『ささやき竹』(御伽草子) 左衛門の尉夫婦が十四歳の姫の良縁を願い、六十七歳の西光坊が毘沙門の法を行なって祈祷する。ところが西光坊は姫の美貌に愛欲の心を起こし、左衛門の尉夫婦をだまして、姫を長櫃に入れて鞍馬へ連れ去る。途中、関白が姫を救い出し、櫃の中へ牛を入れておくので、西光坊は、「姫が牛に化した」と驚く。西光坊は天罰で雷電に身体を裂かれ、姫は関白の妻になる。
『志賀寺上人の恋』(三島由紀夫) 女犯の罪を犯すことなく高齢に達した志賀寺上人が、美貌の京極御息所を見て恋に落ちる。上人は御息所の御所の庭に、杖にすがって一日一夜立ち尽くす。御息所が上人を御簾の前へ招くと、上人は御息所の手を押しいただき、しばらくの後に、手をほどいて立ち去る。数日後、上人が草庵で入寂した、との噂を御息所は聞く〔*『俊頼髄脳』では、志賀寺上人は九十歳であったとする。『浄瑠璃十二段草子』(御伽草子)では八十三歳とし、御息所は懐妊して、顔が六つ手が十二本ある子供を産んだ、と記す〕。
『大和物語』第105段 近江の介中興の娘が病み、浄蔵大徳が加持祈祷をするうちに、二人は情を通じてしまった。この娘は、親が大切に育て、皇子や上達部の求愛も退けて、帝に奉るつもりだったが、このことがあったため、親も世話をしなくなった〔*『今昔物語集』巻30−3に類話〕。
*僧が鬼と化して、后と交わる→〔鬼〕3b。
『小袖曽我薊色縫(こそでそがあざみのいろぬい)』(河竹黙阿弥) 極楽寺の僧清心は、大磯の遊女十六夜(いざよい)と情を通じ、十六夜は清心の子を宿す。女犯の罪が発覚して清心は寺を追われ、十六夜とともに稲瀬川に身投げをする。しかし死にきれず、二人はいったん別れ別れになり、後にまた再会する→〔心中〕1。
『撰集抄』巻9−8 江口の里で時雨にあった西行が、晴れ間を待つ間の宿りを請い、主の遊女に拒まれる。西行が「世の中をいとふまでこそ難からめ仮りの宿りを惜しむ君かな」と詠むと、遊女は「家を出づる人とし見れば仮りの宿に心とむなと思ふばかりぞ」と返し、中へ入れる〔*『新古今集』巻10に贈答歌あり〕。
『たけくらべ』(樋口一葉) 十五歳の藤本信如は龍華寺の跡取息子、十四歳の美登利は遊女大巻の妹で、ともにやがては僧となり遊女となる身の上である。二人は同じ育英舎に通うが、互いを意識するようになってからは、めったに口もきかない。ある霜の朝、美登利の家の格子門に水仙の造花が差し入れてあり、その翌日、信如は僧林へ旅立った。
*僧が、遊女の長者(=娼家の女主人)を訪れる→〔遊女〕4の『撰集抄』巻6−10。
『今昔物語集』巻14−1 比叡山の無空律師は、葬儀の費用に銭一万を僧坊の天井に隠して置いた。臨終時にそのことを弟子達に告げることができず、彼は死後、蛇となって銭にまといついた。
『夜窓鬼談』(石川鴻斎)上巻「蛇妖」 某住職の弟子が、金貨二十枚余りを寺庭の石の下に隠し、常にその金貨のことを気にかけていた。ある時、昼寝をする弟子の魂が、蛇の形となって身体から抜け出、石の上にとぐろを巻く。住職が碁笥の蓋を投げつけると、蛇は逃げる。その時、弟子は「美しい山に遊び、大きな石の上に座っていたところ、車輪ほどの板を投げつけられる」との夢を見ていた。
東尋坊の伝説 越前国・平泉寺(へいせんじ)の東尋坊は強欲で乱暴な悪僧だったため、皆、困り果てていた。一一八二年四月五日、寺侍・真柄覚念が東尋坊を三国海岸見物に誘い出し、酔いつぶして、絶壁から海へ突き落とした。以来、毎年四月五日前後に海が荒れるので、絶壁の上で供養が行なわれ、海は静まった。この出来事が語り継がれる内に、いつの頃からか、この地を「東尋坊」と呼ぶようになった(福井県三国町)。
*旅の僧と宿の女→〔言霊〕3の『道成寺縁起』・〔宿〕7bの『高野聖』(泉鏡花)。
*小僧と山姥→〔守り札〕1の『三枚のお札』(昔話)。
『ダンボ』(シャープスティーン) コウノトリが、サーカス団のお母さん象の所へ、赤ちゃん象ダンボを運んで来る。ダンボは耳が異様に大きかったので、サーカスを見に来た子供たちにからかわれる。鼠がダンボに同情し、大きな耳を翼にして空を飛ぶことを提案する。「君の悩みの大きな耳は、本当は隠れた才能だったんだ」。ダンボはサーカス小屋の中を自由自在に飛びまわり、観客は大喜びする。ダンボはたちまち人気者となり、ハリウッドと契約するまでになった。
