*関連項目→〔二者択一〕
『太平広記』巻64所収『逸史』 天人と結婚すべく仙界へ連れて来られた盧シは、水晶宮に住み天と等しい寿命を保つ・地上の仙人となる・俗界の宰相となる、の三つから一つを選べ、と命ぜられる。結局盧シは宰相を選び、たちまち地上に戻される〔*史実では、盧シは宰相となるが晩年失脚する〕。
『ギリシア神話』(アポロドロス)摘要第3章 争いの女神エリスが、ヘラ・アテナ・アフロディーテの三女神の中に、美の賞としてりんごを投じ、三女神の誰がもっとも美しいかを、パリスが審判することになる。アフロディーテが、ヘレネとの結婚をパリスに約束したので、彼はアフロディーテを選ぶ。
*千人の美女の中から、もっとも美しい一人を選ぶ→〔千〕1の『平治物語』下「常葉六波羅に参る事」。
『ヴェニスの商人』(シェイクスピア)第2〜3幕 金・銀・鉛の三つの箱のうちの一つにポーシャの肖像画が入っており、それを選び当てた者が、彼女の夫となる。モロッコ王が金の箱を開けると、しゃれこうべが中にある。アラゴン王が銀の箱を開けると、阿呆の絵が入っている。バッサーニオが鉛の箱を開けると、ポーシャの肖像画があり、彼がポーシャの愛を勝ち得る。
『マハーバーラタ』第3巻「森の巻」 王女スカニヤーが、年老いたチャヴァナ聖仙の妻になる。アシュヴィン双神がスカニヤーの美貌に目をとめ、「あんな老人でなく、若い私たちのうちのどちらかと結婚せよ」と誘う。スカニヤーが断ると、アシュヴィン双神は「チャヴァナ聖仙を私たち同様に若返らせてやるから、その上で一人を選べ」と告げる(*→〔若返り〕1c)。三人の美青年がスカニヤーの前に並ぶが、彼女は誤ることなくチャヴァナ仙を見分けた。
*→〔婿選び〕。
『源平盛衰記』巻16「あやめの前の事」 源三位頼政が、鳥羽院に仕える美女あやめの前に思いをよせる。鳥羽院は、あやめの前と彼女によく似た女二人に同じ衣装を着せ、三人を頼政の前に並ばせる。頼政は「五月雨に沼の石垣水こえていづれかあやめ引きぞわづらふ」と詠み、あやめの前を賜る〔*『あやめのまへ』(御伽草子)では、二人の美女の中から選ぶ。『沙石集』巻5末−2の類話では、梶原三郎兵衛が十人の美女の中からあやめを見つけ出す〕。
『好色一代男』巻5「当流の男を見しらぬ」 大名が、供の二人にも自分と同じ装束を着せて、吉原の太夫に逢う。太夫は三人の足袋を見、鼻緒ずれの跡のない一人を、本物の大名と見破る。
『聊斎志異』巻9−370「チョウ姓」 大勢の女が、狡知にたけたチョウを試そうと「私達の中に身分高い奥様が一人いるが、見分けられるか?」と問う。チョウは「身分ある人の頭上には雲気がとりまいているから、わかる」と答え、女達が思わず中の一人に目を注いだので、チョウは「その人だ」と指摘する。
『賢人ナータン』(レッシング)第3幕 家宝の指輪を三人の息子の誰に譲るかに悩んだ父親が、本物そっくりのにせ指輪を二つ作り、息子たち皆に指輪を与える。父親の死後、三人のうちの誰が本物の指輪の所有者であるかについて、争いが起こる。裁判官が「真の指輪の持ち主としてふさわしい徳を身につけるべく、一人一人が努力せよ」と裁く。
『デカメロン』第1日第3話 父親が三人の子を等しく愛し、相続者のしるしの指輪を誰に与えるか迷う。父親は職人に本物そっくりの指輪を二つ作らせ、父親自身にさえ真偽の区別のつかなくなった合計三つの指輪を、一つずつ三人の子に渡す。
