『阿Q正伝』(魯迅) 阿Qの頭には数ヵ所、はげがあった。そのため阿Qは、「はげ」及びそれに近い発音の語を嫌い、さらに「光る」「明るい」「ランプ」などの言葉も、自らも使わず他人にも使わせなかった。この禁を犯す者があると、阿Qは、はげまで真っ赤にして怒った。
『男はつらいよ(続)』(山田洋次) 車寅次郎は母親と会い、傷心して帰宅する(*→〔母さがし〕3)。彼を迎えるとらやの人々は、「お母さん」「お袋」などの言葉を使わないように申し合わせる。しかし、ついそれらの言葉を口にしてしまい、雰囲気を変えるためにテレビをつけると、少女が「お母さーん」と叫ぶシーンが映る。さらに隣のタコ社長が大声で、「寅さん、お袋さんに会ったんだって」と言って、やって来る。
*「鼻」という言葉を使わない→〔鼻〕3の『シラノ・ド・ベルジュラック』(ロスタン)。
『ガン病棟』(ソルジェニーツィン)26「いい傾向」 癌病棟の回診では「病状が悪化」と言ってはならず、「プロセスが昂進した」というように表現する。「癌」「肉腫」と言わず、「潰瘍」「炎症」「ポリープ」などの言葉を使う。一人の患者が「背中が痛みます。背中にも腫瘍ができたのでしょうか?」と聞いた時、担当医は「違います。それは二次的現象です」と答えた。これは嘘ではなかった。転移は、二次的現象であることに間違いないのである。
『サザエさん』(長谷川町子)朝日文庫版第32巻42ページ 受験生の娘を持つ家の父親が浴室で転倒し、「どうなさったの?」と聞く妻に、「石鹸をふんづけて、両足が上にあがって頭が下になったんだ」と答える。妻は、「『すべった』という言葉を使わないようにしているんです」と、来訪中のフネに説明する。
『しの字ぎらい』(落語) 隠居が権助に、「『し』の字を言うな。言ったら給金をやらない。もし私が言ったばあいには、望みの物を与える」と約束する。隠居は権助に、四貫四百四十四文の銭を数えさせるが、権助は巧みに言い換えて『し』の字を言わないので、隠居は思わず、「しぶといやつだ」と言ってしまう。権助は四貫四百四十四文を得る。
★2b.逆に、特定の字を口にしたら田楽が食える、という話もある。
『寄合酒』(落語) 「田楽は、運のつくように食うものだ。『ん』の字を言った数だけ食わせてやろう」と一人が言う。皆は「みかん、きんかん、わしゃ好かん」など、「ん」尽くしの言葉遊びを始める。ずるい男が、火事の半鐘「じゃん、じゃん、じゃん」と消防の鐘「がん、がん、がん」を何度も繰り返して、たくさん田楽を取る。皆が「消防の真似をしたから、お前は、焼かずに生の豆腐を食え」と批難する。
『二人でお茶を』(バトラー) ナネットは、自らが主演するミュージカル上演の資金を出してくれるよう、叔父に頼む。叔父は「四十八時間、何事にも『イエス』と言わず『ノー』と言い続けたら、出資しよう」と約束する。そのためナネットは、恋人ジミーからの求婚に「ノー」と答えざるをえない。実は叔父は、株の暴落で財産を失っていたのだが、幸い他に出資者が現れたので、『ノー・ノー・ナネット』というタイトルのミュージカルを上演することができた。ナネットとジミーも、めでたく結婚した。
『猿後家』(落語) 某大店(おおだな)の後家は猿に似た顔なので、店では「猿」という言葉が禁句になっている。出入りの男が奈良の名所の話をして「猿沢の池」と言ったため、後家の怒りをかって出入り差し止めになる。男は「御寮人さんは小野小町や照手姫にそっくり」と言って後家の機嫌を取り結ぶが、「唐土では楊貴妃」というべきところ、「よう狒狒(ひひ)に似てます」と言ってしまう。