『オツベルと象』(宮沢賢治) オツベルは六台の稲扱(いねこき)器械を持ち、十六人の百姓を雇っていた。ある日、森から一頭の白象が出て来て、稲こきを面白そうに見る。オツベルは言葉巧みに、水汲みや薪運びの仕事を白象に勧める。白象は喜んで働き始めるが、オツベルは次第に過重な労働を課すようになる。白象はたまりかねて、森の仲間たちに救いを求める。たくさんの象が押し寄せ、オツベルを踏みつぶして白象を助け出す。
『今昔物語集』巻5−27 天竺の深山を通る比丘を、子象が鼻に引っかけて捕らえ、親象の所へ運んで行く。親象は、太い杭を足に踏み抜いていた。比丘は杭を抜いてやり、親象はたいへん喜ぶ。子象は再び比丘を鼻に引っかけて、遠方の墓まで連れて行く。そこには多くの財宝があった。比丘は、象を助けた返礼の財宝を得て、家に帰った。
『ブラフマヴァイヴァルタ・プラーナ』 ガネーシャは、父シヴァ神の怒りにふれて首を切り落とされた。母パールヴァティーが嘆き悲しんだので、シヴァ神は息子を生き返らせることを約束し、最初にそこを通りかかった象の頭を代わりにつけた〔*ガネーシャは、智慧を授け富をもたらす幸運の神として、信仰されている〕。
『エレファント・マン』(リンチ) 青年ジョン・メリックは醜怪な姿ゆえに「象人間」と呼ばれ(*→〔妊娠〕7b)、見世物小屋に出ていた。外科医トリーブスが病院の一室をジョンに与え、世話をする。ジョンは高い知能を持ち、読み書きもできた。ジョンに好意を持つ人々が彼の部屋を訪れ、ジョンはいくらか人間らしい生活ができるようになる。ある日、ジョンは観劇に招待され、至福の一時を過ごした。彼はその夜はじめて、普通の人間のように仰向けで就寝する〔*仰向けはジョンの身体にとって致命的な姿勢であり、彼はそのまま死んでいった〕。
『沙石集』巻10本−10 「大象が窓から出ようとする。体は出たが、尾が引っかかって出られない」という夢を、国王が見た。夢の意味を仏に問うと、仏は「捨て難い世を捨てようとして、名利のために捨て切れないのだ」と、夢合わせをした。
*→〔尾〕5の「牛の体は窓外を過ぎ、尾だけ残る」(『無門関』38「牛過窓櫺」)と、関連があるだろう。また、→〔針〕6の「ろばが針の穴を通る」(『マタイによる福音書』第19章)とも類似する発想である。
『象』(谷崎潤一郎) 享保某年六月十五日。広南国から幕府へ献上された象が、花車(だし)を牽(ひ)いて江戸の町を歩く。千代田城周辺の道端に、武家や町人が大勢居並んで見物する。象は半蔵門を入ろうとして、巨体が門を塞ぎ、前へも後へも動けなくなる。老年の武士と町家の隠居が、「小さな門へ大きな獣を入れようとするのは、若い者の無鉄砲じゃ」「さようでございますな」と話し合う。
『過去現在因果経』巻1 兜率天の善慧菩薩(=釈迦の前生)は、「人間界に生まれるべき時が来た」と考え、六本の牙のある白象にまたがって、下界へと出発した。四月八日、明けの明星の出る頃、浄飯王の后・摩耶夫人(まやぶにん)は、夢うつつの状態で、「六牙の白象に乗った人が空を飛んで来て、右脇から胎内に入る」と見て懐妊した〔*『ジャータカ』「因縁物語」に類話〕→〔誕生〕5a。
『今昔物語集』巻5−32 「老ヲ捨ツト云フ国(棄老国)」に、隣国から三つの難題が突きつけられた。そのうちの一つは、「象の重さを計れ」というものだった。隠れ住む老母(*→〔親捨て〕4a)が、「象を船に乗せ、喫水線の所に墨で印を着ける。象を下ろし、代わりに石をたくさん入れて、喫水線を墨印に合わせる。船に入れた石の総重量が、象の重さだ」と教え、難題を解決した。
『象を射つ』(オーウェル) 英国人である「わたし」は、ビルマのある町で警官をしていた。さかりのついた象が暴れ出し、インド人の苦力(クーリー)を一人、踏み殺した。「わたし」がライフル銃を持って現場へ行くと、二千人もの群衆がついて来た。「わたし」は、もうあとへは引けぬと思い、象の巨体に何発も銃弾を撃ち込んだ。「たかが苦力ひとりより、象の方がもっと値打ちがある。象を射殺するなんて不見識だ」という意見もあった。
*人間が象に転生する→〔転生〕8aの『屍鬼二十五鬼』(ジャンバラダッタ本)第21話。
*象と同名の人→〔同名の人〕2の『マハーバーラタ』第7巻「ドローナの巻」。
*関連項目→〔人形〕
『変身物語』(オヴィディウス)巻10 ピュグマリオンは、自ら象牙を刻んで造った乙女の像に恋心を抱く。女神ヴェヌス(=アフロディーテ)が彼の思いを知り、象牙の乙女に命を与える。ピュグマリオンの口づけに乙女は目を開く。
