開講年度2017
科目名仏教の中国的展開Ⅱ
科目ナンバー
開講種別秋学期
対象学年2年
担当者水野 荘平
単位数2
曜日・時限秋学期 火曜日 3時限
キャンパス日進キャンパス
実務経験のある教員による授業科目


テーマ
中国撰述経典の成立とその思想的背景
授業の概要
 中国撰述経典とは、インドや西域諸国で成立した経典を漢訳したのではなく、中国において漢文で撰述された経典をいいます。
 インドで成立した仏教が、全く異質の、そして極めて高度な文明圏である中国で受け入れられるためには、儒教や道教といった中国固有の宗教思想を取り入れたり、分かりやすく整理・体系化するなどして、中国人のニーズに応えることが必要不可欠でした。このような、中国人のニーズに合わせるかたちで中国で編纂された経典が、中国撰述経典です。
 この授業では、こうした中国撰述経典について概説すると共に、先ず、様々な仏教の教えを整理する目的で著された中国撰述経典として『仁王般若経』や『梵網経』『菩薩瓔珞本業経』を、次に、儒教や道教といった中国固有の宗教思想の影響が濃厚な中国撰述経典として『盂蘭盆経』と『父母恩重経』を取り上げて講読し、中国人のニーズに合せた仏教とはいかなるものかを究明します。
授業の到達
目標
 中国撰述経典である『仁王般若経』や『梵網経』『菩薩瓔珞本業経』、或いは『盂蘭盆経』や『父母恩重経』の講読を通して、中国人のニーズに合せた仏教とはいかなるものかを理解し、≪中国人の(或いは中国的な)思想や考え方≫について知ることを第一の目標とします。
 また、そもそもどうして中国撰述経典は中国で撰述された経典だと言い得るのか、その論拠となる「中国的な箇所」の検討を通して、学術的な研究・論証方法を学び、身につけることを目標とします。
授業計画
回数授業スケジュール授業時間外学修・時間(分)
1「ガイダンス」

○中国撰述経典について概説し、中国仏教に関係する文献・データベースを紹介します。
【予習】シラバスを読み本授業の内容を把握しておくこと(30)
【復習】中国撰述経典と中国仏教に関係する文献・データベースについて授業の内容を確認すること(60)
2「『大正蔵』所収の中国撰述経典と、新たに発見された中国撰述経典」

○『大正蔵』に収録され現存している中国撰述経典と、敦煌の莫高窟や七寺一切経のなかから新たに発見された疑偽経典について学びます。
・『仁王般若経』『梵網経』『菩薩瓔珞本業経』
・『父母恩重経』『盂蘭盆経』
・敦煌文献、七寺一切経
【予習】大蔵経および経典目録について春学期「仏教の中国的展開Ⅰ」の内容をもとに把握しておくこと(120)
【復習】現存の中国撰述経典と新出の中国撰述経典について授業の内容を確認すること(120)
3「『仁王般若経』の講読と思想研究(1)」:般若思想の発展

○『仁王般若経』二諦品を中心として、般若の二諦説が中国において三諦説へと変容する過程を学びます。
【予習】『仁王般若経』二諦品の概略を把握すると共に、空・般若思想について確認しておくこと(120)
【復習】二諦説と三諦説との違いについて、授業の内容を確認すること(120)
4「『仁王般若経』の講読と思想研究(2)」:菩薩階位説の展開

○『仁王般若経』菩薩教化品・受持品前半の内容から、中国において四十二位の菩薩階位説が成立する過程を学びます。
【予習】『仁王般若経』菩薩教化品・受持品前半の概略を把握し、また『華厳経』の概要について確認しておくこと(120)
【復習】四十二位の菩薩階位説の成立過程について授業の内容を確認すること(120)
5「『仁王般若経』の講読と思想研究(3)」:護国思想の起源

○『仁王般若経』護国品・受持品後半・嘱累品の内容から、仏教における護国思想について学びます。
【予習】『仁王般若経』護国品・受持品後半・嘱累品の概略を把握しておくこと(120)
【復習】護国思想について授業の内容を確認すること(120)
6「『梵網経』の講読と思想研究(1)」:菩薩階位説の展開

○『梵網経』上巻の内容から、『梵網経』の四十位の菩薩階位説と『仁王般若経』の菩薩階位説との類似性や影響について学びます。
【予習】『梵網経』上巻の概略を把握し、また4回目の授業内容を確認しておくこと(120)
【復習】、『梵網経』と『仁王般若経』の菩薩階位説について類似性や影響について授業の内容を確認すること(120)
7「『梵網経』の講読と思想研究(2)」:大乗戒(菩薩戒)の成立