『卒塔婆小町』(三島由紀夫) 九十九歳の乞食老婆は、昔「小町」と呼ばれていた。かつて彼女を「美しい」と言った男たちは、今ではもうみんな死んでしまった。それゆえ老婆は、「私を美しいと言う男は、きっと死ぬ」と考える。詩人が老婆と出会い、語り合ううち、詩人の目には、老婆が二十歳の美女に見えてくる。詩人は「君は美しい」と言って、倒れる。
『ファウスト』(ゲーテ)第1部「書斎」・第2部第5幕「宮殿の大いなる前庭」 悪魔が初老のファウスト博士を若返らせ、青春の快楽を与える。その結果、もしもファウストが不断の向上の意志を失って現状に満足し、「時よ止まれ。お前はいかにも美しい」と言ったら、ファウストは死に、その魂は悪魔のものになる→〔土地〕3。
『沙石集』巻2−3 金持ちの主人に仕える女童(めのわらわ)は信心深く、いつも念仏を唱えていた。それで正月一日にも、給仕中につい「南無阿弥陀仏」と言ってしまった。主人は「よりによって今日、人が死んだ時のように念仏するとは縁起が悪い」と腹を立て、銭を赤く焼いて、女童の片頬に押し当てた→〔身代わり〕4b。
『西鶴諸国ばなし』巻5−6「身を捨てて油壺」 神社の灯明の油を盗んだ老婆が、山姥と見なされ、矢で首を射切られる。以後、老婆の首が夜な夜な現れて火を吹きつつ飛びまわり、この火に追い越された者は三年以内に死ぬというので、往来の人は怯えたが、首が近寄る時に「油さし」と言うと、たちまち消えるのだった。
『子不語』36「秦の毛人」 秦の時代、万里の長城を築くために使役されるのを嫌った人々が、山へ逃げこみ、何百年もたつうちに怪物化して「毛人」と呼ばれるようになった。毛人は里へ出て人家の鶏や犬を食い、鉄砲にも傷つかない。ただ、手をたたいて「長城を築け」と叫べば、あわてて逃げて行くという。
『蕨の恩』(昔話) 眠る蛇が、萌え出た茅(ちがや)の芽に体を突きさされて、動けなくなる。すると蕨が芽を出して蛇の体を持ち上げ、茅から抜いてくれた。あるいは、なめくじが周りをぐるぐる這ったために、蛇は動けなくなった。蕨が芽を出して土を割り、なめくじの跡を消したので、蛇は逃げることができた。それで、蛇に会った時、「蕨の恩を忘れたか」と唱えれば噛まれない。
*呪力ある地名→〔地名〕2の重源上人の雷封じの伝説。
*人の心を動かす地名→〔地名〕5の『武蔵野夫人』(大岡昇平)。
*威力ある名前→〔名前〕1。
『ギリシア神話』(アポロドロス)第1巻第9章 ペリアス王が、「市民の一人に殺されるとの神託があった場合、その市民をどう処置すべきか」とイアソンに尋ねる。イアソンは「私だったら、その市民に金毛の羊皮を取って来るよう命令します」と答える。ペリアスはただちに、「その皮を取りに行け」とイアソンに命ずる。
『今昔物語集』巻27−22 夜、狩りのために木に登った兄が、別の木の上にいる弟に、「もし、私の髻をつかみ引き上げる者があったらどうするか」と問う。弟が「矢で射る」と答えると、兄は「実は今、わが髻をつかむ者がある。射よ」と命ずる→〔片腕〕1a。
『サムエル記』下・第12章 人妻バト・シェバ(バテシバ)を奪いその夫ウリアを殺したダビデ王にむかって、預言者ナタンが、「富んだ男が貧しい人の小羊を取った」というたとえ話をする。ダビデ王が「そんな男は死罪だ」と言うと、ナタンは「その男はあなただ」と指摘する。ダビデ王は「私は主(しゅ)に対して罪を犯した」と認め、死を免れるが、彼がバト・シェバに産ませた子は、まもなく死ぬ。