『ペンタメローネ』(バジーレ)第5日第3話 ベッタは、砂糖・アーモンド・香水・宝石・金の糸などで若者の像を造る。愛の神に祈ると像に生命が宿り、ベッタは像を夫としてピント・スマルトと名づける。女王が彼に横恋慕して連れ去るが、ベッタは夫を取り戻し、まもなく男児を産む。
『風流仏』(幸田露伴) 仏師珠運は木曽の宿で美女お辰と出会い、結婚しようとする。しかしお辰は岩沼子爵の生き別れた娘であることがわかり、二人の仲は引き裂かれたので、珠運はお辰を偲んで彼女に生き写しの観音像を彫る。やがてお辰と某侯爵婚約の報が届き、怒った珠運は鉈で観音像を打ち割ろうとする。その時、像はお辰と化して珠運を優しく抱き、二人は一緒に天へ昇って行った。
『ギリシア神話』(アポロドロス)摘要第3章 ラオダメイアは、戦死した夫プロテシラオスに似た像を作り、これと交わった。ヘルメス神が冥府からプロテシラオスをいったん連れ戻したので、ラオダメイアは喜んだが、再び夫は冥府へ帰され、ラオダメイアは自害した。
『聊斎志異』巻5−190「土偶」 王氏の夫は早死にした。王氏は塑像造りに頼んで、夫に似た土偶を作り、食事を供える。ある夜、土偶が動き出し、みるみる人間並みに大きくなって、夫の姿になった。夫は王氏と交わり、一ヵ月余り立って王氏の妊娠がわかると、別れを告げて去って行った。王氏は男児を産んだが、日向(ひなた)で抱いても影が淡く、霧のようだった。
★1d.美女の像に心をうばわれ、そのモデルの王女を妻とする。
『忠臣ヨハネス』(グリム)KHM6 老王が、「城内の一つの部屋だけは息子に見せるな」と忠臣ヨハネスに遺言して死ぬ。しかし息子の王は、禁ぜられた部屋に入り、美しい王女の立像を見て心をうばわれる。王は忠臣ヨハネスを連れて、立像のモデルである王女の住む、黄金の屋根の国へ船出する→〔無言〕1c。
『黄金伝説』3「聖ニコラウス」 ユダヤ人が、聖ニコラウス(=サンタ・クロース)の像を造り、財産を守ってくれるよう願う。にもかかわらず泥棒が入ったので、ユダヤ人は怒って像を笞打つ。すると、盗品を分ける泥棒たちの所へ、傷だらけの聖ニコラウスが現れて、「盗んだものを返せ」と命じた。
『二十四孝』(御伽草子) 丁蘭は十五歳で死別した亡母の木像を造り、生きた人に仕えるごとくしていた。丁蘭の妻が火で木像の面を焦がすと、瘡のように腫れ、膿血が流れた〔*二日後、妻の髪が落ち、妻は三年間、木像に詫びた。『蒙求』415「丁蘭刻木」などが原拠〕。
『怪人二十面相』(江戸川乱歩)「荘二君のゆくえ」〜「おとしあな」 実業家・羽柴壮太郎が所蔵する、鎌倉時代作の国宝級の観世音像をいただきたい、と怪人二十面相が要求する。明智小五郎の助手で、十二〜三歳になる小林芳雄少年が、観世音像と同じくらいの背格好であるので、全身を黒く塗って観世音像になりすます。小林少年は二十面相にピストルをつきつけて捕らえようとするが、地下室に落とされる。
『冬物語』(シェイクスピア) リオンティーズ王が、妃ハーマイオニの貞節を疑い、彼女を投獄する。やがて妃の死の知らせがとどき、王は、妃への仕打ちを悔いる。二十年後、妃そっくりに彫刻された立像を、王は見せられる。王は驚き、立像に接吻しようとするが、その立像は、本物の妃ハーマイオニその人であった。
『ジャータカ』第61話 百二十歳の老母が、息子を殺そうとたくらむ。息子は、等身大の木像に覆いをして床に置く。老母は斧で首を一撃して木像であると知り、倒れて死ぬ。
『菅原伝授手習鑑』2段目「道明寺」 筑紫へ配流される途中の菅原道真が、河内国の伯母のもとを暇乞いに訪れる。道真を暗殺すべく贋役人が迎えに来て、道真は輿(こし)に乗るが、後に見ればそれは木像だった。道真が自らの姿を形見として遺すために刻んだ木像が、身代わりになって輿に乗ったのであった。
『六つのナポレオン』(ドイル) ボルジア家の黒真珠を盗んだ男が警官に追われ、自分が勤めていた石膏像の製造工場へ逃げこむ。六つのナポレオン像のうちの一つが生乾きで柔らかかったので、男は像の中へ真珠を押し入れる。後に男は、ナポレオン像の売られた先を調べ、像を壊して真珠を取り戻そうとする。
『幸福な王子』(ワイルド) 町の広場に立つ王子の像は全身金箔でおおわれ、目にサファイア、刀の柄にルビーが、耀いていた。王子は、宝石を抜き取り金箔をはがして、貧しい人々のもとに運ぶよう、つばめに依頼する。冬が来て、つばめは寒さのため死に、王子の鉛製の心臓は割れる。
