開講年度2017
科目名産業と科学Ⅰ/総合科目Ⅵ-Ⅰ
科目ナンバー
開講種別春学期
対象学年2年
担当者山下 護
単位数2
曜日・時限春学期 水曜日 4時限
キャンパス日進キャンパス
実務経験のある教員による授業科目


テーマ
科学はどのように芽生え発展してきたのであろうか、それが産業・技術とどうかかわってきたのであろうか
授業の概要
学問は人の営みであって、経済、政治など社会環境と深い関係を持ちつつ発展してきた。本講義は教養課程の基礎の一環として位置づけ、産業と科学技術との関係について、歴史をたどりつつ個別の問題を通じて学習する。文系向きの講義であるが、産業・技術に関連して、科学の基礎的内容が多く含まれる。これらの内容を身につけることは、特に科学技術立国を目指す日本では単に社会人としての教養を高めるにとどまらず、就職活動等にも有益であろう。講義範囲は学問の始まりから近代科学の成立まで。
授業の到達
目標
講義スケジュールは後述の通りであるが、講義の性質からして最終目標というものはなく、将来を見据えるための基礎知識修得の出発点として位置付けたい。講義終了時において、講義前に比べて「変わった」との自覚がえられることが目標である。
人々が科学を作り上げてきた努力の道筋を想起できるようになること。
 学問の発展は豊かな産業に支えられてのものであることを歴史的事例の中で理解し、人に話せるようになること(前期のこの講義の範囲では科学から産業・技術への寄与は乏しい)。
授業計画
回数授業スケジュール授業時間外学修・時間(分)
1科学が先か技術が先か:教科書第1章(以下、T1のように書く)
 産業とは人々が生活するうえで必要とされるものを生み出したり、提供したりする経済活動のことであり、その方法や手段が技術である。科学と技術との関係を「ホモ・サピエンス」「ホモ・ファビリス」という概念をヒントに学問の成立以前の歴史をたどりながら考えていく。
「予習」シラバス全体をよく読み講義の全体像を把握すること。教科書を用意できた学生はT1を読んで予習(1時間)
2学問の始まりとその経済的基盤:T2
 まず、学問に先立つギリシアの文明と経済的基盤を概説する(キュクラデス、ミノア、トロイア、ミュケナイの諸文明と8cBC頃からの古代ギリシア文明)。続いてイオニアに起こった自然哲学について学ぶ(一元論から四元論への展開)。
「復習」先回の講義のまとめ(半時間)
「予習」T2、特にタレースからエンペドクレスまでを中心に。(半時間)
3数理的自然観と原子論:T2
 ピュタゴラス学派の数理的自然観、デモクリトスの原子論を詳しく説明する。前回の物質論と共に自然科学の典型的な枠組みが出揃うことになる。原子論についてはルクレティウスを経て近代化学成立への道筋へを紹介する。
「復習」先回の講義のまとめ(半時間)
「予習」T2、ピュタゴラス、デモクリトスの項の予習。(半時間)
4自然哲学の総合:T3
 先ずアテナイの経済活動、学問と技術との関係、自然学から形而上学へと関心の変移などを説明する。その中で、アリストテレスの自然学について述べる。この自然学が中世世界での規範となるものであり、そこからの脱却が近代科学の創造となる。
「復習」先回の講義のまとめ(半時間)
「予習」T3、特にアリストテレスの自然学を中心に。(半時間)
5国策としての科学振興―アレクサンドリアの科学―:T5
 アレクサンダー大王の帝国の一部を引き継いだプトレマイオス王朝において、学問が国策として奨励され、後世にも誇れる成果を上げた。数学、天文学、静力学のどの成果を個別に解説するとともに、アルキメデスにおいては科学と技術との融合の兆しが見られることを述べる。
「復習」先回の講義のまとめ(半時間)
「予習」国策としての科学振興政策という点に留意して教科書の該当箇所を予習して下さい。(半時間)
6古代ローマの科学技術:T6
 古代ローマの技術と学問について概観する。技術は軍事に関係する土木技術、民生用としては水道、劇場などに目を見張るものがあるが、学問はアレクサンドリアを拠点とするギリシア科学の延長であった。その中で、キリスト教の成立と国教化がなされ、後世の科学の発展や経済活動においても良悪両面の影響を与えることになる。
「復習」先回の講義のまとめ(半時間)
「予習」T6、古代ローマの技術に注目して教科書を予習してください。(半時間)
7学問の継承―イスラム帝国での科学と技術―:T7
 ギリシアの学問は古代ローマから直接中世ヨーロッパに伝えられたのでなかった。中世前期、中世盛期前半の経済、学問の中心はイスラム帝国であった。そこでギリシアの学問が受け継がれ発展し、12c以降のヨーロッパに伝えられた。バクダッド、コルドバを政治・文化の中心として展開されたイスラム帝国での学問について講義する。
「復習」先回の講義のまとめ(半時間)