『あゝ結婚』(デ・シーカ) ドメニコは愛人フィルメーナと結婚するが、彼女は娼婦時代に、客の男たちとの間に三人の男児を産んでいた。「そのうちの一人はドメニコの子だ」というので、ドメニコは三人の中の誰が自分の子か知ろうとする。フィルメーナは「貴方は自分の子だけを大事にして、他の二人をかえりみないでしょう」と言い、誰がドメニコの子か教えない。ドメニコは自分の子を見分けることを諦め、三人の子の父親になる。
*二人の子供のどちらが自分の子か、わからない→〔二者択一〕7cの『ゲスタ・ロマノルム』。
★1.殺人の被害者が最後に見た光景が、網膜や角膜に残像として保存される。
『イギリス製濾過機』(ロバーツ) 老教授が毒殺された。知人の科学者が、「死の瞬間に教授の網膜に映った映像が、そのまま残っているかもしれぬ」と考え、網膜残像の現像を試みる。その結果、老教授が生前最後に見たのは午後五時ちょうどの時計だったことがわかり、殺害の時刻が確定できた。
『死者の網膜犯人像』(松本清張) 会社役員の男が絞殺され、両眼を大きく見開いて死んでいた。男の網膜には、生前最後に見た映像が残っているはずなので、それを固定するために、警察がホルマリン液を両眼に注射する。犯人である若い妻とその情夫は、逃れられぬと観念して自殺する。しかし男の網膜に映っていたのは、ポメラニアンだった。愛犬が駆け寄り、主人の死を見取ったのである。
『ブラック・ジャック』(手塚治虫)「春一番」 ブラック・ジャックに角膜移植手術を受けた娘が、「若い男の幻が時々見える」と訴える。角膜の持ち主は殺人事件の被害者であり、死ぬ間際に見た犯人の姿が角膜に焼きついたのだった。娘は幻の男に恋して彼を捜し、殺されそうになるが、ブラック・ジャックが彼女を救う。
★2a.生きている人間の網膜にも、目に見た光景が焼きつけられることがある。
『白い幻影(まぼろし)』(手塚治虫) 海難事故のため、娘の目の前で恋人が波に呑まれる。その瞬間、稲妻の強烈な光によって、恋人の姿が娘の網膜に焼きつけられた。それ以来、娘は白い壁や布などの上に、恋人の姿を見るようになる。娘は、現実の男性よりも幻影の恋人を愛し、ずっと独身生活を続ける〔*波に呑まれた恋人は救助されたが、記憶を失ってしまい、娘のことを忘れて別の女性と結婚した〕。
『雪の夜の話』(太宰治) 人間の眼球は風景をたくわえることができる。昔デンマークの医者が、若い水夫の死体を解剖した時、彼の網膜に一家団欒の光景が写されていたという。女学生の「私」は、美しい雪景色を見て家へ帰り、「私」の眼の底を、妊娠中の嫂(あによめ)に覗かせようと思う。そうすれば赤ちゃんが綺麗になるだろう。
『聊斎志異』巻6−254「八大王」 馮が手に入れた古鏡は、美人を照らすとその像が残り、拭っても消えなかった。馮は王侯の姫の姿を鏡に映し取って持ち帰り、このことを知った姫は馮に嫁いだ。
『鳥取の蒲団のはなし』(小泉八雲『知られざる日本の面影』) 鳥取の宿屋が、古手屋から一枚の掛蒲団を買った。夜になると蒲団から「あにさん寒かろう」「お前寒かろう」と声がするので、客は気味悪がった。かつてその蒲団には、両親を亡くした貧しい兄弟が寝て、「あにさん寒かろう」「お前寒かろう」といたわり合っていたが、家主が蒲団を取り上げ、雪の日に兄弟は凍死したのだった。
『変身物語』(オヴィディウス)巻3 妖精エコーが美少年ナルキッソスに恋し、抱擁しようとするが、ナルキッソスは彼女をはねつける。エコーは恥じて森の奥に隠れ、叶わぬ恋の悲しみでやせ衰えて、骨と声だけになる。骨はやがて石と化し、エコーはついに声だけの存在となった。今もエコーの声だけは、皆の耳に届いている。