『大唐西域記』巻11「僧伽羅国」 僧伽羅国の精舎には先王の背丈と等しい金の仏像があり、頭部の肉髻(にくけい)に宝石が飾られていた。盗賊が侵入して宝石を取ろうとしたところ、仏像の背丈がしだいに高くなって、取ることができなかった。盗賊は落胆し、「仏が宝石を惜しむとは」と言うと、仏像は首をうつむけて、盗賊に宝石を与えた。
『美神』(三島由紀夫) ドイツ人R博士は、古代ローマのアフロディテ像を発掘した時、自分と像だけの秘密を作りたいと考え、像の実際の背丈二・一四メートルよりも三センチ多い数を、世界の学界に公表する。十年後、臨終の床にあるR博士からこの秘密を聞いたN医師が、像の背丈を測ると二・一七メートルあった。R博士は、「裏切りおったな」と言って死んだ〔*→〔箱〕7の『日本霊異記』中−6と類想〕。
『ドン・ジュアン』(モリエール) ドン・ジュアンは、かつて決闘をして一人の騎士を殺した。その騎士の石像が建てられたので、ドン・ジュアンは石像を見に行き、「拙宅へ晩餐においでなさい」と冗談を言う。すると石像がうなずく。翌晩、石像は本当にドン・ジュアンの所へやって来る→〔土〕5。
『聊斎志異』巻2−47「陸判」 朱爾旦は、十王殿に立つ緑顔赤鬚の判官の木像を、酒に招待する。翌晩、判官像が本当に朱の家を訪れる→〔首〕2・〔魂〕4。
*死者を食事に招待する→〔首くくり〕5の『ドイツ伝説集』(グリム)336「絞首台から来た客」。
『ヴィーナスの殺人』(メリメ) アルフォンスは自らの結婚式当日、テニスの試合に興じ、ラケットを持つ手に邪魔な指輪をはずして、銅製のヴィーナス像の指にはめる。試合後に指輪を取ろうとすると、像が指を曲げ、指輪が取れなくなっているのでアルフォンスは困惑する。その夜、アルフォンスと花嫁の新床にヴィーナス像が現れ、強い力でアルフォンスを抱き締めて殺す。
『捜神記』巻5−3(通巻94話) 三人の男が蒋子文を祭る廟へ遊びに行き、いくつかの婦人の神像をそれぞれ指さして、「おれの嫁はあれだ」と冗談を言い合う。三人の夢枕に蒋侯が立って「良い縁組である」と礼を言い、「某日を期して三人を迎え取る」と告げる。三人は恐れ、取り消しを請うが、まもなく皆死ぬ。
*大人が子供と結婚の約束をする→〔言霊〕6の『サザエさん』(長谷川町子)。
『夢十夜』(夏目漱石)第6夜 明治の代なのに、鎌倉時代の運慶が仁王像を彫っている。無造作に鑿をふるって見事な像ができてゆくので、「自分」は感心する。見物の若い男が、「あれは、木の中に埋まっている仁王を鑿と槌で掘り出しているのだ」と言う。「自分」も木を彫ってみたが、明治の木には仁王は埋まっていなかった。
『大魔神』(安田公義) 戦国時代。丹波の山奥に、背丈十メートルほどの埴輪型の武神像があった。その地では、家老が謀反を起こし城主を殺して、悪政をほしいままにしていた。城主の娘・小笹の願いにより、武神像に地下の魔神が乗り移り、武神像は鬼のごとき形相となって動き出す。武神像は城を破壊し、家老一派を皆殺しにして、暴れ回る。武神像はさらに村里へ向かおうとするので、小笹は「お鎮まり下さい」と訴える。武神像は穏やかな顔に戻り、崩れ落ちて土と化した。
*映画『大魔神』の発想源は、→〔人造人間〕5のゴーレムの物語だといわれる。
『三国史記』巻4「新羅本紀」第4・第22代智證麻立干13年 于山国は別名を鬱陵島といい、海上はるかな島であることを頼みにして、新羅に服属しなかった。そこで新羅の軍師が、多くの木製の獅子像を各戦船に載せ、海岸に押し寄せて、「服従しないと、この猛獣を島に放つぞ」と脅した。これを聞いた于山国の人々は、恐れて降伏した。
『十訓抄』第7−26 秦の恵王が石牛を作り、尻の下に金(きん)を置いて、蜀の国境近くに運ばせた。蜀の人は「金の糞をする牛だ」と思い、国境の山を掘り崩し、平らな道にして、石牛を国内へ運び入れた。秦軍は、その道を通って蜀に攻め入り、滅ぼした〔*→〔木馬〕2の『ギリシア神話』(アポロドロス)摘要第5章の、トロイの木馬の物語に類似する〕。
『お葬式』(伊丹十三) 中年男の佗助は、妻とともに俳優として東京で働いている。妻の父が急逝し、通夜・告別式を伊豆の別荘で行なうこととなる。初めての経験で、僧侶に渡す香典の額も相場がわからず、葬儀屋に教えてもらわねばならない。集まった親族の中には、納棺等の手順にあれこれ口をはさむ者がいる。佗助の愛人が「葬儀の手伝い」と称して現われたので、やむなく佗助は裏の林へ入って、立位で愛人と交わる。いろいろ大変な思いをしながら、どうやらこうやら葬儀万端を無事に済ませ、佗助夫婦は火葬の煙を感慨深く眺めた。