『ホルスとセトの争い』(古代エジプト) オシリスの死後、兄弟のセト(テュホン)がその役職を引き継ごうとたくらむが、オシリスの妻イシスは、我が子ホルスに跡をつがせたいと考える。イシスは羊飼いの未亡人に変身し、セトに「息子が亡夫の家畜の世話をしているが、よそ者がそれを奪おうとしている」と謎をかける。セトが「家畜は当然息子のものだ」と言うと、イシスは正体をあらわして、セトを嘲ける。
*言質を取ってから、樽に入れて罰する→〔樽〕5。
『彼岸花』(小津安二郎) 昭和三十年代前半の東京。会社重役の平山は娘節子に良縁を捜すが、すでに節子には結婚を誓った恋人がいることを知り、怒り出す。京都から知人の娘幸子が訪れ、「好きな人がいるので、母の勧める縁談を断って家出して来た」と言う。平山は「親の言うことなど聞かず、君自身で結婚相手を決めればいい」と、幸子の行動に理解を示す。幸子は喜んで「今の話はみんな嘘。おじ様、節子さんの結婚を認めてあげてね」と言い、節子に「おじ様のお許しがでたわ」と電話する。
『捜神記』巻14−11(通巻350話) 馬が、娘を嫁にもらうとの約束で、その父親を遠方へ迎えに行き連れ帰るが、馬が娘を要求すると父親は怒って馬を殺す→〔馬〕1a。
『太平記』巻15「園城寺戒壇の事」 白河院の時、三井寺の頼豪僧都が皇子誕生の祈りを仰せつけられる。無事皇子誕生の後、帝から「望みどおりの恩賞を与える」との宣下があり、頼豪は園城寺の戒壇設立の勅許を願う。帝はいったん勅許を与えながら、比叡山からの抗議により取り消す。頼豪は怒り、帝と比叡山を呪って死ぬ→〔鼠〕1。
『道成寺縁起』 熊野参詣途中の美僧が、宿を借りた家の女から言い寄られ、「参詣をすませてから貴女の意に従おう」といってその場をつくろい、熊野参詣後、女の家には立ち寄らず、別の道を通って帰る。女は違約を怒り、蛇体と変じて僧を殺す。
『南総里見八犬伝』肇輯巻之3第6回 里見義実は山下定包を討ち、その妻・玉梓を裁く。玉梓の哀訴に、義実はいったんは「赦免しよう」と言うが、金碗八郎の諌言により、ふたたび玉梓処刑の命令を下す。「『許す』と言ったその舌で、すぐまた言葉をひるがえすとは、人の命をもてあそぶも同然」と玉梓は怒り、里見家の子々孫々まで呪って、斬首される。
『創世記』第27章 目の見えぬ老父イサクは、欺かれて次子ヤコブに、跡継ぎとして認める祝福の言葉を与える。長子エサウがそれを知り、「私にも祝福を与えよ」と父に迫るが、いったんヤコブに与えた言葉は取り消せず、イサクは「お前の祝福は奪われてしまった」と言う。
『南総里見八犬伝』肇輯巻之5第9回 安西景連に攻められ窮した里見義実は、猛犬八房にむかってたわむれに「敵景連の首を取ってきたら娘伏姫とめあわそう」という。八房は景連の首を取り、伏姫を要求するので、やむなく義実は伏姫を与える。
『眠れる森の美女』(ペロー) 王女の誕生祝いに招待されなかった仙女が怒って、紡錐による姫の死を宣告する。その言葉を取り消すことはもはや不可能なので、別の仙女が「死ぬのではなく、百年の間眠るだけだ」と、呪いをやわらげる〔*『いばら姫』(グリム)KHM50に類話〕→〔眠り〕1a。
