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科目のねらい | | 中国撰述経典とは、インドや西域諸国で成立した経典を漢訳したのではなく、文字通り中国において漢文で撰述された経典をいいます。中国で撰述された偽りの経典という意味で「偽経」とも、本当の漢訳経典(真経)か疑わしい経典という意味で「疑経」ともいいます。 インドで成立した仏教が、全く異質の、そして極めて高度な文明圏である中国で受け入れられるためには、儒教や道教といった中国固有の宗教思想を取り入れたり、分かりやすく整理・体系化するなどして、中国人のニーズに応えることが必要不可欠でした。このような、中国人のニーズに合わせるかたちで中国で編纂された経典が、中国撰述経典です。 この授業では、こうした中国撰述経典について概説すると共に、先ず、様々な仏教の教えを整理する目的で著された中国撰述経典として『仁王般若経』や『梵網経』『菩薩瓔珞本業経』を、次に、儒教や道教といった中国固有の宗教思想の影響が濃厚な中国撰述経典として『盂蘭盆経』と『父母恩重経』を取り上げて講読し、中国人のニーズに合せた仏教とはいかなるものかを究明します。 |
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到達目標 | | 中国撰述経典である『仁王般若経』や『梵網経』『菩薩瓔珞本業経』、或いは『盂蘭盆経』や『父母恩重経』の講読を通して、中国人のニーズに合せた仏教とはいかなるものかを理解し、≪中国人の(或いは中国的な)思想や考え方≫について知ることを第一の目標とします。 また、そもそもどうして中国撰述経典は中国で撰述された経典だと言い得るのか、その論拠となる「中国的な箇所」の検討を通して、学術的な研究・論証方法を学び、身につけることを目標とします。 |
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授業の内容・ 計画 | | 1.中国撰述経典についての概説と中国仏教に関係する文献・データベースの紹介 2.『大正蔵』所収の中国撰述経典と、新たに発見された中国撰述経典(敦煌出土、及び七寺一切経の疑偽経典) 3.『仁王般若経』の講読と思想研究(1)…般若思想の発展(二諦説から三諦説へ) 4.『仁王般若経』の講読と思想研究(2)…菩薩階位説の展開 5.『仁王般若経』の講読と思想研究(3)…護国思想の起源 6.『梵網経』の講読と思想研究(1)…大乗戒の成立(梵網戒と儒教) 7.『梵網経』の講読と思想研究(2)…菩薩階位説の展開(四十位) 8.『菩薩瓔珞本業経』の講読と思想研究(1)…般若思想の発展(三諦説の完成) 9.『菩薩瓔珞本業経』の講読と思想研究(2)…菩薩階位説の完成(五十二位の菩薩階位説) 10.『菩薩瓔珞本業経』の講読と思想研究(3)…『仁王般若経』『梵網経』との関連 11.『仁王般若経』『梵網経』『菩薩瓔珞本業経』の三経の成立年代と時代背景 12.『父母恩重経』の講読と思想研究(1)…仏教と儒教・道教 13.『父母恩重経』の講読と思想研究(2)…仏教と儒教・道教 14.『盂蘭盆経』の講読と思想研究…中国の民間信仰としての仏教 15.秋学期のまとめ
講義や漢訳経典の講読と併せて、中国撰述経典に依拠した中国の民間信仰に関する画像・映像資料も見ていきます。 |
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評価方法 (基準等) | | * 定期試験(60%)と、授業での小テストや小レポート(40%)に授業態度を含めて総合評価します。 |
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授業外の学修 (予習・復習) | | 講義のなかで、多くの旧漢字や仏教用語を使用しますが、講義の進行上、それら一々について細かく立ち入って解説することは困難です。 復習として、講義の内容の確認はもちろんのこと、講義のなかに出てきた旧漢字や仏教用語について必ず調べ、覚えるようにしてください。 また、予習として、講読する経典の該当する箇所を確認して、そのなかに使われている仏教用語について調べておいてください。 |
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教科書・ 参考書 | | ≪教科書≫ * 授業のなかで、適宜プリントを配布します。 ≪参考書≫ * 『仏教の東伝と受容』(新アジア仏教史6巻) 佼成出版社、2010年 【180.2/0625/6】 * 船山徹『仏典はどう漢訳されたのか――スートラが経典になるとき』 岩波書店、2013年 【183/0311】 * 大野榮人・武藤明範「中国仏教と『盂蘭盆経』」(立川武蔵編『アジアの仏教と神々』、2012年、法蔵館)【180.2/0674】 |
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参照URL | | |
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質疑応答 | | |
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備考 | | * この講義の内容は秋学期の「仏教の中国的展開Ⅰ」と連動しているので、「仏教の中国的展開」Ⅰ・Ⅱと継続して受講するようにしてください。 * 講義中の入退室、私語、携帯電話の操作など講義に関係のない行為は禁止します。 |
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更新日付 | | 2016/02/15 10:48:28 |