『信長公記』(太田牛一)首巻 織田信長が十代後半の頃、父信秀が病死した。葬儀の席に現れた信長は、茶せん髪に結い、大刀・脇差を縄で巻き、袴なしの姿であった。彼は仏前に進むと、抹香をわしづかみにして投げかけ、帰って行った(弟・信行は肩衣に袴姿で、礼儀正しくふるまった)。参列者たちは信長を「大うつけ」と嘲った。ただ、筑紫から来た客僧一人が、「あれこそ国を持つ人よ」と言った。
『太陽の季節』(石原慎太郎) 英子は竜哉の子を妊娠し、中絶手術に失敗して死んだ。葬式に出かけた竜哉は、焼香しようとして、英子の遺影を見る。彼女の笑顔の中にある挑むような眼差しを見て、竜哉は知った。英子は死ぬことによって、一番残酷な復讐を竜哉にしたのだ。竜哉は香炉を写真に叩きつけ、「馬鹿野郎っ!」と叫ぶ。驚く参列者たちに、「貴方達には何もわかりゃしないんだ」と言い捨てて、竜哉は出て行った。
『狗張子』(釈了意)巻2−2「死して二人となること」 ある男が病死した時、死者と瓜二つの男がやって来て、死者の枕頭に坐して泣いた。すると死者が起き上がり、男とつかみ合い殴り合った。やがて二人はともに倒れ、どちらがどちらとも見分けがつかなかったので、同じ塚に埋められた〔*→〔自己視〕2aの『夢を食うもの』(小泉八雲)と類似する〕。
『古事記』上巻 天若日子が死んだ時、友人の阿遅志貴高日子根(アヂシキタカヒコネ)が弔いに来た。二人はよく似ていたので、遺族は「天若日子は生きていたのだ」と喜んで、彼に取りすがった。阿遅志貴高日子根は、「私は親友だから弔いに来たのだ。それなのに穢(きたない)い死人と間違えるとは」と怒り、喪屋を破壊して天に飛び去った〔*『日本書紀』巻2神代下・第9段本文・一書第1に類話〕。
『通夜』(つげ義春) 三人の盗賊が、一軒家に雨宿りを請う。老婆が「今、倅(せがれ)が死んだばかりじゃ」と言って断るが、三人は強引に上がり込む。彼らは退屈しのぎに、死体の足の裏や脇の下をくすぐり、さらに死体を蒲団から引きずり出し、抱いて踊る。やがて雨があがり、三人は家から出て行く。彼らは「愉快だったなあ」「あの死体め。必死だったぞ」「ババァめ。つまらぬ嘘をつくからさ」と笑い合う。
『今昔物語集』巻3−34 仏が涅槃に入ったので、弟子たちが遺体を火葬しようとしたが、棺に火を投げかけても、みな消えてしまった。仏の聖なる遺体は、世俗の火では焼けないのである。仏は大慈悲心をもって自らの胸の中から火を出し、棺を焼いた。
『保元物語』下「崩御の事」 保元の乱の後、崇徳院は讃岐国に配流された。院は都へ還ることを願ったが、赦されなかった。配流後九年目の長寛二年(1164)に、院は四十六歳で亡くなった。都への思いが強かったのか、火葬の煙が都に向かってなびいたのは、恐ろしいことであった。
*死者を火葬にした灰→〔灰〕2a。
★1a.姦通の証拠となる装身具。性交の際、装身具をはずす・忘れるなどして、それが夫などの手に入る。
『鸚鵡七十話』第24話 グナガウラヴァの妻アナンガセーナーが情夫と寝た時、足環が音を立てたので、彼女は足環をはずす。舅がこれを見て、不義の証拠に足環を持ち去る。アナンガセーナーは夫グナガウラヴァに「先日お父様が足環を取った」と訴え、夫は「父はお前が気に入らないんだ」と言う。翌朝、舅が、嫁の不義の証拠として足環を示すが、グナガウラヴァは父の言葉を信じない。
『カター・サリット・サーガラ』「ナラヴァーハナダッタ王子の誕生」1・挿話1 デーヴァダッタ王子は商人の娘を妻とする。妻が実家に帰っている間に政変が起き、王子は身をやつして亡命する。その途中、王子は妻と出会うが、妻は気づかず、慈善院の男と姦通し、激しく抱き合ったため耳飾りを落とす。王子は耳飾りを拾って舅に送り届ける。妻は不行跡がばれたと知り、恥じて死ぬ。
『日本書紀』巻12履中天皇即位前紀 住吉仲皇子(すみのえのなかつみこ)が、履中天皇の名をかたって黒媛のもとへ行き、犯す。その夜、彼は手に巻いていた鈴を忘れて帰る。翌晩、履中天皇本人が黒媛を訪れ、床で音をたてた鈴を怪しんで、仲皇子の悪事を知る。
★1b.姦通の証拠となる装身具。夫が妻に贈った装身具を、妻が愛人に与える。