『ラーマーヤナ』第2巻「アヨーディヤーの巻」 かつてダシャラタ王は、傷ついた身をカイケーイー妃に救われた時、「二つの望みを叶えよう」と約束したことがあった。年月を経て、カイケーイー妃は、自分の実子バラタの即位と継子ラーマの追放を、ダシャラタ王に要求する。約束ゆえ、ダシャラタ王はその望みを叶えねばならなくなる→〔見間違い〕3b。
*誤解から出た言葉でも、それを取り消すことはできない→〔一妻多夫〕1bの『マハーバーラタ』第1巻「序章の巻」。
*取り消せぬ約束・命令などの効力を無化する方法→〔契約〕3。
★5a.出まかせに言ったり書いたりした言葉が、現実のものになる。
『摂津国風土記』逸文 刀我野の牡鹿が、「私の背中に草が生え、雪が降る、という夢を見た」と妻の牝鹿に語る。牝鹿は、夫が淡路の妾の所へ通うのをやめさせようと、「それは矢で背を射られ、塩を肉に塗られる前兆です。淡路へ行ってはなりません」と、いつわりの夢解きをする。しかし牝鹿は妾恋しさに淡路へ出かけ、妻が言ったとおり射殺される〔*『日本書紀』巻11仁徳天皇38年7月の条に簡略な異伝が載る〕。
『龍』(芥川龍之介) 鼻蔵と呼ばれる法師が、「三月三日龍が昇る」と、出まかせを書いた高札を猿沢の池に立てる。ところがそれが評判となって当日は大勢の見物人が来たので、鼻蔵自身も、「本当に龍が昇るかもしれぬ」という気になる。やがて人々は突然の雷雨の中、昇天する黒龍を見る〔*原話である『宇治拾遺物語』巻11−6では、龍は昇らない〕。
*何気なく発した一言が、人の死を引き起こす・もしくは死の予言になる→〔星〕2の『今昔物語集』巻28−22。
*何気なく発した言葉が、自分の将来の運命の予言になる→〔予言〕5。
*父親が「狐のようだ」と言ったために、子供が狐になる→〔転生〕8aの『日本霊異記』中−41。
*父親が「烏になっちまえ」と言ったために、子供たちが烏になる→〔呪い〕1の『七羽のからす』(グリム)KHM25。
*寺への寄付を断った言葉が、思いがけない形で現実になる→〔鐘〕4のつかずの鐘の伝説。
*→〔願い事〕に関連記事。
★5b.事実と反する嘘を言うと、その言葉が本当になってしまう。
『黄金伝説』30「聖ユリアヌス」 男たちが仲間の一人を牛車に寝かせ、「死体を運ぶ途中だ」と偽って、教会建設作業の手伝いを断る。聖ユリアヌスが「あなたがたの言葉どおりになるように」と言うと、牛車の男は本当に死んでしまう。
『怪鳥(ばけどり)グライフ』(グリム)KHM185 百姓の長男が王女の婿になろうと、りんご(*→〔りんご〕1)を籠に入れて出かける。途中で会った小人に籠の中身を問われ、長男は「蛙の足だ」と嘘を言う。王宮で籠を開けると、蛙の足が出てくる。次男も同様にして、籠の中のりんごが靴刷毛になってしまう。三男ハンスは粘土を籠に入れて出かけるが、「中身はりんごだ」と小人に答える。王宮で籠を開けると黄金のりんごが出てくる。ハンスは王女と結婚して王になる。
*→〔石〕14の『ドイツ伝説集』(グリム)241「石になったパン」。
*『イソップ寓話集』210「羊飼いの悪戯(*→〔嘘〕6a)」を源泉として流布した、いわゆる「狼少年」の物語では、少年が「狼が来た」と嘘を言って村人たちをだましているうちに、本当に狼がやって来る。これは嘘が本当になった、つまり、少年の言葉に内在する言霊が少年の意図を超えて発動した、と考えることができる。
*嘘のつもりで言ったことが、偶然、現実と一致した→〔嘘〕11の『壁』(サルトル)。