○『梵網経』下巻の内容から、最も代表的な大乗戒である梵網戒について、儒教との類似性に注目して学びます。
【予習】『梵網経』下巻の概略を把握し、また仏教の戒律について確認しておくこと(120)
【復習】梵網戒とその儒教との類似性について授業の内容を確認すること(120)
8「『菩薩瓔珞本業経』の講読と思想研究(1)」:般若思想の発展

○『菩薩瓔珞本業経』第三賢聖学観品の内容を通して、三諦三観説について学びます。
【予習】『菩薩瓔珞本業経』第三賢聖学観品の概略を把握し、また3回目の授業内容を確認しておくこと(120)
【復習】三諦三観説について授業の内容を確認すること(120)
9「『菩薩瓔珞本業経』の講読と思想研究(2)」:菩薩階位説の完成

○『菩薩瓔珞本業経』全体で説示される四十二賢聖の菩薩階位説を通して、中国において成立した五十二位の菩薩階位説について学びます。
【予習】『菩薩瓔珞本業経』全体の概略を把握し、また6回目の授業内容を確認しておくこと(120)
【復習】五十二位の菩薩階位説について授業の内容を確認すること(120)
10「『仁王般若経』『梵網経』『菩薩瓔珞本業経』の三経の成立年代と時代背景」

○三経の関連性とそれぞれの成立年代や成立時代背景について考察することを通して、中国撰述経典の特徴について学びます。
【予習】『仁王般若経』『梵網経』『菩薩瓔珞本業経』の全体の概略を把握しておくこと(120)
【復習】中国撰述経典の特徴について授業の内容を確認する(120)
11「『父母恩重経』の講読と思想研究(1)」

○経典目録や異本・類本などから『父母恩重経』の概要をとらえ、文献学からの中国撰述経典の取り扱いについて学びます。
【予習】『父母恩重経』の概略を把握しておくこと(120)
【復習】『父母恩重経』の文献としての概要について授業の内容を確認すること(120)
12「『父母恩重経』の講読と思想研究(2)」

○『父母恩重経』にみられる儒教的な箇所を通して、仏教への儒教の影響について学びます。
【予習】儒教の概要を把握しておくこと(120)
【復習】仏教への儒教の影響について授業の内容を確認すること(120)
13「『盂蘭盆経』の講読と思想研究(1)」

○経典目録や異本、関連経典などから『盂蘭盆経』の概要をとらえ、文献学からの中国撰述経典の取り扱いについて学びます。
【予習】『盂蘭盆経』の概略を把握しておくこと(120)
【復習】『盂蘭盆経』の文献としての概要について授業の内容を確認すること(120)
14「『盂蘭盆経』の講読と思想研究(2)」

○『盂蘭盆経』の内容とともに、『盂蘭盆経』に由来し東アジアで広くおこなわれる「盂蘭盆会」、およびこれに関連する「施餓鬼会」をみていくことにより、中国の民間信仰としての仏教について学びます。
【予習】不空訳『救抜焔口餓鬼陀羅尼経』(大正蔵No.1313)の概略を把握しておくこと(120)
【復習】盂蘭盆会および施餓鬼会について授業の内容を確認すること(120)
15授業のまとめ

○授業の全体を振り返ります
【予習】これまでの学習内容を確認しておくこと(120)
【復習】授業内容をもとに、これまでの学習内容の確認すること(120)
【課題】『仁王経』の成立年代について小レポートを作成(150)
    
16定期試験
評価方法・基
準(評価割合)
* 定期試験(60%)と、授業での小テストや小レポート(40%)に授業態度を含めて総合評価します。
テキスト
参考書
  ・
参考資料
参考URL
1.大正新脩大藏經テキストデータベース『大正蔵』のデータベース。授業で取り上げる各経典を収録。
質疑応答
毎回、授業の最後に質疑応答の時間をもうけます。
また、メールでも質問を受け付けます。( sohei@dpc.agu.ac.jp
備考
* この講義の内容は秋学期の「仏教の中国的展開Ⅰ」と連動しているので、「仏教の中国的展開」Ⅰ・Ⅱと継続して受講するようにしてください。
* 講義中の入退室、私語、携帯電話・スマートフォンの操作など講義に関係のない行為は禁止します。
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更新日付2017/02/13 14:57:51