『三銃士』(デュマ) ルイ十三世が妃アンヌの誕生祝に贈ったダイヤの胸飾りを、アンヌは愛人バッキンガム公に与える。ルイ十三世は、舞踏会に胸飾りをつけて出るようアンヌに命ずるので、ダルタニャンがロンドンのバッキンガム公の所へ胸飾りを取りに行く。しかし枢機卿の配下ミレディが、アンヌを陥れるべく、十二あったダイヤのうち二個を盗んでしまう。バッキンガム公は、そっくりのダイヤ二個を細工師に作らせ、アンヌは十二のダイヤが輝く胸飾りをつけて舞踏会に出、窮地を脱する。
『日本書紀』巻14雄略天皇14年4月 雄略天皇(=大泊瀬皇子)が根使主を引見した時、皇后(=幡梭皇女)は根使主の髪飾りを見て、「あれは昔、亡き兄が安康天皇に奉ったはずの押木珠縵(おしきのたまかづら)だ。それゆえ、根使主に疑いを抱いてしまった」と言って泣く。雄略天皇は事情をただし、十四年前に根使主が犯した悪事を知る→〔仲介者〕3。
『長恨伝』(陳鴻) 玄宗皇帝の命令を受けて、方士が魂を遠方へ飛ばし、東海の蓬壺(=蓬莱)の島で楊貴妃の亡魂と対面する。楊貴妃(の亡魂)は、金のかんざしと小箱をそれぞれ半分に割って方士(の魂)に渡し、玄宗皇帝への言伝(ことづて)をする。方士は現世へ帰り、楊貴妃に会った証拠として、金のかんざしと小箱を玄宗皇帝に渡し、彼女の言葉を伝える。
*→〔霊〕11の『狗張子』巻1−6「北条甚五郎出家、附冥途物語のこと」。
『ラーマーヤナ』第5巻「美の巻」 猿のハヌーマンがランカー島へ飛んで、ラーマの妻シータと対面する。ハヌーマンは、ラーマに復命するに際して、確かにシータに会ったことを示す証拠の品を請い、シータは髪飾りをハヌーマンに託す。ラーマは「これは婚姻の時、シータの父王が彼女に贈った髪飾りだ」と言って泣く。
『古事記』上巻 オホナムヂ(=大国主命)は、八十神たちにだまされ焼き殺される(*→〔猪〕5)。母神が高天原へ昇り、タカミムスヒに救いを請う。タカミムスヒはキサガヒ(=赤貝)ヒメとウムギ(=蛤)ヒメを派遣し、この二女神の治療で、オホナムヂは蘇生する。その後、八十神はオホナムヂを木の割れ目に入れて、挟み殺す。母神が木を裂いてオホナムヂを助け出し、生き返らせる。
『封神演義』第13〜14回 ナタ(ナタク)は七歳の時、太乙真人の命令で自らを刀で解体して死ぬ。太乙真人は、数百年かけて煉った金丹を用いてナタの魂魄を蓮葉に導入し、「人形(ジンケイ)を成せ」と声をかけてナタを再生させる。
『ルカによる福音書』第24章 イエスは死後三日して復活し、弟子たちの前に現れた。
『今昔物語集』巻12−37 伝染病で父母が死んだので、僧信誓は『法華経』を唱えて祈ると、助命しようとの閻魔王の手紙を夢に見て、父母は生き返った。
『三宝絵詞』上−13 親に孝行をつくす施無は、誤って弓で射られ、死ぬ。帝釈が天眼でこれを見、天の薬を施無の口にそそぐ。矢が抜けて施無は生き返る。
『南総里見八犬伝』第9輯巻之42上第170回 扇谷定正・山内顕定両管領軍と里見家の合戦で多くの死傷者がでたが、犬江親兵衛は伏姫神授の仙丹を敵味方の区別なく与え、蘇生させた。
『日本霊異記』下−30 老僧観規は十一面観音像を彫りかけたまま、延暦元年二月十一日に死んだ。しかし二日後に蘇生し、像の完成を人に託して、さらに二日後の二月十五日、「今日は仏涅槃の日ゆえ、私も今日死のう」と言い、その通り死んだ。
*一時的な蘇生→〔背中〕3bの『日本書紀』巻11仁徳天皇即位前紀(ウヂノワキイラツコ)。
『まっしろ白鳥』(グリム)KHM46 多くの美しい娘が、魔法使いの男にさらわれて殺される。三人姉妹の長女と次女も、身体を切り刻まれ殺される。末娘が、姉たちのバラバラの頭・胴体・手足をくっつけて蘇生させる。
*→〔橋〕2bの『三国伝記』巻6−9。
*半牛半人で蘇生する→〔牛〕3cの『日本霊異記』下−26。
★2b.生者が死者とともに寝ることによって、蘇生させる方法がある。
『捜神記』巻1−26 呉猛は仙人から神術を学んだ。西安知事・于慶が死んで三日後、呉猛は「于慶の命数はまだ尽きていないから天に訴えよう」と言い、亡骸のかたわらに寝て、数日後に于慶を呼び起こし、いっしょに立ち上がった。
『太平広記』巻26所収『紀聞』 ケイ仙人は、死んで二晩たった友人の死体を寝台に置き、自分も着物を脱いでいっしょに寝た。熟睡した後、湯を飲ませると、やがて友人は生き返った。
