ばに台頭し、19cにはダーウィンによって進化論が確立された。今回は進化思想の展開を講義する。なお、20c後半には分子レベルで進化論が基礎づけられる(これは次回)。
「復習」先回の講義のまとめ(半時間)
「予習」T25を参考にダーウィンの進化論と後世への影響について考えなさい。(半時間)
11生命科学の深化と産業化:T30、T31
 医学・生理学の深化は単に医薬面にとどまらず、特定保健用食品など新たな産業分野開拓の基礎となっている。今回は生命の特徴である自己保存(遺伝と進化)と物質代謝(エネルギー代謝)について講義し、生化学の発展が産業化の道を開いてきていることを説明する。
「復習」先回の講義のまとめ(半時間)
「予習」T31に記載されているDNAについて、その構造と機能について調べなさい。(半時間)
12科学は両刃の刃-フロンとオゾン層破壊-:テキスト該当箇所なし
 科学の成果が技術に生かされ産業化されるのであるが、当該現象についてあらゆる点で解明されてからの産業化されるとは限らない。思わぬ落とし穴があるものである。今回はフロンとオゾン層破壊について講義する。これを一例として、科学・技術には人類の幸福を推進する面と害を与える面があることについて学ぶ。
「復習」先回の講義のまとめ(半時間)
「予習」フロントは何か?オゾン層破壊についても調べなさい。(半時間)
13科学技術立国日本-公害とその克服-:教科書該当箇所なし
 戦後の日本経済の発展は歴史的にも世界の目を見張らせるものがあった。しかしまた一方で公害と呼ばれる災禍をもたらしてしまった。先回科学・技術の功罪の一例を述べたが、戦後日本が体験した公害について概観する。公害を克服するのも科学・技術であることを強調しておきたい。
「復習」先回の講義のまとめ(半時間)
「予習」四大公害(病)についてまとめておこう。(半時間)
14エネルギー保障と食糧:教科書該当箇所なし
 エネルギー保障と食糧供給は国民生活の基本課題である。主要なエネルギー源は化石燃料であり、その枯渇が心配される中、地球温暖化防止が喫緊の課題となっており、新エネルギー(更新世エネルギー)開発が求められる。「持続可能な開発」という標語を念頭に置いて講義をしたい。食糧供給の現状についても述べた。
「復習」先回の講義のまとめ(半時間)
「予習」「持続可能な開発」とは?また世界のエネルギー消費について調べなさい。(半時間)
15現代科学と巨大技術・産業:T32、T33
 産業が拡大し巨大化すると保安や秘密主義など新たな問題点をはらむことになる。2011の東日本大震災では東日本は大被害を被ったが、津波による原子力発電所事故が被害の質を変えてしまった。それは端的に「核技術」にまつわる問題といえる。今回は原爆や原発の基本原理について解説するが、放射性物質と放射線について理解することを目的とする。
「復習」先回の講義のまとめ(半時間)
「予習」放射線とは何か?シーベルトは?(半時間)
    
16定期試験
評価方法・基
準(評価割合)
定期試験(参照物件なし)60%、講義中に行う小テストなど40%
 ほぼ毎回、講義の終わり(場合により講義途中)に学習内容について小テスト(まとめなど)を実施する。
テキスト
書名著者出版社価格ISBNコード備考
1.『科学 その歩み』藤村敦 他東京教学社2200円4-8082-0003-1
参考書
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参考資料
参考URL
質疑応答
講師は非常勤講師であり学生諸君との直接の接触は講義時間内に限られるので、質問大歓迎。時間外の質問・連絡はメールで:mayam@phen.mie-u.ac.jp
備考
当然のことながら、講義中の私語厳禁です。講義中の携帯電話等の操作は禁止し、違反者は退出していただきます。
画像
ファイル
更新日付2017/01/21 16:52:13