油すまし(水木しげる『図説日本妖怪大全』) 熊本県天草の草積越(くさづみごえ)という山道には、昔から妖怪「油すまし」が住んでいる、といわれていた。明治の頃、お婆さんが草積越を通る時、「今はもういないだろう」と思って、「昔はここらに『油すまし』が出たそうだ」と、孫に教えた。するとガサガサと音がして、「今でもいるぞ!」と言って「油すまし」が出てきた〔*「油すまし」の実態はどんなものであるのか不明〕。
★6.冗談で言った言葉を相手が真にうけ、重大な結果をもたらす。
『サザエさん』(長谷川町子)朝日文庫版・第33巻45ページ ワカメの友達ミツコちゃんが遊びに来たので、マスオが「ミツコちゃん、僕のお嫁さんにならないかい?」と冗談を言うと、「うん。なる」と答えるので、マスオは笑って自室に引き上げる。夜になってサザエが、「あなた。絶対帰らないって言ってるわよ」と知らせに来る。ミツコちゃんとサザエにはさまれて、マスオは「弱ったね」とつぶやく〔*→〔像〕8bの、人間が像と結婚を約束する物語と類似の発想〕。
『十八史略』巻4「東晋」 東晋孝武帝が酔って、三十歳の寵妃張貴人に「汝ももうお払い箱の年令だ」と冗談を言った。張貴人はこれをまことと思い、婢に命じて帝を殺させた。
『醒世恒言』第33話「十五貫戯言成巧禍」 劉旦那が、商売の元手の十五貫を愛妾に示し、「お前を売った金だ」と冗談を言う。妾はそれを真に受け、夜の間に家を抜け出て、実家へ向かう。その間に劉旦那は泥棒に殺される。妾と、彼女の道連れになった若者とが、劉旦那殺しの濡れ衣をきせられ、処刑される。
*死者を食事に招くと、本当にやって来る→〔首くくり〕5の『ドイツ伝説集』(グリム)336「絞首台から来た客」。
*像を食事に招くと、本当にやって来る→〔像〕8a。
*からかいの言葉を真に受けて、落ちている金を拾う→〔金〕3aの『西鶴諸国ばなし』巻5−7「銀が落としてある」。
『マハーバーラタ』 パーンドゥ王の第一夫人クンティーは、ユディシュティラ、ビーマ、アルジュナの三王子を産み、第二夫人マードリーは、ナクラ、サハデーヴァの二王子を産んだ。彼ら五人兄弟は、伯父ドリタラーシュトラの子供である百人の王子たちと、領土をめぐって戦う。両軍多数の将兵を率いての十八日間にわたる大戦争に、五王子たちは勝利する。後に彼ら五王子たちは世を捨ててヒマラヤ山に登り、神々に迎えられて天界に入った〔*実際はパーンドゥ王の願いにより、神々がクンティーとマードリーに子種を授けた。パーンドゥ王は「性交中に死ぬ(→〔性交〕5b)」と宣告されていたからである〕。
『若者のすべて』(ヴィスコンティ) 田舎から職を求めてミラノの町へ来た、母と五人兄弟の物語。長男ヴィンツェンツォは結婚して、自分の生活を守るのに精一杯である。次男シモーネ・三男ロッコはボクサーになるが、シモーネの愛人がロッコに心を移したため、シモーネは愛人を刺殺する。心優しいロッコはシモーネを責めず、かばおうとするので、四男チーロは怒って家を飛び出す。数日後、チーロの働く工場へ、末子ルーカが「シモーネが逮捕された」と知らせに来る。
*馬氏の五人兄弟(白眉の故事)→〔眉毛・睫毛〕4の『蒙求』569「馬良白眉」。