『不思議の国のアリス』(キャロル) アリスが森へ入って行くと、木の枝の上に、ニヤニヤ笑うチェシャ猫がいた。チェシャ猫はアリスと話をした後に、しっぽの方からゆっくり消えて行く。最後にニヤニヤ笑いだけが残り、猫の体がすっかり消えてしまってからも、それはしばらく残っていた。アリスは「『笑わない猫』は何度も見たけれど、『猫なしの笑い』は初めて見たわ」と思う。
*光の残存→〔隠蔽〕3の『今昔物語集』巻4−7。
*死者の残留思念→〔川〕8bの『ムーンライト・シャドウ』(吉本ばなな)。
★1.客から出された三つの題材を組み合わせて、落語家が即興で噺を作る。「卵酒」「毒消しの護符」「鉄砲」という三つの題から、三遊亭円朝は『鰍沢』の物語を作った〔*「身延詣り」「遊女」「熊の膏薬」の三題が出された、などの異説もある〕。
『鰍沢』(落語) 身延山参りの旅人が雪道に迷い、一軒家に宿を借りる。その家の女房は、旅人の財布を狙って、しびれ薬入りの卵酒を飲ませる。旅人は毒消しの護符を呑み、逃げ出して鰍沢の急流に落ちる。彼は材木につかまって、「南無妙法蓮華経」とお題目を唱える。女房が鉄砲で旅人をねらい撃ちするが、弾は外れる。旅人は「ああ、お材木(=お題目)のおかげで助かった」と言う〔*落ちは→〔下宿〕2の『おせつ徳三郎』と同じ〕。
★2.「新米の盲乞食」「袴着の祝い」「大仏餅」の題で、円朝が作ったと言われる噺。
『大仏餅』(落語) 新米の盲乞食が幼児を連れて、ある家を訪れる。その家では、子供の袴着の祝いをしていたので、料理の残り物を与える。家の主人は、乞食がもとは有名な茶人だったことを知って、薄茶と大仏餅をふるまう。乞食は大仏餅を喉につまらせ、主人が背中を叩いてやる。その衝撃で盲乞食の目が開いたが、鼻の障子が抜けて、乞食はフガフガ言う。主人は「大仏餅を食ったから、目から鼻へ抜けたのだ(*→〔腹〕2b)」と言う。
★3.「芝浜」「革財布」「酔っ払い」の題で、円朝が作ったと言われる噺。
『芝浜』(落語) 裏長屋に住む魚屋が、朝早く芝浜の魚河岸へ出かけて、五十両入りの革財布を拾う。魚屋は「これで遊んで暮らせる」と、仲間を呼んで酒盛りをして、ぐっすり寝こむ。目覚めると、女房が「財布など知らない。夢でも見たんだろう」と言う。魚屋は、「あさましい夢を見たものだ」と心を入れ替え、酒を断(た)って働き者になる。やがて表通りに店を出すまでになった三年目の大晦日に、女房は「実はあれは夢ではなかった」と打ち明ける。
『サザエさん』(長谷川町子)朝日文庫版第13巻119ページ 麻雀中のノリスケに妻タイコから電話がかかり、仲間が「ノリスケは急病の友人を送って行った」と嘘をつく。しかしノリスケはタイコに「叔父貴と食事に行く」と言って、出かけて来たのだった。さらにノリスケには、賞品のコーヒーセットが当ってしまう。ノリスケは「病人・叔父貴・コーヒーセット、これを家に着くまでに三題話にまとめあげなきゃならんぞ」と考えつつ、夜道を歩く。
*「タイムマシン」「吸血鬼」「植物人間」の三題話→〔吸血鬼〕3dの『短篇をどう書くか』(星新一)。
*「時間旅行」「電気器具」「アトランティス」の三題話→〔時間旅行〕3dの『短篇をどう書くか』(星新一)。
★1.三度目にはじめて成功する・願いが叶うなど、前二回とは異なった状況になる。
『イソップ寓話集』(岩波文庫版)173「木樵とヘルメス」 斧を川に落とした木こりに、ヘルメス神は一度目は金の斧、二度目は銀の斧を見せ、三度目に、木こりが落とした鉄の斧を示す。木こりが「これが私の斧だ」と言うと、ヘルメス神は木こりの正直さを誉め、斧を三つとも与える〔*日本の昔話『金の斧』では、池の中から美しい女が出て来て、木こりに金の斧を見せる〕→〔真似〕1。