『列王紀』下・第4章 ある家の男児が急病で死んだ。神の人エリシャが、寝台に横たわる男児の上に伏し、自分の口を男児の口に、目を男児の目に、手を男児の手に重ね合わせて、かがみこんだ。男児の身体は温かくなり、生き返った。
『黄金伝説』44「聖ペテロの教座制定」 聖ペテロは、十四年前に死んで墓に埋葬されている少年を、祈りによって蘇生させた。
『小栗(をぐり)』(説経) 小栗と十人の家来たちは毒殺されたが、閻魔大王の情けで地上に戻れることになる。しかし家来十人はすでに火葬にされていて、戻るべき身体がない。小栗一人は土葬されていたので、彼だけが娑婆へ帰る。家来たちは閻魔の侍者となり、冥府にとどまった。
『太平広記』巻375所引『五行記』 干宝(*→『捜神記』の著者)の父が死んだ時、その愛妾も一緒に葬られた。十余年後、干宝の母が死んだので、父と合葬するため墓を開くと、愛妾が生者さながらに横たわっており、数日を経て完全に蘇生した。愛妾は、墓中で父の恩情を受けたことを語り、後、他家に嫁して子を産んだ。
『ヨハネによる福音書』第11章 死後四日たったラザロの墓に、イエスが入って「ラザロよ、出て来なさい」と呼ぶ。ラザロは、身体を布で巻かれた姿のまま出てくる。
『列王紀』下・第13章 神の人エリシャが死んで葬られた後、ある人がエリシャの墓に、一人の死者を投げ込んだ。その死者はエリシャの骨に触れると生き返り、自分の足で立ち上がった。
『捜神記』巻15−1(通巻359話) 王道平が長期の出征中に、婚約者である娘が親の手で無理やり他家に嫁がせられ、娘は怨み嘆いて病死する。帰還した王道平が墓の前で泣くと、娘の霊が、墓を掘り起こし棺を壊すように教える。王道平は墓を開いて娘の身体をさすり、蘇生させる。二人は結婚し、娘は百三十歳まで生きた〔*巻15−2(通巻360話)も同様の物語〕。
『播磨国風土記』餝磨の郡美濃の里 美濃の里継の潮(ツギノミナト)に一人の死んだ女がいた。筑紫国の火君らの祖がやって来たところ、女が生き返った。そこで結婚した。
『聊斎志異』巻3−97「連瑣」 楊于畏は死者の霊である娘と交際する。娘は煮炊きした物を食するうち白骨に生気が蘇り、ついに楊と交わり精を受け、さらに彼の血を一滴臍中に受けて、生きた肉体を得て蘇生する。
『聊斎志異』巻5−194「伍秋月」 王鼎は、死後三十年を経た霊である伍秋月と夫婦になる。王鼎は秋月の遺骸の背に護符を貼り、毎日彼女の名を呼び、夜は抱いて寝る。秋月は三日目に蘇生し、七日目に歩いた。
★3b.男が、死んだ女を一時的に蘇生させるだけで、結婚はできない。
『好色一代男』巻4「形見の水櫛」 世之介は入牢中に知り合った人妻と駆け落ちしようとするが、人妻は実家の男たちに連れ去られる。一週間ほど後、世之介は夜の墓場で、百姓二人が棺桶を掘り出すのを見る(*→〔髪〕7b)。棺桶の中の死体は、捜していた人妻だったので、世之介は涙にくれる。人妻は両眼を見開き、にっこり笑って、またもとの死体にもどる。
『パノラマ島奇談』(江戸川乱歩) 大富豪菰田源三郎が、まだ四十歳にもならぬ若さで急病死して、土葬される。菰田と瓜二つの貧書生人見広介は、深夜、墓から菰田の死体を掘り出し、その経帷子を身につけて、あたかも土中から菰田が蘇生したかのごとく人々を欺く。人見は菰田になりすまし、手に入れた財産を用いて、長年の夢だった理想郷建設にとりかかる→〔島〕5。
『捜神記』巻15−10(通巻368話) 病死した男を家族が棺に入れ埋葬しようとしたところ、男の霊が人に取りついたり、夢に現れたりして、「俺は生き返るから棺を開けてくれ」と訴える。死体を棺から出して看護すると、眼が開き手足が動くようになるが、ものは言えないままで、その後十年以上を経て再び衰え、死んだ。
『春雨物語』「二世の縁」 深夜、土中から鉦をたたく音が聞こえるので、掘ると石棺があり、中には、何百年か前に入定(にゅうじょう)した僧がいた。身体をあたため水を与えると、五十日ほどで息を吹き返した。しかし自分の名前も忘れ、何事もわからぬ状態であった。彼は「入定の定助」と呼ばれ、村の後家の婿になり、駕籠かきや荷かつぎなどをして働いた。
『今昔物語集』巻10−28 震旦の国王が百官を率いて入江へ釣りに行き、多くの魚を料理して食べようとした時、一丈余の人面魚が水面に現れて殺生を非難する。王が恐れて、膾にした魚を水中に捨てると、魚は皆生き返った。