『ワイルドバンチ』(ペキンパー) 五人組の強盗団、パイク、ダッチ、ライル、テクター、エンジェルが、メキシコ政府のマパッチ将軍の要請で、アメリカ軍の輸送列車から武器弾薬を強奪して、一万ドルの報酬を得る。しかしエンジェルが武器一箱を革命派に渡したため、マパッチ将軍はエンジェルを捕らえて殺す。怒ったパイクたち四人は、ライフルや機関銃を乱射して、マパッチ軍二百人と戦う。四人は全身に弾丸を浴びて絶命するが、マパッチ軍も大半が死んだ。
『我等の仲間』(デュヴィヴィエ) 仲の良い友達、ジャン、シャルル、タンタン、マリオ、ジャックの五人が共同で買った宝くじが、十万フランに当たった。彼らは十万フランを山分けせずに、皆で田舎の土地と建物を買い、レストラン「我等の家」を始めようと相談する。しかし美女ユゲットや、シャルルの別れた妻ジーナが現れて、男たちの心に変化が生ずる。ジャックは一人、旅に出る。マリオはユゲットと外国へ去る。ジーナは夫シャルルから金をせびり取り、ジャンを誘惑する。タンタンはパーティの日、屋根から落ちて死ぬ→〔映画〕8。
天父地母と五人の息子の神話 天父と地母が五人の息子(太陽・月・火・風・霧)を産んだ。天父と地母はぴったり密着していたので、息子たちは活動の場がなかった。火と霧が天父を攻撃し、太陽と月と風が地母にぶつかって、ついに天父と地母は分離した。天父に敵対した火と霧は地上に残り、地母に敵対した太陽と月と風は天上に昇った(バルカン、ジプシー)。
*五人の田舎者→〔蚊帳〕3の『飛びこみ袋』(昔話)。
『高慢と偏見』(オースティン) 田舎町の名家ベネット家には五人の娘、ジェイン、エリザベス、メアリ、キャサリン、リディアがいた。五人姉妹のうち、次女エリザベスはダーシー青年と知り合い求婚されるが、彼を高慢だと思って拒否する。後にエリザベスは自分の偏見に気づき、ダーシーの愛を受け入れる。長女ジェインはダーシーの友人ビングリーと結婚し、末娘リディアは仕官ウィカムといったん駆け落ちした後、正式に結婚する。一年のうちに五人姉妹の三人までが幸せな結婚をしたので、母親ベネット夫人はたいへん満足する。
『屋根の上のバイオリン弾き』(ジュイソン) 伝統を重んずるアナテフカ村では、父親が子供の結婚相手を決めるのが、しきたりであった。牛乳屋テビエは妻との間に、五人の娘をもうけていた。四女・五女はまだ子供だったが、長女・次女・三女は適齢期を迎えていた。長女のもとへ、金持ちの肉屋の後妻になる話が持ち込まれ、テビエはそれを承知する。ところが長女は、幼なじみの貧しい仕立て屋と結婚したいと言う。次女は都会の学生を恋し、三女は他村の若者を愛して、家を出て行く。テビエは怒り、嘆きながらも、娘たちの結婚を認めざるをえなかった。
『五人少女天国行』(ワン・チン) 雲南省の貧しい山村。娘たちは年頃になると、親が決めた家へ嫁に行き、苦労の多い一生を送るのである。村には一つの伝説があった。嫁入り前の清らかな身体で死んだ娘は、天国の花園へ行って、年をとることもなく幸福に暮らせる。仲良しの五人の少女は、この伝説を信じた。ある日、五人は村はずれの小屋に集まり、一列に並んで首を吊った。
『一寸法師』(御伽草子) 背一寸で生まれた一寸法師は、十二〜三歳まで育てても人並みの背丈にならなかった。彼は家を出て都の宰相殿に奉公し、十六歳の時、姫君とともに興がる島(きょうがるしま)へ行って、鬼から打出の小槌を奪い取る。小槌を打って背丈を大きくし、金銀もたくさん打ち出して、一寸法師と姫君は都へ上る。二人の間には、若君が三人できた。
*→〔壺〕4の『壺むすこ』(インドの昔話)も同類の物語。