『三国志演義』第37〜38回 劉備・関羽・張飛の三人が諸葛孔明の草盧を訪ねるが、一度目・二度目は不在で会えない。三度目にようやく対面でき、天下三分の計を聞いて、彼を軍師として迎える。
『白雪姫』(グリム)KHM53 継母(妃)が物売りの婆さんに化け、白雪姫が留守番をする小人たちの家へ、やって来る。継母は、一度目は胸紐で白雪姫を絞めつけて絶息させ、二度目は毒の櫛を白雪姫の髪にさして倒す。しかし二度とも、小人たちが白雪姫を蘇生させる。継母は、三度目は百姓女に化けて、毒りんごを白雪姫に与える。白雪姫は死に、小人たちが白雪姫をガラスの柩に入れる。
『創世記』第8章 大洪水の後、ノアが箱船から鳩を放つ。一度目はどこへも降りられずに戻ってくる。二度目はオリーブの葉をくわえて戻ってくる。三度目は鳩はもう戻って来ず、水がひいたことがわかる。
『杜子春』(芥川龍之介) 杜子春は、一度目は夕日に映る自分の影の頭の所を堀り、二度目は胸の所を掘って宝を得て、大金持ちになるが、二度とも使い果たす。三度目には、彼は金持ちではなく、仙人になることを願う。
『ペンタメローネ』(バジーレ)第5日第9話 王子が老婆からもらった三つのシトロンを切ると、美女が現れ飲み物を請う。一つ目・二つ目のシトロンの時は、見とれているうちに美女は消え、三つ目でようやく王子は美女に水を与えて、彼女と結婚する。
『列女伝』巻1「母儀傳」11「鄒孟軻母」 孟子の家は墓に近かったので、孟子は幼い頃、葬儀や納棺の真似をして遊んだ。母が「ここは息子を置いておく所ではない」と考え、市場のそばに引っ越した。すると孟子は商人の真似をした。母は再び引っ越し、学校のそばに住んだ。孟子は長じて大学者になった。
*三度目の鳴き声を聞く→〔鶏〕5の金鶏の伝説。
*三度目に、まともな人間を造ることができた→〔猿〕7dの『ホーキング、宇宙と人間を語る』第6章。
*三本目の矢→〔百足〕2の『俵藤太物語』(御伽草子)。
★2.同じことがらが三度繰り返され、三度目にそれを受け入れる。
『法華経』「方便品」第2 霊鷲山(りょうじゅせん)上の世尊は、仏の永遠の生命について説こうとしつつ、「弟子たちは正しく理解できまい」と考えてためらった。弟子の舎利弗が説法を請うたが、世尊は「無益なことである」と言って応じなかった。再度請うても、世尊は断った。しかし舎利弗が三度請うと、ようやく世尊は、深遠な悟りの内容を語り始めた。
『法句経物語』第137〜40偈 マハーモッガラーナ長老は盗賊たちに襲われたが、たくみに身を隠して逃れた。二度目に襲われた時も、うまく逃れた。しかし長老は、「たび重なる襲撃は偶然の出来事ではなく、過去生で自分がつくった悪業因の、必然の果である」と悟り、三度目には盗賊たちに身をゆだねて殺された〔*マハーモッガラーナ長老は過去世で、自分の父母を殺していた〕。
*三度目の命令で、エクスカリバーを水中に投げる→〔剣〕3の『アーサーの死』(マロリー)第21巻第5章。
『漢武故事』10 顔駟は、文帝・景帝・武帝の三代に仕えた。最初の文帝は学問を好んだが、顔駟は武芸が得意だった。次の景帝は老成した者を好んだが、その時まだ顔駟は若年だった。次の武帝は若者を好んだが、その時すでに顔駟は老人になっており、結局ずっと不遇だった〔*しかしこれを知った武帝は、顔駟を都尉に抜擢した〕。
★4.一度目はうまく行く。二度目は失敗する。三度目に意外な結末をむかえる。
『源氏物語』「帚木」〜「空蝉」 源氏は、老受領伊予守の後妻空蝉と一夜をともにする。しかし空蝉は二人の身分・境遇の差を思い、二度目には源氏を拒絶する。拒まれていっそう恋心を燃やす源氏が、三度目に空蝉の部屋へしのび入り、そこに眠る女性をかき抱くと、意外にもそれは空蝉の継娘軒端の荻だった〔*空蝉は源氏の気配を察知し、外へ逃れ出ていた〕。
