開講年度2015
科目名刑事訴訟法A
(全)開講学科法律学科 2013年度以降入学
法律学科 2007-2012年度入学
開講種別春学期
対象学年3年
担当者石田 倫識
単位数2
曜日・時限春学期 火曜日 2時限
キャンパス


サブタイトル
捜査法
科目のねらい
(1)刑事訴訟法学の体系的知識の修得、及び、②それを踏まえたうえでの法的判断能力の養成をねらいとする。
到達目標
以下の3点を目標とします。

(1)刑事訴訟法の基本原則(無罪推定法理等)を正確に理解すること。

(2)犯罪捜査法の領域における判例法(の射程)を正確に理解できること。

(3)犯罪捜査法の領域において、学説・判例を踏まえたうえで、緻密な法解釈を行えるようになること。
授業の内容・
計画
【講義の内容】 
 この授業のテーマである「刑事司法」のことを、英米では、Criminal Justiceと表現することがあります。刑事司法とは、文字通り、Justice=「正義」を実現する場と考えられているのかもしれません。 「刑事裁判の目的は正義の実現にある」、このこと自体は皆さんも納得されるでしょう。しかし、何をもってJustice(正義)と考えるのかは、実は必ずしも容易ではありません。
 例えば、警察の拷問によって自白が獲得されたとします。そして、その自白に基づいて捜査をした結果、その自白の内容どおりに、被害者の血液と被告人の指紋の付着した凶器が発見されたとしましょう。つまり、拷問の結果とはいえ、被告人は客観的真実を述べていたわけです。さて、このような場合に、この自白を証拠として被告人を有罪とすることが許されるでしょうか? 被告人が犯人であることは「真実」である以上、被告人を有罪とすることがJustice(正義)なのでしょうか。しかし、それでは、真実でありさえすれば、警察による違法行為が結果として正当化されることになってしまいます。これは「正義」の名に値しないでしょう。では逆に、違法行為に由来する証拠によって被告人を有罪とすることはできないとすることが「正義」なのでしょうか。明らかな犯人を逃がすことが果たして「正義」なのでしょうか?
 このように、何をもって刑事裁判における「正義の実現」とするのかは、実は簡単ではありません。そして、(上の話に限らず)刑事訴訟法上の問題の多くは、「真実の発見」と「適正手続の保障」という二つの目的の間で、常にジレンマを抱えています。この授業では、主要判例を題材とし、このような刑事訴訟法上の諸問題について検討していく予定です。

取り上げるテーマのなかで、とくに重要なものをいくつか以下に挙げておきます。
(1)職務質問・所持品検査と違法収集証拠排除法則
(2)任意捜査と強制捜査(強制処分法定主義と令状主義)
(3)任意処分に関する判例法
(4)被疑者取調べと自白法則
(5)強制処分①逮捕・勾留
(6)強制処分②捜索、差押え、検証等
(7)公訴提起をめぐる諸問題
(8)審判の対象論
(9)証拠法総論(自由心証主義、挙証責任原則等)
(10)伝聞法則
(11)日本型刑事司法の功罪(精密司法論、誤判冤罪と再審制度)

【講義のスケジュール】
刑事訴訟法A(捜査法)では、主として起訴前の手続(捜査)の問題(上記(1)~(6))を取り扱います。秋学期開講予定の刑事訴訟法B(証拠法)では、起訴後の手続(公判)の問題((7)~(10))を中心に取り扱います。もっとも、常に両者(捜査法と証拠法)の密接な関連性を意識することが重要ですから、刑事訴訟法A・Bのいずれにおいても、重複を厭わず、両者の問題を取り上げていきます。

【講義の形態】
基本的には、講義形式で進行しますが、いくつかのテーマについては、演習問題を解いてもらい、受講生に発表・討論してもらう機会を設ける予定です。
評価方法
(基準等)
成績評価は定期試験(100%)で行います。
授業外の学修
(予習・復習)
【予習】
毎回の講義に際して、次回の予習範囲を指定しますので、教科書の該当頁をしっかりと読んでください。また余力のある受講生は、教科書で引用されている判例を調べましょう。なお、引用判例はほぼ全て図書館のデータベース(LEX/DBインターネット)で容易に検索できます。

【復習】
授業で配布した資料や各自のノートを見直したうえで、改めて教科書の該当頁を読んでください。また、【参考文献】に掲げた判例解説集を読んでみてください。
教科書・
参考書
【教科書】上口裕『刑事訴訟法(第4版)』(成文堂、2015年)
本書を熟読玩味すれば、知識面では新司法試験にも十分対応できるレベルまで到達できるはずです。とりわけ、将来、法曹への道を検討している学生は、(下の参考文献とともに)本書を繰り返し、じっくり読み込むことをお勧めします。

【参考文献】
葛野尋之=中川孝博=渕野貴生(編)『学習判例刑事訴訟法(第2版)』(法律文化社、近刊予定)

なお、本学『法学ガイドブック』の「刑事訴訟法」の箇所は、受講前に必ず一読しておいてください。その他の関連文献は、講義の中で、適宜、紹介します。
参照URL
質疑応答
授業の終了後及びオフィス・アワー(月・2限)に、研究室(6510室)にて、質問等を受け付けます。なお、研究室に在室しているときであれば、上記時間帯にかかわらず、随時、質問等を受け付けます。
備考
(1)教科書及び六法を持参していることを前提に授業を進めますので、講義を履修する場合には、必ず教科書を購入してください。

(2)外国書演習Ⅰ・Ⅱ(火曜・3限目、担当・石田倫識)では、イギリスの刑事裁判について、勉強します。外国法の知見を踏まえることで、日本法の特徴や長短をより鮮明に理解することができると思いますので、意欲・関心のある方は、ぜひこちらも履修してください。
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更新日付2015/02/12 12:12:27