『親指小僧』(グリム)KHM37 百姓夫婦に親指の大きさの子が生まれ、親指小僧と名づけられる。親指小僧は馬の耳に入って馬方の仕事をし、泥棒の仲間になるふりをしつつ大声で人を呼び、牛や狼に呑まれたりする冒険の末、家に戻る。
『親指小僧』(ペロー) 木樵りの七人の息子は、長男が十歳・末子が七歳だった(つまり双子が何組かいた)が、末子は身体が弱く小さく、生まれた時は親指ほどの大きさだったので、親指小僧と呼ばれた→〔闇〕2。
『小男の草子』(御伽草子) 大和国に丈一尺、横八寸の小男がいた。男は上京し、清水参詣の美女を見そめ、すぐれた歌を詠んで美女の心を得、夫婦となる。後、男は五条天神・女は道祖神となった。
『親指姫』(アンデルセン) チューリップの花のめしべから生まれた女の子は、親指ほどの大きさだったので親指姫と呼ばれた。親指姫は、ヒキガエルやモグラの花嫁にされそうになるが、魚や燕に助けられる。親指姫は、白い花の上にいた美しい小さな王子と出会い、結婚して、花の女王様になる。
『御曹子島渡』(御伽草子) 御曹子義経は蝦夷が島を目指して船出し、途中、背丈一尺二寸ばかり、扇の長さほどの人たちが住む小さ子島に着く。そこは菩薩島ともいい、昼夜三度ずつ二十五菩薩が姿を現し、住人の寿命は八百歳だった。
『ガリヴァー旅行記』(スウィフト)第1篇 「私(ガリヴァー)」の乗った船は一六九九年五月四日にブリストルを出航したが、半年後、暴風雨のため南太平洋上で難破した。「私」は、身長六インチ足らずの小人たちが住むリリパット国に漂着し、一年九ヵ月余りをそこで過ごした。
『風流志道軒伝』(平賀源内)巻之3 浅之進(志道軒)は、風来仙人から得た羽扇で空を飛び、身長一尺二〜三寸の人たちが住む小人島に降りる。奥へ行くほど人は小さく、五寸・三寸の人があり、奥小人島に到れば豆人形ほどであった。
『海の水はなぜからい(塩挽き臼)』(昔話) 森の神様のお堂の後ろに穴があり、そこに小人たちが住んでいる。小人たちは宝物の石の挽き臼を、訪れた貧しい男に与える。その挽き臼は、右に回せば欲しい物がいくらでも出、左に回せば止まるのだった(岩手県上閉伊郡)。
*→〔七人・七匹〕2の『白雪姫』(グリム)KHM53。
『魔法を使う一寸法師』(グリム)KHM39「一番目の話」 靴屋が翌日の仕事のための革を用意して、翌朝起きると、いつのまにか靴ができあがっている。何日もそれが続くので、夜見張っていると、裸の一寸法師二人が来て、せっせと靴を縫う。靴屋夫婦は返礼に、一寸法師に服を作ってやる。一寸法師は以後来なくなったが、靴屋は生涯幸せに暮らした。
コロポックルの伝説 アイヌ来住以前から、北海道にはコロポックルという小人たちがいた。彼らは絶対に姿を見せないが、川や海で獲った魚を、深夜にアイヌの家の前へ置いて行った。コロポックルの姿を見たいと思う若者が、ある夜一人をつかまえたが、逃げられてしまった。コロポックルは背丈一メートルほどで、顔にいれずみをしていた。この出来事の後、コロポックルたちは皆どこかへ行ってしまったらしく、魚が届くこともなくなった(北海道宗谷宗谷郡猿払村)。
『ちんちん小袴』(小泉八雲) 毎夜、丑の刻に、身の丈一寸ほどの小人が何百となく、武士の若妻の枕元に現われて、「ちんちん こばかま 夜も更け候・・・」と歌い、踊る。小人たちは裃を着て、刀を差していた。夫が小人たちに刀を振りかざすと、たちまち彼らは無数の楊枝になった。若妻は怠け者で、自分の使った楊枝を片付けず、畳と畳の間に刺し込んでいた。それらの楊枝が、小人に化したのである。