『今昔物語集』巻4−1 涅槃に入ろうとする釈迦が、「一刧の寿命をとどめようか、多刧の寿命をとどめようか」と阿難に三度問うが、阿難は三度とも答えなかった。
『マタイによる福音書』第26章 イエスが「今夜鶏が鳴く前に、あなたは三度私を知らないと言うだろう」とペテロ(ペトロ)に予言する。イエスが捕えられ、「その仲間ではないか」と人々からとがめられたペテロは、三度否認する。その時鶏が鳴き、ペテロはイエスの言葉を思い出して泣く。
*ロドリゴが踏絵を踏んだ時も、鶏が鳴いた→〔禁制〕7の『沈黙』(遠藤周作)。
*三度の異なった問いに、三度とも同じ言葉で答える→〔一つ覚え〕4の『魔法修行者』(幸田露伴)。
*三歩あるくだけで、遠方へ行ける→〔靴(履・沓・鞋)〕1aの『オズの魔法使い』(ボーム)・〔土地〕1bの『バーガヴァタ・プラーナ』(ヴィシュヌ神話)。
*三つの願い→〔願い事〕2a・2b・2c。
『イワンのばか』(トルストイ) 長男・軍人セミョーン、次男・ほてい腹のタラース、三男・ばかのイワンの三兄弟が、それぞれ国王になる。老悪魔がセミョーンとタラースの欲につけこみ、セミョーンを戦争で大敗させ、タラースを経済的に破綻させる。老悪魔はイワンの国をも侵略するが、ばかな国民たちは戦争の仕方を知らず、金の使い方も知らないので、老悪魔も手が出せず、イワンの国は無事太平であった。
『諏訪の本地』(御伽草子) 甲賀権守には三人の息子があったが、末子の三郎諏方が惣領となり、春日姫を妻に迎える。しかし兄二郎の奸計で、三郎は蓼科山の人穴の底に置き去りにされ、地底を遍歴し、維縵国で九年七ヵ月を過ごした後、地上に戻る。三郎と春日姫は再会し、三郎は諏訪上社の神、春日姫は下社の神となる。二人の本地は普賢菩薩と千手観音である〔*『神道集』巻10−50「諏訪縁起の事」に類話〕。
『まぬけのハンス』(アンデルセン) 王女が、「いちばん話上手な者を婿にする」というので、三人兄弟が城へ行く。上の二人は失敗し、末子のまぬけのハンスが、途中で拾った死んだ烏・古木靴・泥を出して、「古木靴を器に、泥をソースにして、烏を焼いてほしい」と言い、王女に気に入られる。
『歴史』(ヘロドトス)巻4−5 スキュタイの三人兄弟が、天から落ちてきた黄金の器物を見つける。長兄・次兄が取ろうとすると黄金は燃え、末子が近づくと火は消える。末子は器物を家へ持ち帰り、兄二人は末子に王権をすべて譲る。
『歴史』(ヘロドトス)巻4−9〜10 ヘラクレスが、「生まれてくる三人の子に弓を引き帯を締める試練を与えよ」と、妻である蛇女に言い残して、スキュティアを去る。長子と次子は課せられた試練に堪えず、国を追われる。末子がこれをやり遂げて、代々の王の始祖となる。
『歴史』(ヘロドトス)巻8−137 レバイアの町の王家で働く三人兄弟が、退去を命ぜられたため、賃金を要求する。王は、日光が煙出しの穴から部屋に差しこんで床の上に当たっているのを指し、「これをやろう」と言う。長兄・次兄は呆気にとられる。末子ペルディッカスは、日光を懐中に汲み入れるしぐさをする。彼はマケドニアの王になる。
*→〔遺産〕2の『長靴をはいた猫』(ペロー)・〔影〕3aの『なら梨とり』(昔話)・〔言霊〕5bの『怪鳥(ばけどり)グライフ』(グリム)KHM165。
*三人兄弟の末子が、老親の希望をかなえる→〔老婆〕1aの『伊勢物語』第63段・〔老婆〕2aの『三国伝記』巻10−5。