『三宝絵詞』中−3 人々が、池で取った魚の膾を無理やり行基菩薩に勧める。行基が膾を口に入れ吐き出すと、ことごとく小魚となってまた池に入った〔*『今昔物語集』巻11−2に類話〕。
『歌占』(能) 伊勢の神職渡会の家次は、諸国一見の旅の途中、頓死して三日後に蘇生した。彼はまだ若かったが、その時から総白髪になってしまった。彼は歌占いをする男巫となり、不思議な縁で巡り合った息子に、剣樹地獄・石割地獄・火盆地獄など、さまざまな地獄の苦のありさまを、曲舞(くせまい)で見せた。
『江談抄』第3−33 公忠の弁は、頓死して三日後に蘇生した。彼は参内して醍醐帝に謁し、閻魔の庁で帝への批判の語を聞いた、と語る。
『国家』(プラトン)第10巻 戦死したエルの死体は、いつまでも腐敗しなかった。死後十二日目に火葬の薪の上に横たえられていた時、エルは生き返り、あの世で見てきたさまざまなことを語った→〔穴〕3b。
『捜神記』巻6−45(通巻146話) 漢の元始元年(西暦一年)、趙春という娘が病死して七日後に棺から出て来て、「亡父に会い、お前の寿命は二十七歳だ、まだ死ぬ時期ではない、と言われた」と語った。
『捜神記』巻15−4(通巻362話) 李娥は六十歳で死に、十四日後に蘇生した。冥府へ行ったが人違いであるとわかってすぐ帰されることになり、途中、従兄の伯文から現世の息子への手紙を預かって来た、と彼女は語った。
『日本霊異記』上−5 推古天皇三十三年(625)、大部屋栖野古(おほとものやすのこ)は死んだが、遺体から良い香りがし、死後三日して蘇生した。彼は妻子に語った。「五色の雲が虹の橋のように北へかかっていた。雲の果てに黄金の山があり、聖徳太子が立っておられた。私は太子から未来の予言を聞いた」。大部屋栖野古は蘇生後、長寿を保ち九十余歳に達した。
『日本霊異記』上−30 膳臣広国は、死後三日して蘇生し、地獄で妻や父が責め苦に会っていた様を語った。
『日本霊異記』中−5 摂津国の富者が死んで九日後に蘇生し、閻羅王宮で、生前に殺した七頭の牛に責められたが、かつて放生した千万余の生き物が護ってくれた、と語った〔*『今昔物語集』巻20−15に類話〕。
『日本霊異記』中−7 行基を妬み謗った僧智光は、死んで地獄に落ち、鉄や銅の熱柱を抱かせられ身体を焼かれた。彼は九日後に蘇生して、地獄での体験を述べ、行基に懺悔した〔*『今昔物語集』巻11−2の異伝では、十日を経て蘇生する〕。
『日本霊異記』中−16 讃岐の富者綾君の召使いは、死後七日たって蘇生し、冥界で一本角の獄卒に斬られそうになったが、生前に放生した牡蠣十個の化身である僧俗十人に護られた、と語った〔*『今昔物語集』巻20−17に類話〕。
『日本霊異記』中−19 利苅の優婆夷は就寝中に頓死し、閻羅王宮へ行った。閻羅王が、彼女の般若心経読誦を聞くために呼んだのだった。読誦を聞いて王は随喜し、三日過ぎて現世に帰してくれた〔*『今昔物語集』巻14−31に類話〕。
『日本霊異記』下−9 藤原広足は死後三日目に蘇生し、冥府で、苦を受ける亡妻のために法華経供養をすることを誓い、閻羅王に許されて現世に戻った、と語った。
『日本霊異記』下−35 肥前国の人、火君は頓死して冥界へ行くが、まだ死ぬ時期ではなかったので帰される。帰路、地獄の釜で煮られる遠江国の物部古丸が、我がために法華経を書写せよと訴える。火君は蘇生後、このことを太宰府に報告する。
『日本霊異記』下−37 平城京の人が筑前へ下り、病を得て死ぬ。彼は閻羅王宮へ行き、従四位上佐伯宿禰伊太知が生前の罪により打たれて苦しむ声を聞く。平城京の人は、蘇生して後、このことを太宰府に報告する。
『パンタグリュエル物語』第二之書(ラブレー)第30章 戦死したエピステモンをパニュルジュが蘇生させる。エピステモンは、「冥府で悪魔や堕天使リュシフェルに会った」と言い、「冥府では、アレクサンデルやクセルクセスなどの王はみじめな賤しい生活をし、ディオゲネスやエピクテトスなどの哲人は大した身分の旦那方になっていた」と語る。
*→〔一人二役〕1aの『江談抄』第3−39。
*→〔地獄〕2。
*蘇生後、「自分は魚になっていた」と語る→〔魚〕4aの『雨月物語』「夢応の鯉魚」。
*枯れた木・杖となった木を蘇生させる→〔木〕6の『花咲か爺』(昔話)・〔杖〕1aに記事。
*血の力で蘇生する→〔血〕5に記事。
*涙の力で蘇生する→〔涙〕2aに記事。
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