*夜中に、背丈五寸の小人が十人ほど現れる→〔うちまき〕1の『今昔物語集』巻27−30。
『古事記』上巻 オホクニヌシが出雲の御大(みほ)の御前(みさき)にいた時、たいへん小さな船に乗った神が、海の向こうから波の上を渡って近づいて来た。この神はスクナビコナで、母神カムムスヒの手の指の間から、漏れこぼれた子供だった(*→〔手〕7)。スクナビコナはオホナムヂ(=オホクニヌシ)と力を合わせて国を造り固め、後、常世国へ去って行った〔*『日本書紀』巻1・第8段一書第6では、スクナビコナは淡嶋へ行って粟茎(あはがら)に登り、弾かれて常世郷(くに)へ行った、と記す〕。
浪小僧(『水木しげるの日本妖怪紀行』) 曳馬野(ひくまの。現・浜松市)に住む少年が、田を耕して小川で足を洗っていると、草むらから、親指ほどの小さな子供が呼びかけた。「私はこの前の海に住む浪小僧です。大雨に浮かれて陸へ上がりましたが、日照りになってしまい、家に帰れません。どうか海までお連れ下さい」。少年は、浪小僧を海まで送ってやった→〔波〕3。
*夜の山で小人たちと踊る→〔踊り〕2の『小人のおつかいもの』(グリム)KHM182。
『豚と軍艦』(今村昌平) 一九六〇年頃。吐血したヤクザが「胃癌だ」と思い込み、絶望して鉄道自殺をはかるが死にきれず、知り合いの殺し屋に「お前の好きな時に、不意打ちで俺を殺してくれ」と頼む。ところがその直後に、ヤクザの病気は胃潰瘍で、安静にしていれば治ることがわかる。ヤクザは今度は殺し屋におびえ、逃げ回らねばならなくなる〔*映画中の一挿話なので、そこまでで話は終わっている〕。
『ボディガード』(ジャクソン) ニッキーは、大スターとなった妹レイチェルに嫉妬し、バーで出会った男にレイチェル殺しを依頼する。後、ニッキーはそのことを後悔するが、男の名前も知らず連絡方法もない。レイチェルをねらって侵入して来た男に、ニッキーは「もうやめて」と言うが、その場で射殺されてしまう〔*アカデミー賞の授賞会場で、男はレイチェルを銃撃する。しかしボディガードのフランクがレイチェルをかばって銃弾を受け、重傷を負いながらも男を射殺した〕。
『殺人者』(ヘミングウェイ) 午後五時、二人組の殺し屋が簡易食堂へやって来る。彼らは、毎晩ここへ食事に来るアンドルソンという男を殺すつもりだった。しかし七時になってもアンドルソンが来ないので、殺し屋たちは引き上げる。食堂の従業員が、近所の下宿屋に住むアンドルソンに、殺し屋のことを知らせる。アンドルソンは一日中部屋にこもっていたが、すでに死を覚悟しており、「もうしばらくしたら、外へ出て行く決心がつくだろう」と言った。
『ビッグ・ガン』(テッサリ) 殺し屋トニーは、小学校へ入ったばかりの一人息子の将来を思い、「足を洗いたい」と組織のボスに言う。組織の幹部たちは、「トニーをこのまま生かしておくわけにはいかない」と結論し、彼の車に爆弾を仕掛ける。その日トニーは車に乗らず、代わりに愛妻と一人息子が爆死した。怒りに燃えたトニーは、組織の幹部や手下たちを次々に殺す。しかし最後には、組織側に寝返った友人によって、トニーは射殺される。
*殺さない殺し屋→〔死因〕5の『殺し屋ですのよ』(星新一『ボッコちゃん』)。
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