『乱』(黒澤明) 戦国時代。七十歳の一文字秀虎は、「太郎・次郎・三郎の三人息子に三つの城を譲り、引退する」と宣言する。太郎・次郎が父秀虎にさまざまなへつらいの言葉を述べるので、一本気な三郎はそれを「不快だ」と言い、また父秀虎が示した三本の矢の教訓(*→〔矢〕5a)をも批判する。秀虎は怒り、三人息子の中でもっとも父親思いの三郎を追放する。その後は兄弟相争う戦となり、それに隣国がつけこんで、秀虎も三人息子も死ぬ。一文字家は滅亡する。
『ゴッドファーザー』(コッポラ) マフィアのボス、ドン・コルレオーネが、麻薬の売人ソロッツォ一味に狙撃され、重傷を負った。コルレオーネには三人の息子がいた。乱暴者の長男ソニーは、敵の罠にかかって殺された。次男フレドは、長男とは対照的にひどい臆病者だった。三男マイクルは正業につくつもりであったが、ソロッツォとその仲間の悪徳警官を射殺して、父の仇を討った。父の死後、マイクルがあとを継いでゴッドファーザーとなり、長期にわたって暗黒街に君臨した〔*後にマイクルは、兄フレドを殺した〕。
『菅原伝授手習鑑』 白太夫の三人息子、梅王丸・松王丸・桜丸は三つ子で、御所の舎人となる。桜丸は自らの落ち度が、菅原道真筑紫配流の原因になったと考えて(*→〔濡れ衣〕1d)切腹する。梅王丸は、道真守護のために筑紫へ向かう。松王丸は我が子小太郎を犠牲にして、道真の一子菅秀才を救う(*→〔首〕1)。
『三人吉三廓初買(さんにんきちさくるわのはつがい)』(河竹黙阿弥) 和尚吉三・お坊吉三・お嬢吉三は春の夜、大川端で出会って意気投合し、義兄弟の契りを結ぶ。それぞれに悪事を重ね、盗賊・人殺しなどとして追われるが、やがて年長の和尚吉三が、お坊吉三・お嬢吉三に「真人間になれ」と説いて、遠方へ逃がそうとする。しかし捕り手に囲まれ、もはやこれまでと覚悟した三人は、雪の降りしきる中、三つ巴に刺し違えて死ぬ。
*劉備・関羽・張飛も三人の義兄弟だったが、同日に死ぬことはできなかった→〔同日・同月〕4の『三国志演義』第1回。
*子豚の三兄弟→〔豚〕6の『三匹の子豚の物語』(イギリスの昔話)。
*兄弟が二人のばあいは→〔兄弟〕。
★1.三人姉妹の末子が物語の主人公となり活躍する。あるいは末子が幸福になる。
『黄金のろば』(アプレイウス)第4〜6巻 ある国の王が三人の娘を持っていた。三人のうち、末娘のプシュケがきわだって美しかった。彼女は女神ヴェヌスの息子エロス(クピード)の妻となり、やがては神々の仲間入りをした。
『篁物語』 篁が、右大臣の娘に求婚する。右大臣には三人の娘があったが、大君・中の君は拒否し、三の君が篁の求婚に応ずる。後、大君・中の君は身分の低い男の妻になり、三の君と結婚した篁は出世して、宰相より上の位になった。
『美女と野獣』(ボーモン夫人) 野獣の宮殿のバラの一枝を商人が折ると野獣は怒り、「お前あるいはお前の娘の一人が、死なねばならぬ」と言う。商人の三人娘のうちの末娘ベルが、父の命を救うために野獣の宮殿に住む。しかし野獣と見えたのは、美しい王子が魔法で姿を変えられていたのだった。
『蛇婿入り』(昔話)「水乞型」 爺が、「日照りの田に水をかけてくれる者がいたら、三人いる娘の一人を嫁にやってもよい」と独りごとを言う。蛇が田に水をかけ、娘を要求する。三人娘の長女も次女も「蛇の嫁などにはならぬ」と拒絶し、末娘が承諾して、蛇について行く(山形県最上郡真室川町)→〔蛇退治〕4。
『まっしろ白鳥』(グリム)KHM46 三人姉妹の長女と次女がバラバラ死体の部屋を見る。驚いて持っていた卵を落とし、卵に血がついたために、長女と次女は魔法使いの男に殺される。末娘が、卵をしまっておいて部屋を見、長女と次女を蘇生させる。魔法使いは「お前は試験に及第したから私の嫁にしてやる」と言うが、末娘は魔法使いをだまして焼き殺す。