「予習」T7、古代ギリシアの学問はどのように継承されたのであろうか。(半時間)
8中世ヨーロッパの学問と産業・技術:T8, T9
 12cになって、トレドやパレルモを中心にギリシア文献の多くがラテン語に翻訳され、13cには特にアリストテレス論理学が学ばれ、スコラ学の展開、また実験科学の重要性が指摘されるようになった。一方では11c頃からの農業振興により人口が増え、諸技術の改良・発明が続いた。今回は中世盛期(11c-13c)の学問と技術について学ぶ。
「復習」先回の講義のまとめ(半時間)
「予習」T8, T9、特に中世の技術の発展を中心に予習のこと。(半時間)
9中世の産業革命とルネサンス期の4大発明:テキストなし
 前回に引き続いて中世における多分野での産業技術の発展について述べる(「中世の産業革命」と呼ばれる)。また東方伝来の諸技術(4大発明)を紹介する。
「復習」先回の講義のまとめ(半時間)
「予習」ルネサンス期の3大発明(または4大発明)について調べなさい。(半時間)
10医学生理学の発展:T4, T7, T10, T14
 ヒポクラテスにはじまり、ガレノス、イブン・スィーナー、ヴェサリウスと引き継がれた医学生理学はデカルト、ラ・メトリーにより西洋医学の基礎を得る。現代では人体を自動制御系としてみる機械論が基本になっている。この発展について概観する。現代医学の諸知識は、医薬、健康食品などへ産業展開されている。
「復習」先回の講義のまとめ(半時間)
「予習」T4, T7, T10, T14のうち、医学生理学についての記述部分を順に予習しなさい。(半時間)
11鉱業の発展-産業と科学の接点(15, 16cの化学と工業)-:T12
 15c、16cは鉱業と製薬分野の技術的発展が化学研究に新局面をもたらした。直接体験に基づく技術内容をもつ多くの技術書が母語で書かれ、産業の新技術に留まることなく、化学的知識と技法の発展に資した。技術から科学への知識の移行が始まったといえる。
「復習」先回の講義のまとめ(半時間)
「予習」T12のビリングッチョ、アグリコラ、パラケルススを中心に予習しなさい。(半時間)
12科学革命1-地動説とその背景-:T11
 コペルニクスによる宇宙の太陽中心説は中世から近世への転回への結節点と考えられるが、その背景として、天文学の革新、地理上の発見、暦法上の問題などがあった。これらをコペルニクス説とあわせて講義する。
「復習」先回の講義のまとめ(半時間)
「予習」T11コペルニクスの太陽中心説とは何か、「コペルニクス的転回」とは何か。(半時間)
13科学革命2-天体の運動-:T11
 コペルニクスの説を支持するケプラーであるが、天体の運動を正しく記述することが出来たのはひとえにティコ・ブラエによる精緻で長期にわたる観測結果があったからである。今回はティコの業績とケプラーの法則を解説する。
「復習」先回の講義のまとめ(半時間)
「予習」T11ティコ・ブラエとケプラーの業績は何だろうか(半時間)
14科学革命3-地上での物体の運動と技術への転用-:T13
 ガリレイの業績について述べ、その意義を強調したい。ガリレイは技術の中に科学発展の芽を求めた最初の学者群の1人であった。またフランシス・ベーコンの主張と、その近代性について説明する。タイトルの科学革命についてもまとめて説明する。
「復習」先回の講義のまとめ(半時間)
「予習」T13ガリレイの業績は?べ-コン主義とは?(半時間)
15科学革命4-力学の完成-:T16, T17
 ニュートンによって力学が完成された(1687年「プリンキピア」刊行)。その業績を詳しく解説する。また人となり、後世への影響などについても述べたい。特に18cフランスでの啓蒙主義への影響は顕著である。
「復習」先回の講義のまとめ(半時間)
「予習」T16, 17ニュートンの業績は何だろうか(半時間)
    
16定期試験
評価方法・基
準(評価割合)
定期試験(参照物件なし)60%、講義中に行う小テストなど40%
 ほぼ毎回、講義の終わり(場合により講義途中)に学習内容について小テスト(まとめなど)を実施する。
テキスト
書名著者出版社価格ISBNコード備考
1.『科学 その歩み』藤村敦 他東京教学社2200円4-8082-0003-1後期開講の「産業と科学II」でもこの教科書を使用する
参考書
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参考資料
参考URL
質疑応答
講師は非常勤講師であり学生諸君との直接の接触は講義時間内に限られるので、質問大歓迎。時間外の質問・連絡はメールで:mayam@phen.mie-u.ac.jp
備考
当然のことながら、講義中の私語厳禁です。講義中の携帯電話等の操作は禁止し、違反者は退出していただきます。
画像
ファイル
更新日付2017/01/21 16:28:35