開講年度2017
科目名日本史特殊研究A-Ⅱ
科目ナンバー
開講種別秋学期
対象学年4年
担当者福島 金治
単位数2
曜日・時限秋学期 木曜日 2時限
キャンパス日進キャンパス
実務経験のある教員による授業科目


テーマ
中世伊勢・三河湾岸地域の港と流通
授業の概要
 物資の運送と流通は、現代でも重要な問題である。この講義では河川や海の交通をあつかう。
 東海地域は木曽三川のそそぐ先に伊勢湾・三河湾というおだやかな内海がある。中世、桑名や伊勢神宮の外港大湊は遠隔地交易の要衝だった。講義では、中世の水運について、(1)湊のかたちや立地と周辺環境、(2)湊に生きるひとびとの生業、(3)湊の寺院や町の様子、(4)伊勢神宮・熊野三山などの御師の活動と流通業者、(5)年貢などの物資運輸に果たした海賊と領主の関係などを通して、東海地域の流通を具体的にみてみたい。
授業の到達
目標
 講義を聞き自ら学習することで、(1)港町の立地環境や波止や護岸の石垣などの設備がなかった時代、砂洲や入江・島影などの自然環境に依存したなどありかたを知る、(2)船頭・水手などの船を動かす人、問・御師などの人や船荷と関わる人など物流の担い手の実態を知る、(3)伊勢の大湊・桑名、尾張の萱津・熱田などの港の例から東海地域の地域内流通と地域流通圏のありかた、について学ぶ。これにより、東海地域の歴史的・社会的特徴を知り、現代社会の地域経済を造ったバックグラウンドを理解する。 
授業計画
回数授業スケジュール授業時間外学修・時間(分)
1  『庭訓往来』からみた領主と職人・商業者
 南北朝時代には作られていた文例集『庭訓往来』の領主館とその付属施設を書き込んだ文例から、領主支配に流通・職人が不可欠であったことを学ぶ。
授業に関連する内容を、自分の関心ある書物で読んでみる。参考文献の一例は下記に示した(50分)。
2 中世の港と立地
 港の立地を、陸奥多賀城の出口の塩竃(入江の奥)、瀬戸内の備後尾道(海に面して横ならび)などをあげ、全国的流通と地域経済圏の港の接続関係を考える。
授業に関連する内容を、自分の関心ある書物で読んでみる。参考文献の一例は下記に示した(50分)。
3 鎌倉時代の鳥羽-志摩国泊浦-
 三重県の鳥羽湊に関する延慶3(1310)年の家屋調査の文書から、鳥羽の港の立地と住人の答志など近隣の地域との交流について検討する。
授業に関連する内容を、自分の関心ある書物で読んでみる。参考文献の一例は下記に示した(50分)。
4 鎌倉時代の川湊-津島・萱津-
 尾張国の代表的川港である津島・萱津について、『東関紀行』などの紀行文や南北朝期の尾張国富田荘絵図から寺や港の場の様子を復原する。
授業に関連する内容を、自分の関心ある書物で読んでみる。参考文献の一例は下記に示した(50分)。
5 室町時代の尾張・三河の航路と港
 『宗長手記』(宗長、1527年)、『富士歴覧記』(飛鳥井雅康、1499年)等の紀行文を通して、室町期の伊勢湾・知多湾の海上交通拠点と領主について学ぶ。
授業に関連する内容を、自分の関心ある書物で読んでみる。参考文献の一例は下記に示した(50分)。
6 中世の材木調達と運輸-京都東山山荘造営材木-
 美濃・飛騨の材木によって造営された足利義政の東山山荘(銀閣寺)について、木曽川などを使っての京都までの材木運輸と大工等への請負形態を学ぶ。
授業に関連する内容を、自分の関心ある書物で読んでみる。参考文献の一例は下記に示した(50分)。
7 京都南禅寺造営材木の調達と運輸
 京都南禅寺造営の材木の運輸について、洪水を利用した材木の川流しと関所での通行料免除の内容から、山からの切り出し・買い付け、筏・車の利用などを学ぶ。
授業に関連する内容を、自分の関心ある書物で読んでみる。参考文献の一例は下記に示した(50分)。
8 中世尾張・三河の市と町
 山田市場(名古屋市北区)などの市場について、市場に関わる領主や御師などの宗教者の活動、下津(稲沢市)・鳴海(名古屋市)などでの町屋形成なおを知る。
授業に関連する内容を、自分の関心ある書物で読んでみる。参考文献の一例は下記に示した(50分)。
9 中世の港町-熱田・大浜-
 大浜(碧南市)は領主和田氏の保護で植林した松並木で町を囲い、小河川の出口に渡や船だまりがある。これらを通して、港の立地環境や設備・施設を学ぶ。
授業に関連する内容を、自分の関心ある書物で読んでみる。参考文献の一例は下記に示した(50分)。
10 室町期尾張国の「地下人」の活動
 村や町が自治組織として育っていった室町期の様相を、尾張国熱田の門前を中心に「地下」の旦那の自治と祭礼等への奉仕などからその実態を検討する。
授業に関連する内容を、自分の関心ある書物で読んでみる。参考文献の一例は下記に示した(50分)。
11 遠隔地交易と伊勢・熊野の御師
 16世紀には「昆布屋」など遠隔地取引を背景とする商家を確認できる。熊野社との関係から新宮(和歌山県新宮市)と碧海荘(岡崎市等)との物や人の動きをみる。
授業に関連する内容を、自分の関心ある書物で読んでみる。参考文献の一例は下記に示した(50分)。
12 中世の太平洋海運と伊勢大湊
 伊勢神宮の外港であった大湊(伊勢市)の船籍の船が、品川湊(東京都)に登録されていた背景から関東と伊勢との結びつきについて学ぶ。
授業に関連する内容を、自分の関心ある書物で読んでみる。参考文献の一例は下記に示した(50分)。
13 内湾・河川で働く船
 伊勢湾内湾で四日市・常滑などと大湊との交易のありかたを述べ、三河湾の篠島の船頭や旅館の営業などを通して湾内の交易のありかたを学ぶ。
授業に関連する内容を、自分の関心ある書物で読んでみる。参考文献の一例は下記に示した(50分)。
14 明応・永正の東海・東南海地震と港の被害
 中世の大規模地震で知られる明応7(1498)年の大地震による静岡・三重・愛知県などでの津波等による被害と復興の遅れた安濃津(津市)の状況を述べる。
授業に関連する内容を、自分の関心ある書物で読んでみる。参考文献の一例は下記に示した(50分)。
15 東海地域太平洋岸の戦国時代の湊-戦国期の復興した海運- 16世紀中期以降の太平洋岸の港について、太平洋などを主たる航路とする外洋船と浜名湖内など狭い地域で活動する船から両者の連結関係を述べる。授業に関連する内容を、自分の関心ある書物で読んでみる。参考文献の一例は下記に示した(50分)。
    
16定期試験授業時間外学習1時間
評価方法・基
準(評価割合)
出席は毎回、確認する。定期テスト80%、出席態度20%。欠席は減点。
テキスト
書名著者出版社価格ISBNコード備考
1.『使用しない。』
参考書
  ・
参考資料
書名著者出版社価格ISBNコード備考
1.『中世の風景を読む』網野善彦・石井進編新人物往来社
2.『津泊宿』中世都市研究会編新人物往来社
3.『港湾都市と対外交易』中世都市研究会編新人物往来社
参考URL
質疑応答
 研究室にいつでもどうぞ。
備考
 授業内容に関わる論文などは、授業のなかで紹介します。
画像
ファイル
更新日付2017/02/13 14:57:26