*長者の三人娘の末子が、天稚彦と結婚する→〔変身〕2bの『天稚彦草子』(御伽草子)。
*→〔売買〕4の『遠野物語』(柳田国男)2。
『リア王』(シェイクスピア) 八十歳を越して退位したリア王には、三人の娘がいた。長女ゴネリルと次女リーガンは父を邪魔者扱いし、リア王は怒りと悲しみで狂気となって、荒野をさすらう。ゴネリルとリーガンは、ともに有夫の身でありながら、悪人エドマンドの愛を得ようとして争い、ゴネリルはリーガンを毒殺して、自殺する。父リア王を愛する末娘コーディリアはフランス王と結婚し、父を救うため、兵を率いてエドマンドの軍と戦うが敗れ、捕らわれて絞殺される。リア王も悲嘆して死ぬ。
『三人姉妹』(チェーホフ) オーリガ、マーシャ、イリーナの三人姉妹は貴族の家柄だが、父が死に、時代も変わったので、働いて暮らしをたてねばならない。オーリガは学校の教師をして、校長になる。マーシャは不倫をするが、結局別れる。イリーナは婚約者を決闘で失う。三人姉妹の兄アンドレーは借金をして、屋敷を抵当に入れてしまう。幕切れに、オーリガは二人の妹を抱いて言う。「生きていきましょう。もう少ししたら、私たちにもわかるような気がする。なぜ生きているのか、なんのために苦しむのか・・・・」。
『叫びとささやき』(ベルイマン) 三人姉妹のうちの次女、三十七歳のアグネスが子宮癌で死ぬ。死体となったアグネスは、すすり泣きながら長女カーリンを呼び、「そばにいて。手を握って温めて」と請う。カーリンは「あなたの死に関わりたくない」と言って、頼みを拒否する。アグネスは三女マリアにも同様に訴え、マリアに抱きつき接吻する。マリアは悲鳴をあげて逃げる。女中のアンナだけがアグネスを優しく抱き、アグネスはようやく安らかに眠る。
*姉妹が二人のばあいは→〔姉妹〕。
★1.三人の魔女や女神は、一般に姉妹と考えられているが、原典では必ずしも明確に姉妹と記されないものもある。
『ギュルヴィたぶらかし(ギュルヴィの惑わし)』(スノリ)第15章 世界樹ユグドラシルの下の泉のそばに館があり、ウルズ・ヴェルザンディ・スクルドの三人娘が出て来て、人間の寿命を定める。彼女らは運命の女神(ノルンまたはノルニル)と呼ばれる〔*『巫女の予言』20では、ユグドラシルの下の海から三人娘が来て、人の運命を定め、それを告げる、とする〕。
『ギリシア神話』(アポロドロス)第2巻第4章 ステノ・エウリュアレ・メドゥサのゴルゴン三姉妹は、龍の鱗で取り巻かれた頭・猪のごとく大きな歯・青銅の手・黄金の翼を持ち、空を飛んで、彼女らを見た者を石に変じた。三人のうちメドゥサだけが可死だったので、ペルセウスが彼女の首を切った〔*ゴルゴンたちの姉妹に、老婆の三姉妹もいた〕→〔一つ目〕4。
『ニーベルングの指環』(ワーグナー) ラインの河底の黄金を、ヴォークリンデ・ヴェルグンデ・フロースヒルデの三人姉妹が守っている。小人アルベルヒが三人に言い寄るが相手にされず、黄金を盗んで逃げ去る。黄金から作られた指環は、何人かの手を巡った後にラインの乙女たちの手に還る。
*→〔予言〕1bの『マクベス』(シェイクスピア)第1〜2幕。
口裂け女(松谷みよ子『現代民話考』) 口裂け女は三人姉妹である。長女は整形手術の失敗で口が裂けた。次女は交通事故にあって口が裂けた。末娘は美しいままだったので、長女と次女が嫉妬して、鎌で末娘の口を裂いた(山口県下末市)。
かまいたち(水木しげる『図説日本妖怪大全』) 道を歩く男に、突然ピューッと風が吹きつける。家へ帰ると、女房が「どうしたの、その怪我は」と叫ぶ。男の足からは、血がどくどく流れていた。これは、かまいたちのしわざである。かまいたちは、三人一組の神あるいは妖怪だ。一人目が突っかかり、二人目が鎌で切り、三人目が薬をつける。だから、切られても痛みがない〔*→〔死因〕3aの『ブラック・ジャック』(手塚治虫)「通り魔」では、この話をヒントに、ブラック・ジャックが難事件を解決する〕。
『死神の名づけ親』(グリム)KHM44 貧乏な父親に十三人目の子が生まれたので、名付け親を捜して大通りを歩く。初めに神様が・次に悪魔が「名付け親になろう」と申し出るが、父親は断り、三人目に死神に出会う。死神は金持ちも貧乏人も差別せずさらっていく所を父親は気に入り、死神を子供の名付け親にする→〔死神〕1a。
『懶惰の歌留多』(太宰治)「い」 一月一日の朝。ヴィナスは、「ジュピタア様の宮殿へおまいりの途中で出会う三人目の男の人を、私の生涯の夫にしよう」と決意する。森の小路で、まず、むさくるしい毛むくじゃらの神に会った。次に、森の出口の白樺の下で、美丈夫のヴァルカンに会った。ヴィナスは「三人目はこの人だ。二人目は――この白樺」と叫んで、ヴァルカンの胸に身を投げた。
*人形を人間に見立てて、人数を調整する→〔写真〕5bの三人で写すと死ぬ(松谷みよ子『現代民話考』)。
『戦国策』第4「秦(2)」64 孔子の高弟曽子(曽参)と同姓同名の者が人を殺した。ある人が曽子の母に「曽参が人を殺した」と知らせたが、母は信じなかった。別の人が同じことを告げても母は平然としていた。しかし三人目の人が曽子の殺人を報ずると、母は動揺して駆け出した。
『戦国策』第23「魏(2)」331 魏王は臣下から「市場に虎が出た、と誰かが言ったら信じますか」と問われ、「信じない」と答える。「二人が言ったら信じますか」と問われ、「疑う」と答える。「三人が言ったら信じますか」と問われ、「信じる」と答える。あり得ぬことでも、三人もの人間が言えば本当になってしまう。
『パンチャタントラ』巻3−3 バラモンが山羊をかついで歩く。一人目の悪漢が「なぜ犬をかつぐのか?」と問う。バラモンは「お前は盲目か。山羊を犬と間違うなんて」と怒る。二人目の悪漢が「仔牛の死体をかついでいる」と言う。バラモンは「これは山羊だ」と怒る。三人目の悪漢が「ロバをかつぐのは不浄だ」と言う。バラモンは「これはロバなのだ」と思って捨てる。三人の悪漢は山羊を取り、皆で食べる。
★3.三人から「お前は病気だ」と言われると、「自分は病気だ」と思ってしまう。死んでしまうことさえある。
『デカメロン』第9日第3話 朝、カランドリーノが家を出ると、道で会った友人が「どうかしたのか。ふだんと様子が違う」と言う。二人目の友人が「半分死んでいるみたいだ」と言い、三人目が「死んでしまったような顔だ」と言う。カランドリーノは「自分は重病なのだ」と信じこむ〔*医者が「お前は妊娠している」と言うと、カランドリーノはそれも信じる〕。
『万国幽霊怪話』(押川春浪)「セルヴィア国属官の気死」 役所の属官アデスは丈夫な人で、二十年間皆勤だった。同僚たちが「彼を一日休ませてやろう」とたくらみ、帰り道の所々に待ち伏せして声をかける。一人目が「アデスさん、どこか悪いのでは?」、二人目が「顔色が変だ。コレラが流行しているから気をつけなさい」、三人目が「真っ青な顔だ。コレラですぞ。病院へ行かねばなりません」と言う。アデスは気を失い、家へ運ばれて、その夜のうちに死んでしまった。
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